記憶の記録

2009.08.05
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カテゴリ: 住宅革命
 高山が建築中の家は宍道湖を北から見下ろす山の中腹にあった。

眼下に雄大な宍道湖が広がりその先には中国地方の山々が続いている。
東の方角(鳥取方面)には大山(だいせん)が見える。

 建築中の家は木造在来工法で、既に切妻の屋根はガルバリュウム鋼板のシルバーが平葺きで完了し、外周部には構造用合板が貼られ、ディュポン社のタイベックが貼られている。
 窓は白の樹脂サッシYKKプラマード3が取り付けられ、この家が完成した姿は、洋風のデザインになる事が読み取れた。
 土地に接続している道路が北西から南東に走っているために家の向きも道に沿って建てられ、真南から見ると45度、南東向きになっていた。
 屋根の勾配は南東と北西に下り南東側にウッドデッキを作る予定があり、南西に面した妻壁の二階部分に大きなテラスが張り出している。
既に太陽は西に傾き、オレンジ色の光が大自然の緑の中に建つ白いタイベックのキューブを照らし出している。


「土地そのものが南西向きだったものだから、家を南向きにする事が出来なかったんだ。それが唯一残念なところだ。それ以外はなかなかの設計だと満足している。」
高山は、建築中の自宅の中を案内しながら独り言のようにそんな事を言った。
「はは、そんなこと全然大丈夫!全く問題ない。それどころか超ラッキーだぞ。」
僕は高山の悩みがまるで意味のないものだという事を知っている。でもそのことは後でゆっくり話してやる事にしよう。

 高山の家を見て僕はホッとしていた。
どちらかといえば変人とも言うべき男がセルフビルドを始めたのだ。
構造も間取りも配置も所詮素人の考えたもので、果たして大丈夫なのかと心配でならなかったのだが、本人が言うようになかなか良く考えられていて、これならば少し修正するだけでなんとかなりそうだと思えたのだった。
 構造躯体はプレカットで刻まれていたから強度のチェックも問題はないだろう。高山はプラモデルでも組み立てるような感覚で建て方に挑んだに違いない。まるでスタミナドリンクのCMのワンシーンを思い出させる。
「どうだ?なかなかだろう?」
高山は僕に感想を聞いたが、僕は「うん、いいね」とだけ答えた。
「それより、腹が減ったぞ。僕は朝から何も食べてないんだ。」

空港の立ち食いそばなんか食べている場合ではないのだ。
そもそも、酒と魚に釣られてやってきたのだから・・・






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Last updated  2009.08.05 08:39:06
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