音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年02月18日
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 イーグルス(Eagles)が1976年にリリースした『ホテル・カリフォルニア(Hotel California)』。いわずとしれた同バンドの代表作である。曲としての「ホテル・カリフォルニア」については、以前に別の項( こちら を参照)で書いたが、今回はアルバムとしての本盤の魅力を考えてみたい。結論を先取りして言えば、かの名曲「ホテル・カリフォルニア」は、単独のシングル曲であるだけでなく、アルバムの大きなストーリーの断片であり、興味のある方にはぜひアルバム作品として通して聴いてもらいたい、ということである。

 デビューから本作品リリースまでの間に、イーグルスのバンドとしての音楽性は徐々に路線を変更していた。1971年に結成され、翌年のデビューアルバムの頃は、カントリー・ロック調の曲を中心にしていた。しかし、サード・アルバム(『オン・ザ・ボーダー』、初めてギタリストのドン・フェルダーが参加したアルバム)のあたりからエレキ・ギターの比重が高まり、本格的にロック色を強めていった。1975年には、創設メンバーだったギタリストのバーニー・リードンが脱退し、ジョー・ウォルシュが後任に迎えられると、ハードなギター路線に拍車がかかった。ちょうどその時期に制作されたのが、本盤『ホテル・カリフォルニア』ということになる。

 全体的にギターはしっかりと鳴っていてロック・テイストが強いのは確かなのだが、同時にどの曲も物憂い部分があるのが特徴で、1. 「ホテル・カリフォルニア」 や4.「時は流れて(Wasted Time)」、6.「暗黙の日々(Victim Of Love)」などにその特徴がよく表れている。個人的に外せないのは3.「駆け足の人生(Life In The Fast Lane)」で、新加入のジョー・ウォルシュの色が特に濃い1曲である。アルバム前半(1.~4.)は、途中にゆったりとした2. 「ニュー・キッド・イン・タウン」 が挟まれているのもいい。アルバム終盤になると、やはり少しおとなしめのスローテンポのナンバーではあるが、しかし物憂げな雰囲気は引き継いだ曲が続く。ちなみに、シングル・カットされたのは、1.、2.、3.の3曲であるため、アルバム前半に注目が行きがちだが、後半も逃してはならない。7.「お前を夢見て(Pretty Maids All In A Row)」から8.「素晴らしい愛をもう一度(Try And Love Again)」を経て9.「ラスト・リゾート」に至るラスト3曲の流れは、あまり注目されない(それどころか聞き流されがちかもしれない)のだけれど、作品全体として見た時のもう一つのハイライトである。

 この物憂げな雰囲気は、カリフォルニアや西海岸といったイメージからは、本来外れたものである。しかし、西海岸らしい明るさは影を潜め、どこかしら暗い雰囲気のついて回るこのアルバムが、これほどまでに広く受け入れられ支持されたのは、時代の雰囲気ゆえだったということだろうか。メンバーのドン・ヘンリーは、本盤が“合衆国全体のミクロコスモスとしてのカリフォルニアを題材にしたコンセプト・アルバム”であると述べている。つまり、建国から200年を経た米国の退廃がテーマとなっていて、数年前までのベトナム戦争~撤退にいたる社会不安に象徴される“時代の影”を巧みに映し出した作品だった。

 そうした時代背景的な工夫と並んで、本盤は、LPという当時のアルバム媒体の形式に則った上での作品構成が見事だった。LP時代のA面は4.「時は流れて」で終わるが、B面1曲目は5.「時は流れて(リプライズ)」から始まる。当時の聴き手は、物理的にレコードを裏返さなければアルバムを通して聴けないわけである。つまり、そこにはレコード針をいったん上げてわきに下ろし、盤面を裏返すための一休憩の間がどうしても必要になり、当然、A面からの継続性も聴き手の意識の中では薄まってしまう。それゆえ、A面最後の情緒的な曲を、さらに情緒的なリプライズとしてB面冒頭にも入れておき、結果、アルバム後半への継続性をリスナーに意識させるという手法は、極めて効果的だった。この手法を使ったのは別に本盤だけでもないし、CD時代の今となっては関係ない(むしろリプライズは蛇足にすら聞こえる)のだけれども、“裏返し”作業を考えれば、見事なアルバム構成だったと思う。




[収録曲]

1. Hotel California
2. New Kid In Town
3. Life In The Fast Lane
4. Wasted Time
5. Wasted Time (Reprise)
6. Victim Of Love
7. Pretty Maids All In A Row
8. Try And Love Again
9. The Last Resort

1976年リリース。






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Last updated  2016年01月29日 08時06分46秒 コメント(2) | コメントを書く


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