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昭和13年刊行の『新詩集 東天紅』佐藤春夫
この本は装丁が面白い。
折帖本という形を取っていて長い紙を折り曲げた形で上下に表表紙と裏表紙が引っ付いていると言う感じだ。
袋とじの背がないと言う感じか。
ともかくも厚手の良い紙を使っているのに反対面は真っ白という贅沢の極み。
当時は日中戦争(日華事変)真っ直中にあり、この本の自序が出来上がった時も作者、佐藤春夫は漢口に従軍している最中である。
時節柄、軍国主義的な詩歌が多い。
「軍国の春」「蘭の花」「国旗を謳ひて」「戦死軍人に捧ぐる歌」・・・・
その中でも異質な感じがする巻末の詩。
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「りんごのお化け」
これは、頭を洗ふことのきらひな子供がよくがまんして頭を洗つて来たのを見て、
お父さんがうたひはやしてほめた歌です。
そら出た、そら出た。
出て来たぞ。
りんごのお化けが出て来たぞ。
お姉ちゃんに抱つこで出て来たぞ。
おつむをタオルでつつまれて、
お父さんのバスロオブにくるまつて、
坊やがお風呂を出て来たぞ。
真っ赤な頬つぺで出て来たぞ。
りんごのお化けが出て来たぞ。
りんごのお化けはよいお化け、
にこにこ笑っつてよいお化け。
おつむを洗つていい匂ひ、
りんごのお化けは可愛いいな。
可愛いお化けのいふことに、
おのどがかわいてしかたがない。
りんごのおつゆを下さいな。
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とてもリズミカルで微笑ましい。
「げにこの旗の下にして
男児は笑みて死ぬるなり」(国旗を謳ひて)とは全く別次元。
この「りんごのお化け」を入れた事は作者にとってとても大きな意味があるだろう。
佐藤春夫のメッセージのような気がしてならない。
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