音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年10月13日
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テーマ: 洋楽(3408)




 イエスの最高傑作としてよく名前が挙げられるのは、1971年の 『こわれもの(Fragile)』 と1972年の『危機(Close to the Edge)』の二枚で、本盤はその一方である。イエス(Yes)という、何とも肯定的な名称のこのグループは、英国出身のプログレッシヴ・ロック・バンドで、上記2枚制作時のメンバーは、ジョン・アンダーソン(ヴォーカル)、ビル・ブラッフォード(パーカッション)、スティーヴ・ハウ(ギター)、クリス・スクワイア(ベース)、リック・ウェイクマン(キーボード)。ヘルマン・ヘッセ(ドイツの作家)の作品(『シッダールタ』)から着想を得たコンセプト・アルバムで、収録曲はたった3曲という大作主義の構成(LPでは、A面に1曲、B面に2曲)。1曲目と2曲目は、サブタイトル(それぞれI.~IV.)のついた組曲形式で、前者が約19分、後者は約10分の長尺である。

 本盤の真骨頂は、緊張感に溢れた完璧な演奏にある。1.「危機」の出だしからして、息を呑む緊迫感が曲を支配する。けれども、その緊迫感はただ息苦しいというような類のものではない。緊迫感がずっと続くにもかかわらず、息が詰まってしまわないのは、パーフェクトに計算しつくされ、完成された音の世界が広がるからなのだと思う。2.「同志」は、若干、ゆったりした感じの曲調であるが、その完璧さはまったく損なわれない。さらに、3.「シベリアン・カートゥル」は、そのような"完成された音の世界"の極致である。緊張感は最後まで持続され、一つの狂いもない完璧な計算の上に成り立っているかのような音(そして間)が9分近く続く。付け加えておけば、この3.は、回数的には、筆者が本盤でもっとも繰り返し聴いた曲である。

 以上のように、この『危機』というアルバムは、決してリラックスして聴けるものではない。そうではなくて、聴き手も一緒に緊張しながら、その緊張感をスリリングに味わい、それと同時に演奏の美しさと完璧さを楽しむような一枚だと思う。イエスというバンド自体は再結成などを経て長年続いてきたわけだが(2008年で40周年)、最初に名前を挙げた5人のラインアップは、後々には一度も再集合していない。言い換えれば、この時期のイエスでしか体験できないものである。なお、イエスの代表作のもう1枚とされる『こわれもの』(本盤の前年、1971年のリリース)も秀逸な一枚としておすすめで、そのうちに改めて紹介できればと思う。


[収録曲]
1. Close To The Edge (I. The Solid Time Of Change / II. Total Mass Of Change / III. I Get Up I Get Down / IV. Seasons Of Man)
2. And You And I (I. Cord Of Life / II. Eclipse / III. The Preacher The Teacher / IV. Apocalypse)
3. Siberian Khatru


4. America (single version)
5. Total Mass Retain (single version)
6. And You And I (alternate version)
7. Siberia (studio run-through of 'Siberian Khatru')

1972年リリース。




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Last updated  2012年08月15日 04時15分17秒 コメントを書く
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