文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2007.06.21
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カテゴリ: ひとりごと

ごろごろと日をやりすごす。

とはいえ、暮らしに必要なものは
求めにいかねばならない。

片頬のわたしは
外に出る時は武装をする。
元気がないときは
そんなことがわずらわしい。

だから、夜、おつかいにいく。
風が吹き髪をかきあげ
武装をしない片頬をさらす。

ああ、くらがりはやさしい。
誰の視線も刺さらない。

遠く団地の風鈴が鳴る。
ちがった音色がいくつも聞こえてくる。
それぞれの暮らしがあって
自分にとっては
それは遠く聞くものなのだなと思えてくる。

コンビニで
欲しい品物をかごに入れ
言われた金額を払って
また来た道を戻る。

公園に寄り道する。
夜の空気に浸りに行く。

気がつくと
土の上にガマガエルがいる。
土と同じ色をしてそこにじっといる。
くらがりにやすらぐかのように。

公園の入り口のポールにもたれて
柳の木を見上げる。
柳は昼間と変わらぬダンスを舞う。

それでも、夜になったら
昼間は見えない何かあやしげな
ひとならぬものが
そのダンスに寄り添っているような気もしてくる。

足音が聞こえる。
わたしの後ろを回って
団地の前を歩くおんなの人がいる。

そろりそろりと歩いている。
壊れ物の自分を運んでいるような歩き方。
痩せた背中が見える。
だぶだぶにあまったズボン。
跳ねた髪の毛。
病み上がりのひとか。

手には小さなビニール袋。
明日へいのちを繋ぐ糧。

そのひとは立ち止まったかと思うと
ためいきひとつついて
団地の一番奥の階段を
ゆっくり上っていった。

夜がやさしいのは
すべてを包み込んでいながら
余人と違うもののありかたに
目くじらたてることなく
ふっと知らんぷりを
してくれるからかもしれない。





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Last updated  2007.06.22 08:55:58
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