イヌやネコの検査や治療に関する最新情報(社長の独り言)
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昨日の台風は丁度通勤時間帯で、大変混乱しました。そうかと思ったら、今日は蒸し暑い夏に逆戻り、身体が追いつきません。動物たちも辛いんでしょうね。先週の土曜日に、「予防動物医学研究会」が開催されました。この会のことは、以前設立した際に紹介したと思います。一言で言えば、病気になる前に早期に診断するための検査や、早期の治療に関しての研究推進が目的です。(興味のある方は、検索してHPを見てください)今回の演題の中で私が注目したのは、「リアルタイムPCR法による抗FIPV薬の薬効評価について」と題した発表です(共同研究者である日獣大田中先生が発表者)。リアルタイムPCR法とは、我々が実施している検査方法と同じ方法で、血液や胸水、腹水などからウィルスの遺伝子を検出する精度、感度とも極めて高い技術です。この方法を使って、「抗FPIV薬」つまりFIPVに効果を示すような薬の効果が評価できるかどうか、という内容です。ちなみに田中先生は、通常存在し得ない血液や胸水、腹水に存在し、FIP発症の起因となるコロナウィルスを「FIPV」と呼んでいます。繰り返しになりますが、未だ遺伝子レベルではコロナウィルスもFIPVも区別は出来ていません。検査では、我々と同じように(というか、我々は田中先生の技術を導入していますので、同じな訳です)正確にはコロナウィルスを検出していますが、この発表では「FIPV」と使っていましたので、以降FIPVと表記します。まず、試験管内での実験結果です。強い毒性を持ったFIPウィルス株(多分、重篤なFIPを発症したネコから分離したウィルスを株化したものだと思います)をネコのある種の細胞に混ぜると、感染細胞は死んで形が変わることから、明らかに感染していることがわかります。そこに、ある種の薬剤を入れると、感染を阻害することがわかりました。つまり、感染して細胞が死ぬのを抑えたわけです。ただし、これだけでは体内に投与して本当に効くのかどうかはわかりません。その後は、現在研究を継続している段階のようですが、一症例だけ報告がありました。腹水が溜まり臨床的には既に重篤なウェットタイプのFIPを発症、リアルタイムPCR法で測定したウィルス値は100万個以上、既に治療方法も無いということで、飼主さんの同意を得てこの薬を試してみたそうです。投与後数日で食欲は回復、腹水も減り、徐々に元気を回復したそうです。そのときのウィルス値も徐々に減少していました(ゼロにはならず)。この症例は、ある時一気にウィルス値が上昇し、残念ながら亡くなったそうです。このあたりの原因は、薬の効果と合わせて解明すべき課題ですね。この研究は未だ始まったばかりですが、いろいろなことを教えてくれました。1)この薬剤または類似の薬剤が、FIPの治療薬として期待できる可能性がある。2)薬を投与した後元気が回復してFIPV(コロナ)の値が下がった、ということは、「FIP発症とFIPV(コロナウィルス)感染」は関連している。3)リアルタイムPCR法で感染している「ウィルス値」まで検出することは、臨床症状の把握と薬の効果を評価する方法として優れている。1)は、まさにその通りですね。いい結果が得られることを大いに期待したいと思います。2)と3)は、我々の検査の有用性を裏付けてくれていると思います。我々の臨床研究の結果でも、FIPを疑う臨床症状がある場合でも、血液または胸水、腹水からコロナウィルスが検出されるのは約25%、つまり残り75%は他の原因によるものだと考えられます。「臨床症状は明らかにFIPなのにコロナウィルスが検出されない場合はFIPでは無いの?」という疑問の声も多く聞かれます。2)の結果、つまり臨床症状が治まりコロナウィルスの値も低下してきた、ということは、明らかに「コロナウィルス感染とFIP発症」には関連性があることを示すと考えます。さらに言うなら、FIPを疑う臨床症状があってもコロナウィルス感染が無ければ、それはあくまで「FIPに類似した臨床症状」であるといえるのではないかと思います。技術的なことですが、リアルタイムPCR法には「定性的(感染が陽性か陰性か判断)な方法」と「定量的(感染しているウィルスの量を数値化する)な方法」の2つがあります。我々は、田中先生と検査開発当初から「定量的」なリアルタイムPCR法を応用してきました。つまり、感染しているウィルス量を正確に検出することで、臨床症状の重篤度や予後の判断に役立つであろうと考えてきた訳です。今回の3)の結果は、まさにウィルス量と臨床症状の関連性を表している結果だと考えられ、感染しているウィルス量を正確に把握し、継続的にモニターすることで、病状の把握や予後の推測に大いに役立つと考えています。今回の講演は、今後検査を進めていく上で、我々にとって大いなる味方を得た、というような内容でした。オーバーかもしれませんが、聞いていてそう思いました・・・。FIPは大変複雑な病気ですが、鋭意研究している先生方がたくさん居ます。FIP発症とコロナウィルス感染の関連性は間違いの無いことだと思いますが、この先コロナウィルスが変異したとされる「FIPV」の正体解明、感染や発症のメカニズム解析、ワクチンや治療薬の開発など、日進月歩で進んでいくと思います。大いに期待したいです。秋は学会シーズン、今月末の獣医学会を始めこれからいろいろな集まりが各地で開催されます。また、新しい情報がありましたら提供していきます。日が落ちるのが早くなりましたね。日中暑くても、日が落ちると涼しくなりました。日中は蝉の最後の大合唱でしたが、今の時間は秋の虫が鳴いています。まさに季節の変わり目ですね。皆さん、体調管理には気をつけてくださいね。かく言う私も、夏の暴飲暴食が祟ってか、やや胃袋が疲れ気味。ここ数日、胃薬の御世話になってます。メタボナナちゃんのクッシングは、薬のおかげか今のところ落ち着いています。相変わらず、食欲旺盛、散歩大嫌い、ですが・・・。本当に病気か?と聞きたいくらいなのです。なんと答えるやら・・・。
2009.09.01
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