音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2019年03月27日
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テーマ: 洋楽(3405)
ディランらしさが滲む好盤


 前作『セルフ・ポートレイト』で賛否両論を巻き起こしたボブ・ディラン(Bob Dylan)が、そのわずか4か月後(1970年10月)にリリースした11作目が本盤『新しい夜明(New Morning)』であった。前作同様に英チャートで1位となり、全米でも7位を記録して、ゴールドディスクにも認定されている。

 1960年代後半から70年代に入る頃のディランからは、バイク事故後に姿を消したりしたことに象徴されるように何かしら不安定さが感じられた。それは裏を返すと、模索の途中だったということなのかもしれない(その模索の途中では 『ブロンド・オン・ブロンド』 のような名盤も生まれているのも確かなのだけれど)。本盤の前作である『セルフ・ポートレイト』の実験性が議論の種になったのも、この『新しい夜明』によって“ディランがロックに帰ってきた”などとロック・ファンが小躍りしたのも、ある種、ディランの試行錯誤に外野が一喜一憂していたということだったのかもしれない。

 一方で、はるか後の現在の観点からすると、ディランらしさみたいなものがいよいよ出来上がってきた、そんなアルバムの一つに数えていいようにも思う。ピアノを比較的多く演奏したり、南部音楽寄りの要素などが見られたのは、本盤の特徴に挙げられるだろう。とはいえ、数年の間のブランクを経て1970年代半ばに再び本格的に活動し始めた時に見られた、少なくとも多くのファンがイメージするようなディランらしさは、本盤の辺りで概ね完成の域に達していたと考えるのもあながち間違いではないように思えたりする。

 個人的嗜好で注目のナンバーを挙げておきたい。まず、冒頭の1.「イフ・ナット・フォー・ユー」は、ジョージ・ハリスンがソロ作でも取り上げているが、個人的には、作者であるディランのヴァージョンの方が強く印象に残っている。次に、美曲という意味では、5.「ウィンタールード」が一番手のように思う。弾き語り調の曲は複数含まれるが、この美しさと流暢さは“きれいな方のディラン”と言える。さらに、表題曲の7.「新しい夜明(ニュー・モーニング)」は、目を閉じると詞の情景が浮かんできそうな名曲。他方、“泥臭い方のディラン”は、9.「ワン・モア・ウィークエンド」に如実に表れている。シンプルなナンバーではあるが、こういう泥臭い雰囲気を持ったディランは、実に筆者の好みだったりする。


[収録曲]

1. If Not for You
2. Day of the Locusts

4. Went to See the Gypsy
5. Winterlude
6. If Dogs Run Free
7. New Morning
8. Sign on the Window
9. One More Weekend
10. The Man in Me
11. Three Angels
12. Father of Night

1970年リリース。




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Last updated  2019年03月27日 22時05分05秒
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