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boboz @ Re:私も見ましたw(04/21) sayuri-voさん 杏子さんは、現在でも活躍…
boboz @ Re:再結成(04/21) モトマックスさん そうですねえ。 モ…
sayuri-vo @ 私も見ましたw 杏子の妖艶さとコンタのツンツンさが大好…
モトマックス@ 再結成 してほしいですね、一時で良いから。 こ…
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March 4, 2008
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 気がつくと、道路沿いに積もっていた雪の残骸が、解け始め、車から吐き出される排ガスが白い雪を黒っぽく変色させていた。

 体調が優れないほかに、アルバイトのK@さんにも店を去られた。 店は昼間のみの営業にしばらく切り替えた。 まずは体調を整えるのが優先だ。 最近は ツイていない

 咳き込みながら、開店前なので、カウンターを拭いた。 入り口からのぞく小さな窓から見覚えのある顔が見えた。

BAR.jpg

 「 タカシ か?」 
 「久しぶり マスター!」

 かれこれ10年ぶりのお客様である。  タカシ は、学生時代からこの店へ通っていた。 始めてこの店に来たときは、無口で地味なさえない子だなと感じていた。 話しかけてみるとやはりボソボソとした調子の話し方で、不器用さが目立つ印象であった。



 学生時代は、この店へきても、誰かと話し込むこともなく、淡々と注文をし、エラリークイーンの単行本を読み続けていた。

 やがて社会人になってから店に現れた時は、別人のように、スマートな話口調になり、明るい色のスーツも軽やかに着こなしていた。 
 聞くところによると、広告代理店へ就職したようである。 学生時代、一度も彼女を連れてきたことのない タカシ だったが、いろんな女の子を店へ連れてくるようになった。

 人はどんどん成長していくのだなと、カウンター越しに見ていた。

 「マスター! ごぶさただね。」 本当に10年ぶりくらいの再会であった。


 「どうだ。 仕事は順調か?」 私は思い切って聞いてみた。

 「まあね。 でも広告会社は辞めるんだ。」
 「えっ? そうなんだ」 

 「オレさあ、思い切ってどこか南の島でしばらく暮らそうと思ってさ。」
 「ほう・・」



 タカシ は淡々と話してくれた。 

 最後に懐かしくなってこの店へ寄ったのだそうだ。 

 「そうだ。 旅立ちのコーヒー煎れて下さいよ。」
 「はいよ。」

 やはり、 タカシ タカシ だった。 不器用でまっすぐな男。 嘘のつけないところも変わらない。 またそのうち、忘れた頃にやってくるに違いない。 




 私は、いれ立ての濃い香りのコーヒーを彼の前へゆっくりと運んだ。 彼の手には、あの時と同じエラリークイーンの単行本が在った。

 本日のBGM
  sam cooke「wonderful world」







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Last updated  March 6, 2008 09:56:39 AM


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