文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2006.01.30
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カテゴリ: エッセイ
昨日より左目充血しまして、本日眼科にて結膜炎という診断。

はじめて行った眼科の小さな待合室の足元は
ごついガラス張りになっていて、
のぞくとそこは水槽になっていて、
備え付けられた管からは空気が送られているようでした。

そのあぶくをかいくぐるように悠然と鯉が泳いでいました。
錦鯉と言うのでしょうか。新潟の旧山古志村で育てられたような、
80センチはあろうかと思うくらいりっばな鯉でした。

待合室から診察室へのくぎりはなく、診察室の様子が見て取れました。


赤い蝶ネクタイを締めていました。
その蝶ネクタイは白い髪にとてもよく似合っていました。
指揮棒を振りはじめても違和感のないひとです。

その後ろの棚にこけしだとか人形だとか小さな置物が
整然と並んでいました。ミニカーや小さな飛行機もありました。
わたしにとっては懐かしい匂いがするものが並んでいました。

相対した先生は70歳前後でしょうか。
ものごしの上品さというもの、
患者との距離感というもの
穏やかに抜かりなく手順よく何十年こなしてきたのであろう
熟練の目薬さし。


「ごぞんじでしたか?白目と黒目の境にもりあがりがあることを」
先生が穏やかに問いました。

もりあがりってなんだろう?と不安になります。
「いいえ」

「アレルギーによるものなのか、刺激によるものなのか、まだはっきりとわかっていないのですが、その境がもりあがるんですね」

「でも、何日かしたら治りますから」
「そうですか」

先生は冷たい指先でまぶたをくりんとめくりながら状態を診察されます。

「おやおや、そんなに力をいれないでリラックスして」
と言われてしまいました。
どこへいっても、不器用な患者です。

「しばらくお通いになると、お早く治りますよ」
あたたかな先生です。





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Last updated  2006.01.31 02:37:21
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