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改正皇室典範。その柱の一つは、旧11宮家の男系男子を養子として迎え、皇族とすることを可能とするものだ。安倍氏は第2次政権の発足に先んじて実現の必要性を訴えていた。
保守系団体・日本会議の機関誌「日本の息吹」(12年8月号)によれば12年5月、安倍氏は東京都内で行われた「皇室の伝統を守る国民の会」の設立総会に出席し、こう述べたという。
「戦後皇室を離脱した11宮家の皇室復帰について、選択肢として考慮しないのはおかしい」
なぜ安倍氏は、保守系団体の会合で養子案につながる考えに言及したのか。自民党の支持団体の関係者は、女性・女系天皇を容認する世論の高まりを意識し、「保守側の『カウンターパンチ』として養子案が浮上していた」と語る。
この会合の約半年後、12年12月。安倍氏は返り咲きを果たし、第2次安倍政権を発足させる。当時要職を務めた側近は「安倍さんは、小泉政権下の報告書を上書きしたいと思っていたはずだ」と振り返る。
皇位継承のあり方をめぐり、小泉政権下で設置された有識者会議は、女性・女系天皇を容認する報告書をとりまとめた。「皇位の男系継承」の維持に向けた養子案とは目指す方向性が大きく異なるものだった。だが安倍氏のもとでは、上皇さまの生前退位を認める特例法の制定などもあってか、上書きはかなわなかった。
このバトンを継いだのは、安倍氏の盟友の麻生太郎元首相だった。
麻生氏もかつて、月刊誌で養子案の実現を主張していた。自民関係者の一人は「私より年齢が若い。(旗振り役を)ご自分でやられたらどうか」と安倍氏の背を押していたと証言する。麻生氏自身も、皇位継承をめぐる党内議論の責任者に就くことで先導役を果たす。
最後の環境整備を果たしたのは高市早苗首相(自民党総裁)だ。先の衆院選で大勝し、養子案に慎重な立場の野党勢力を壊滅状態に追い込む。結果、養子案の賛同は議員数でみれば衆参両院で8割に広がった。
さらに自民は、皇室典範改正に向けた与野党協議の行司役を務める衆院議長に、麻生氏と政治行動をともにしてきた森英介元法相を推した。周囲には、首相の改正に向けた本気度を示したものと映った。
皇室典範改正が現実味を帯び始めた5月下旬。自民関係者によると、麻生氏はひそかに森氏と面会し、数枚の書類に目を通していたという。それは、森氏ら衆参両院の正副議長と各党派の代表者が重ねた協議を踏まえ、皇族数の確保策にかかわる考え方をまとめた「立法府の総意」の原案だった。
そのとき、麻生氏は記された文章を1行ずつ指でなぞり、目を通し終えるとこうつぶやいたという。「よくできている」
(大久保貴裕、野平悠一、高橋杏璃)
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