2002年08月09日
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頂上についた瞬間、ガイドのエフラインは、「体はだいじょうぶか。頭は、おなかは、」と尋ねた。「OKだよ。」「明日はチンボラソ(エクアドル最高峰)だ。」「イエーィ」 握手をして、ガッツポーズをしながら。あまりコミュニケーションがとれていない彼と、意気投合する。高いところに向かうのは人間の性なのか、それとも神が自分の手元へ呼び寄せているのか。答えはわからない。ただ、より高いところに人が登るのは事実。エクアドルの彼と私、時差も年齢も、人種も超えて、喜びを分かち合えるのは、なぜだろう。
 高いところへ登ったら、下りるのも宿命。頂上にいたのは、ただの数分だったか、10分もいただろうか。座ることも、感慨にふけることもなく、十畳ほどの頂上を行ったり来たりして、雲が少しでも晴れることを願っていた。
 南側の断崖を見下ろしながら、雲の切れ間から見える山を指した。白く見えるのは、雪渓か砂かとエフラインにたずねると、砂だという。標高が4500を越えても雪がないのは、ここが赤道直下だからだ。フリースを来て手袋をしていても風で体温を奪われるここには、長くはいられない。しかし、いつまでもいたいような懐かしさがあるのはどうしてなんだろう。のどにささる冷たい空気を肺いっぱいに詰め込んで、鉄骨でできた十字架の天辺をさわると、もう気が済んだ。
「下りようか。」私は、エフラインに合図した。
 下る途中、アメリカ人らしいパーティとすれ違った。両手にストックをもち息を切らせて年配の女性も登ってきた。アメリカの南部から五時間ほどの直通便でこられるここは、日本で考えるほど、辺境の地ではないのだ。むしろ、避暑地、避寒地としては、物価の安さ、1時間もすれば山に登れるところにあるキトは、リゾート地の条件をかねそなえているようだ。1時間ほど下ると、コンクリートの巨大な墓標のようなところで風をさけて同じパーティーらしい女性が座っていた。「英語が話せるか」とエフラインに尋ねて、仲間の様子を聞いていた。あとで知ったことだが、私たちが車を待たせている地点に他の自動車は来なかったので、彼らはもっと下から登ってきたらしい。登頂が午後1時半ほどだった私は、これでも遅いと思っていたのに、彼らは、さらに1時間ほど遅い。下りは、大丈夫だろうか。
 下りながら、足をひねったり、牛にであったり、しながら、車に戻ったのが、3時だった。
「体は、頭は、・・・」いつものエフラインの質問をさえぎって。「おなか空いたよ。」とひとこと。「昼飯にしよう。」食べ始めてから、頭痛がはじまり、弟のピソについたときには、ぐったりしてしまった。夜は、バァファリンのお世話になった。夜、この登山をアレンジしてくださったM氏に電話をすると、「それは高度障害ですね。4、5千mでも数時間は大丈夫なのですが、後になって出るのですよ。」そういえば、キトについて3日たって鼻血が出たっけ。「明日は、8時出発です。」M氏の言葉に私は、背中を押されるような感じになった。もう行かないわけには行かない。チンボラソのどこまで登れるのだろうか。不安は期待に変わっていった。   





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最終更新日  2002年08月10日 00時19分33秒
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