本盤『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート(On Green Dolphin Street)』は、録音当時は発売されず、20年の時を経て公表された演奏である。この盤を聴く人は、エヴァンスの代名詞であるインタープレイに期待してしまうと裏切られるかもしれない。というのも、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)という、異なる顔ぶれのトリオでの演奏で、ちょうど上記のトリオへ移行していく直前のタイミングで録音されたものだからである。チェンバースはエヴァンスとともに、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』の参加メンバーであった。チェンバースとジョーンズという鉄壁の2人を得て、着実かつ堅実な演奏というのがこの盤の特徴ということになるだろうか。これを“面白みがない”ととるのか、安定感抜群と理解するのか、意見は分かれるだろうが、各楽器がそれぞれの役割をしっかりと果たしているという意味では、わかりやすい演奏だと言える。それを承知で各楽器の演奏に耳を傾けるのであれば、これはこれで楽しめる1枚と言えるように思う。