音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年08月09日
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 シカゴの名バラードと言えば、最初にこの曲が思い浮かぶ人も多いであろうほどの有名曲が、この「愛ある別れ(If You Leave Me)」である。デビュー以来、政治志向を取り込むなど硬派なブラス・ロックを展開してきたシカゴにとって、この方向性はある種の転機で、80年代以降の甘口バラード路線の布石ともなった。1969年にデビューしてから21世紀の今まで、シカゴというバンドが実に40年以上のキャリアを誇るわけだが、シカゴの大きな転機はいつだったかと問われれば、明らかにそれは80年代にあったと思う。けれども、今になってから時系列で見ていくと、その転機を迎えるきっかけは70年代にあった。今回取り上げるバラードたちはちょうどその時期の作品ということである。

 デビュー当初のシカゴは政治的なテーマも積極的に取り上げ、サウンド面では“これこそブラス・ロックだ”と誇示するかのような豪快なサウンドを展開した。その意味では、確かに70年代後半に入って、バラード調の曲をシングルとして出してきたのはある種の変化だった。けれども、80年代に入ってさらに変化していった彼らの音や趣向を考えると、この時期のシカゴのバラードは、良くも悪くもデビュー以来このバンドが築き上げてきた遺産を脱しきれていなかった。

 印象の問題でうまく言葉にはできないのだけれど、バラードなのに“甘くない”、あるいは“甘さが過ぎない”というのが特徴と言ってもいいのかもしれない。どこかにブラス・ロック然とした垢ぬけない部分がある。こんな言い方をすると“貶しているのか”とファンの方からは叱られそうだが、決して悪い意味で言っているのではない。甘々になり過ぎないところでとどまり、どこか垢ぬけていない部分を残しているこの雰囲気こそが、実に味わい深いと言いたいのである。

 いずれにしても、この方向転換はセールス的には大成功を収めた。全米チャートで2週連続1位を獲得し、バンド初のナンバー・ワン・ヒットとなったばかりか、グラミーも受賞した。

 この曲が収められているのは、1976年発表のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』。また、後々のコンピレーション盤でも繰り返し収録されている。ちなみに、大ヒットだけあって、後々さまざまなカヴァー・ヴァージョンが生まれた。そうしたカヴァーの中には、ピーター・セテラ自身がカヴァーしたもの(1997年『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re The Inspiration: A Collection)』に収録)もある。


[収録アルバム]

Chicago / Chicago X (1976年)
その他、ベスト盤類にも収録。




70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その2~  へ
70年代シカゴのバラードを聴き直す ~その3~  へ





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Last updated  2011年08月11日 09時50分33秒 コメント(2) | コメントを書く
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