記憶の記録

2006.02.19
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カテゴリ: 記憶


市の代表を決めるための試合が3日後に迫っていた
3種目全てにエントリーするのは
毎年のぼくの恒例行事だった
ぼくは大回転のイメージで最後の仕上げにかかっていた
もうすぐ暗くなる
ナイター照明も点灯した
今日はこの一本を滑ったら上がりにしようと決め
ヘルメットを確認し

スタートにセットアップすると
いつものルーティン
ストックを2回カチカチと鳴らし
バスケットに着いた雪を落とし
スキーをバタバタと踏みならして付着した雪をおとす
スタートポールの前方にストックを刺し
ジャンプして
ラストをスタートした
イメージ通りに大きなターンが決まっていく
このスキー場に合宿のつもりで入ってすでに5日目
調子が上がってきている


ピステの後半
最後のジャンピングスポットにさしかかる
一番スピードが上がっている場所でのジャンプだ
飛ばないつもりでも、およそ30メートルは飛んでしまう
気持ちも乗っている

その瞬間
僕の目に、あり得ない光景が飛び込んできた
前方40メートルの所を
初心者の集団が
プルークでトレインしている
しかもその列は10人ほども連なり
完全に僕が滑っているコースを塞いでいる
そしてぼくは
すでに空中に浮いてしまっている
多分、時速100キロ近いスピードで!

目に見えている映像はスローモーションで流れていく
彼らは、猛スピードで飛んでいる物体に
気がついていない
しかも、その物体は2秒後には
激突してくるのだ
僕のスキーが着陸態勢を取る
まず右足が着地し
少し遅れて左足が着地する
のこり10メートルの間にかわすには
前方に見える人間の列は、絶望的に長い
””うおー””
----気がついてくれ----

なんて楽しそうに滑っているんだ
僕が止まることは不可能なのに

もしかしたら
人と人の間を抜けることが出来るかもしれない
それしかない

誰も気がつかない

ぼくは破壊的なスピードで人の列に近づいていく
目の前を通過していく列車の連結部分を通り抜けなければならない感覚に襲われる

全力で
彼らが進む方向へ
ぼくの進路を変えようとする
が
すり抜けるのは無理だった
前傾姿勢を取ったまま
ぼくは、人間の列の中に突き刺さっていく
ぼくのヘルメットは列の中の一人の骨を砕き
ぼくだけを守った

破壊された人間は一人だけで
その場にたおれている
あきれるほどのタイムラグで
女性の悲鳴が聞こえる
たおれているのは若い男性だった
パトロールを呼び
スノーボートで搬送し
病院へ着くまでの、拷問のような永さの時間を
なぜこんなあり得ない事故が起きるのか
何度も何度も自問したが
答えは出なかった

不幸中の幸と言うべきか
彼の命に別状は無かったが
しばらくの入院を余儀なくされ
ぼくの自問自答は
27年たった今でも
続いている





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Last updated  2006.02.19 22:57:44
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