音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2015年09月24日
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ




 ソニー・クリス(Sonny Criss,1927-77年)という人のミュージシャン人生は、振り返ってみれば、決して恵まれたものではなかった。生まれ故郷のテネシー州(メンフィス)から15歳でロサンゼルスに移り住み、やがて音楽活動を続けていく中でインペリアル・レコードと契約し、ニューヨークでも録音を開始する。しかし、様々な理由から幅広い大衆的人気を得るには至らず、1950年代を不遇のうちに過ごした彼は60年代に入ってヨーロッパへと渡る。数年の滞在の後、1965年にロスに戻り、やがてプレスティッジなどでいくつもの好作を吹き込むものの、1977年に癌を発症。同年に亡くなっている(一般にはピストル自殺とされる)。

 他の名だたるジャズ演奏家たちに比べ、キャリアとしてはぱっとしないが、作品内容は別。以前に他の記事にも何度か書いたように、筆者はソニー・クリスが大のお気に入りなのである。その中でも、本盤は特にひいきの部類に入る。本盤『アット・ザ・クロスローズ(At The Crossroads)』は、1959年シカゴでの録音。演奏旅行でシカゴに赴いた際に、テキサス州ヒューストンを拠点とするピーコックなるレーベルが吹込みを行ったということのようだ。ちなみに、ピーコック・レーベルは、ブルース~R&B~ゴスペルを手掛けていたが、ジャズにも手を伸ばし、この録音を行った。

 この時期、ソニー・クリスは不遇の時代を送っていたようだけれども、演奏内容は最初のピーク(1956年頃)の延長線上にあり、かなりおすすめである。30歳を過ぎた彼は、若さに任せて吹くでもなく、情感をうまくコントロールしながら音に表すテクニックに長けていた。したがって、一義的には彼のサックスを楽しむ盤と言える。

 収録曲の中で個人的なおすすめをいくつか挙げておきたい。今回のおすすめの基準はソニー・クリス節の炸裂度合によるのだけれど、ベストは1.「スウィート・ロレイン」と4.「シルヴィア」。次いで、5.「朝日の如くさわやかに(ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ)」と7.「インディアナ」。スタンダードを演っても、自作曲を演っても、同じように見事なクリス節というのは、ワンパターンと批判する人もいるかもしれないが、安定感があることの裏返しでもあり、聴いていて素直に心地いい。

 無論、バックの演奏のよさも無視できない。一つの注目点は、トロンボーン奏者のオレ・ハンセン(1.と3.を除く各曲で登場)。決してでしゃばらず、でもなければきっと物足りないであろう、的確なプレイが印象に残る。もう一つの注目点は、ピアノの存在感。実は、ピアノのジョー・スコットなる名でクレジットされている人物は、何を隠そうウィントン・ケリー(Wynton Kelly)その人である。当時はリバーサイドと契約があっただろうから、それが理由で変名での参加になったと思われるが、このピアノがまた全体のトーンを見事にまとめている。突っ走るべきところは突っ走り、かといって抑えがしっかり効いていて、完璧なお膳立ての立役者となっている。



[収録曲]

1. Sweet Lorraine
2. You Don't Know What Love Is

4. Sylvia
5. Softly As In A Morning Sunrise
6. Butts Delight
7. Indiana (Back Home Again in Indiana)


[パーソネル、録音]

Sonny Criss (as)
Ole(Ola) Hansen (tb: 1.と3.を除く)
Joe Scott (p)
Bob Cranshaw (b)
Walter Perkins (ds)

1959年3月録音。







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Last updated  2015年09月24日 20時08分20秒 コメント(4) | コメントを書く


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