文の文

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sarisari2060

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2011.05.12
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カテゴリ: 歌舞伎ばなし


歌舞伎座は建て替え中で、新橋演舞場である。

演目は「敵打天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら」
主演は、悪役二役を演じる高麗屋、松本幸四郎だ。

1105eb1.jpg

なかなかに可哀想な兄弟の仇討ちもので
初めて見た演目だった。

二役のうち、元右衛門というのが実にコミカルで
生真面目な高麗屋さんが
生真面目にきっちりコミカルに演じていた。
なるほどそういう型なのだと改めて思う。

これを勘三郎さんが演じていたら
アドリブと思うかもしれない。
つまりそれは役者の個性だ。

震災の影響か、雨のせいか
客席には空きが目立った。
芝居見物には気持ちの余裕が必要ということか。
わたしにしても、震災以来初めてとなる。

偶然なのか、なりゆきなのか
今日のお隣の席はお顔馴染みのかただった。

このかたのことはかつてこんな風に書いた。
2005.01.12


そのときはお年もお名前もしらなかったが
今日、85歳のひろかわさんと知った。

わたしがご主人のことを聞きました、と告げると
「あら、そんなことがあったかしら?」といわれた。

「わたし、最近だめなのよね。
みんな忘れてしまうの」

85歳というお年を聞けば納得するのだが、
まだまだお元気そうに見える。

今月は、明治座や、新橋演舞場の夜の部もいかれそうで
「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」
の八つ橋役の福助さんが
それはそれはきれいだったそうだ。

「福助さんは源氏物語の夕顔のとき
きれいだなあと思いました」とわたし。

「そうだったわねえ。
ほかのひとのことはわすれたけど
福助がきれいだったことを覚えてるわ」

そう、おんなたちはいくつになっても
美しい役者に心奪われるのだ、と
寂聴さんのことなどを絡めて歌舞伎話が盛り上がった。

「今の団十郎のことを若いとき、幸四郎や松禄なんかが
母親のことで、そりゃあいじめたのよ。
菊五郎はそんなことしなかったけどね」

「しかんは歌右衛門を継がせないって
歌右衛門が言い張ったらしいわね」

「成田屋の事件があってから
怪しいひとがお金をせしめようと
このへんをうろうろしてたらしいわよ。
だから団十郎がきっぱり警察に委ねたんだって」


初めて聞くことが多く、
ほうほうほう、と驚いて聞いた。


ひろかわさんは、幕間にアイス最中をご馳走してくださり
そのうえ、雨だから、と
帰りには新橋駅までタクシーに載せてくださった。
恐縮しつつ、なんだかおもしろかった。
また、おばあさんにナンパされたあ、とか思っていた。

新橋駅で名前を聞かれ、答えた。
この次がいつになるのかわからないし
ひろかわさんがわたしを
覚えてくれてるかどうかもわからないが
それでも、「じゃ、またね」と別れた。











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Last updated  2011.05.13 07:52:42 コメントを書く
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