記憶の記録

2009.07.01
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カテゴリ: 住宅革命
調査報告

 赤い十字架は、(プリンツスミレモ)という気生藻類だった。
一見乾いている場所でも、微量の水分があれば生育する。
田村家のその場所は真北を向いた外壁であり、植栽もあることから、一年中、ほとんど陽が当たらない。陽の当たらない場所には藻が生育しやすい。
北側には藤沢川が流れ、年間を通して相対湿度が高い。
室内には、書架が設置され内部結露が発生していた。そのため、建物の断熱材は常時低温であった。低温域は結露しやすい。
居室の天井には、ダウンライトが在り、点灯中はその熱で、居室の空気を屋根裏に排気していた。
ダウンライトの排気に含まれる水蒸気は、冬の冷えたノジのほぼ全面で結露していた。
天井の断熱と壁の断熱は、きちんと連続体となっていて、一見問題ないように見えたが、妻壁側の天井面より上で、屋根のラインと桁で作られる三角の外壁部分は断熱も気密も施されていない。しかしこれは、手抜き工事ではない。断熱する必要のない壁なのだ。しかし、通気止めは必要である。


見落としがちなことだが、ダウンライトがその熱で排気した空気に含まれる水蒸気は、この三角部分から外壁の通気層へ入り、外気によって冷やされている外壁の内側を下降流となって降りていきながら、外壁の内側で結露する。この結露水が、藻の生育を助けたのだ。
田村邸では、書架の部分が、最も低温で結露しやすかったために赤い十字架が表れたが、あと数年で北側の外壁には、全面に藻が生えてしまうと考えられる。通気止めがあればこれを防ぐことが出来たはずなのだ。
また、健康被害も予想される。
ダウンライトによって流れる排気流で、天井裏にはカビの胞子や花粉、ダニの死骸や糞が蓄積していく。これらは全て、アレルギーの原因物質であり、キッチンの換気扇が稼動するたびに室内に流出してくる。
喘息や、花粉症などのアレルギーになりやすい住宅構造といえるのだ。
最近では、地球温暖化を大気中のCO2量の問題に結びつけて、省エネルギーを推進しようとする動きが強い。住宅も省エネルギー化が求められ、暖房効率や冷房効率を上げる目的で、室内空気を循環させるシステムが取りざたされるようなってきている。しかし、空気を循環させるということは、アレルゲンなどの汚染物質も循環させるということに他ならず、室内環境そのものを汚染し続ける行為でしかないのだ。





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Last updated  2009.07.01 09:36:44
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