boundary

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

2006.07.28
XML
テーマ: たわごと(27647)
カテゴリ: うちそと系
ケイはその日、午後4時を過ぎ、車に乗り込む。エンジンをかけると、そのまま国道×号を南へと向かう。途中、国道×××号との交差点を通過すると100メートルほどで架空線に行き当たる。道路脇には「架空線注意」の立て看板が置かれている。無事、架空線を越えることができれば、そこからは架空の世界だ。ようこそ、架空の世界へ。けれど注意が必要なのは本当はここからなのだ。

ケイの友人のカオルは、この線を越えて以来、もどってきていない。携帯もつながらない。最近はカオルについての記憶が途切れがちになっている。誰もカオルが消えてしまったことを不思議に思わない。でも、カオルは確かにいたのだ。なんたって携帯に受信記録だってあるのだから。

じゃーねー これから行ってきますーヽ(^0^)ノ

ケイの運転するRVは、国道×号を南下している。道路沿いにはホンダクリオだってあるし、宇佐見のGSだってある。表示されているガソリンのリッター価格も上がっていないし、ふだんと変わっていることなんて何もない。ケイはなんだかがっかりする。がっかりする? 気配がしてケイはゆっくりと助手席のほうに顔を向けてみる。声にならない声が出る。シーザーが助手席でまるくなっている。もうずいぶん前にお別れをした愛犬だ。シーザーはいつもみたいに口を半開きにして舌を出し、はあはあと息をしている。

そういうこと? ケイは前方に視線を戻す。それから決心して恐る恐る助手席に片手を伸ばす。シーザーの毛並みの感触を確かめる。シーザー、それはあの頃のまんまだ。まだやせ細っていなくて、大食漢だった頃。あたたかく、なめらかなシーザー。そういうこと? それからシーザーのしっぽがゆっくりと左右に揺れるのが視界の片隅に入ってくる。ケイは自分が泣いていることに気づく。

車をそのまま走らせる。ていうか他に私に何ができるというのだろう。もうすぐ橋を渡る。その橋が見えてきて、道路はゆっくりと上り坂になっていく。停まることなんてもうできない。このまま進むしかないのだ。そうして私はこれから誰に会うことになるのだろう。シーザーだってもう手放したくない。ケイは両手でハンドルを握りしめる。そしてゆっくりとアクセルを踏み込んでいく。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.07.28 23:44:00
コメントを書く
[うちそと系] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Favorite Blog

テーマに沿った私の… 紫陽花ロックさん
石冢雄人のナイチン… バガボンド6449さん
ざわざわ日記 野沢菜々子さん
ふと木が震えるだけ… 木震さん
Words works Words worksさん

Comments

★みゆきち★@ 性感エステってもったいないよね ムラムラってきたら性感エステに通ってた…
ウラガエル @ お久しぶりです。 suiさん どうされているのでしょう。 …
紫陽花ロック @ 鎧駅は 海に向かって断崖絶壁に駅のホームがあり…
ウラガエル @ そーですか? 育児・子育て きらりさん 「そーです…

Archives

・2026.06
・2026.05
・2026.04
・2026.03
・2026.02

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: