文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2007.11.14
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カテゴリ: ひとりごと


ちゃんとした言葉を選べずに唇を噛んだ。

朗読の「声で描く会」で
日ごろの練習の成果を聴いてもらうために
発表会をしようという話が持ち上がった。

ただ読んでいるだけではつまらないし
目標があるほうが絶対に上達するから、といわれた。

メンバー六人の会だ。
今日はひとりがお休みで、
ひとりが遅刻だったのだが

四人いるうちの三人が発表会の話に乗り気だった。
もうもうやる気マンマンの風であった。

残るひとりがわたし。
わたしひとりが反対だった。

「未熟で恥ずかしいから」
と理由を言った。

人生の先輩でもあるかたがたは
そんなことは慣れればなんてことはない、と
お導きの言葉を重ねて言うのだった。

だまっていると遅刻のひとが入ってきた。

そのひとにそれまでの経緯が告げられ
「いい案だと思うんだけど
反対のひともひとりいるのよ」
と続いた。

その雰囲気はいささか居心地が悪く
腹をくくった。

「わざわざ大勢の見知らぬひとの前に立って
たくさんの視線が自分に集まるのが
ちょっと耐えられないかもしれなくて・・・」

どうしても曖昧な言い方になってしまうが
わたしはなくした左頬を押さえて、そう言った。

片頬の人間が人前に立つときの抵抗感。

浦安文学賞で「写真を送れ」と言われたときの
胸の痛みが蘇ってきた。

その言葉がどんなふうに伝わったのかはわからないが
その場の空気がシンとなった。

ずっしりと感じられる沈黙のあと
「待とう」と言われた。

みんなの総意で始めたいから
わたしがその気になるまでGOサインは出さない、と。

いや、そんな、わたしごときのために
それは困ります、と思っていたのに
言葉はごにょごにょして、
誰の耳にも届かず、口腔内で消えてしまった。

ほんとうにそうして欲しかったのか?
と自問する。
そんな申し訳ないことになるとは
思っていなかった。
わたし抜きで進めてもらえばよかったのに・・・

「待とう」という言葉が
わたしを息苦しくもさせる。

真横にいたメンバーが
「そんなの全然気にならないし
いつもきれいって思ってるのよ」
と言った。

そんな慰めがかえってせつなくて
俯いた。













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Last updated  2007.11.14 23:50:04 コメントを書く
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