文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2007.05.16
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カテゴリ: エッセイ
姑の主治医は女医さんで、色白で目が大きくて、


年のころは中年から初老という感じなのだが
スタイルもよくてけっしてそんなふうには見えない。

髪は茶髪で、最近町でもよく見かける
ムーミンに出てくるミーのような髪型である。

この前は白衣の下のスカートが真っ赤に暖色系の色模様だった。
そして今回は白衣ではなくブラウス姿だったのだが
これがまた春色の色見本のように

なにしろ派手好きにお見受けする。

外見だけでなく
これまでにお会いして説明を受けた経験を
重ね合わせて考察するに
このセンセイはどうも
医師の「規格外」の雰囲気がする。

おおざっぱというのではないが、
どこか「かまわぬ」感じがする。
それは大切なことの見極めの出来るひとの
高度な判断でもあるだろうが
細かいことにこだわらない


まあ、そうでなくては
「センセ、はよ死にたいから、
死なしてもらうわけにはいきまへんか」
なんて頼み込む患者と
「それはできひんなあ。

なんて渡り合えないような気もする。

生き死にのことも、
あっけらかんと言い放ってしまわれると
それはなんだか爽やかに心地よくさえもあって

姑も「あのセンセはすっぱりしたはるさかいに、すきや」という。

人物評がそう甘くはない姑がそういうのだから
それはたいしたものだと気弱な嫁は思ったりもする。

前日に挨拶にいった隣りの家のおじさんも
最期はこのセンセイに看取られて逝かれたそうだ。
おじさんは生前からこのセンセイの贔屓だったのだという。

今回は姑の検査結果を聞くのがわたしの役目で
まあ、それに関してはいろいろと問題はあるわけで
それはまた別な話としておいておくのだが

その主治医に
「ああ、お嫁さんきてくれたのね、よかったわ」
といわれて、わたしはなんとなくうれしくなった。

なにしろ前回、同じようにして待合で順番を待っている時
偶然居合わせた親戚のひとが声をかけてきて
(姑の声は特徴的なので、向こうが気づいたのだが)
いっかなわたしのほうには注意を払わず姑とばかり話していた。

こちらは法事などで会ったことのあるそのひとを
見覚えていたのでこちらから挨拶をしたのだが

「てっきり付き添いさんかとおもてました」
とあっさり言われてしまったのだった。
まったく図体は大きいのに存在感の薄い嫁である。

まあ、しかしわたしは病気をしているので
医学用語のようなものを
ひとよりはたくさん聞きかじってきたので
話が早いということもあるのだろうが
センセイが言い渡す重大な結果は
いつもわたしが聞くことになる。

そういう意味ではこの嫁の存在意味はあるわけなのだが・・・。
(なんて僻み根性はみっともないなあ~)

検査結果を聞いて今後の方針も
姑本人の意向に沿って決めてきた。
最期はセンセイのお世話になることになる。

そこでわたしはおもむろにこれを取り出した。
文袋の登場である。

gd


「センセイ、こういうの作ったんですけど・・・」
「あら、きれいな色ね」
「お好みかと思いまして」
「わたし、派手だからね。お弁当入れるのにいいわね。ありがとう」

受け取ってもらえるものと思ってはいたのだが
一抹の不安もあった。
あっさり受け取ってもらえて、ほっとした。

・・・センセイ、どうぞ、姑をよろしくお願いいたします。





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Last updated  2007.05.16 10:40:18
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