文の文

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sarisari2060

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2011.03.20
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カテゴリ: エッセイ


いっしょに甘いクリームあんみつを食べた。
こんな時は少し罪深い食べ物がいい。

食べながら
こちらが今抱える不安なことを聴いてもらい
独り住まいのお母さんの世話など
彼女の日々の奮闘ぶりを聴いた。


そしてそのあと
ホットコーヒーを飲みながら
彼女が言った。

小さい時から関東大震災の話を聞かされ
いずれ地震は来る物だ
と思い込んで来た関東の人間には
こころの準備ができているの。

そうやって
受け継がれて来た教訓のようなものが
彼女の口から語られた。

わたしにとって、
きっと他の人にとっても
しっかり背骨を支えてくれるような
ありがたい言葉だった。


ーーこんな時に一番大事なのは
自分の暮らしの細かなことを
うまく回していくことであり
自分のまわりのちかしい人間と
きちんとコミュニケーションを取り合うことだ。

今、焦ってそれ以上のことを
望んだり、やり始めたら無理がくる。
無理がきたら他人に迷惑をかける。
それがいちばんいけない。


まずは自分の足下。
それから自分の家族。
そしてちかいひとたち。
決して、その順番を間違ってはいけない。

今回の地震は未曾有のことだから
これまで準備したことでは
事足りないにきまっている。

だからそれをどうこう
こんなんじゃだめだ、と
翳りのある言葉でいうのではなく

これがうまくいくといいね、と
光ある方へ向かう言葉を
選ばなければいけないーー



そして
「今晩のおかずを考えて帰りましょう」
と、笑った。


このひとがいてくれることは
なんてありがたいのだろう。

別れ際になんだか胸が熱くなって
「どうぞご無事で」などと言ってしまう。
すると彼女が
「じゃ、握手しましょ」と言う。

リンパ浮腫で少し腫れた小さな丸い手の感触が
今もわたしを励ましてくれる。







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Last updated  2011.03.20 17:56:48 コメントを書く


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