記憶の記録

2010.01.17
XML
テーマ: 住宅コラム(1834)
カテゴリ: カテゴリ未分類
高山は建築端材を壁の中にしまいこむという僕の提案を快く承諾してくれた。このごろの高山は、僕が意表をつく提案をするのを待っているかのようだ。僕が何かを語りかけると目を輝かせて、「今度は何だ?」と聞いてくる。今回も、普通のユーザーなら端材とはいえ建築廃材が壁の中に入っているなんて嫌がるところだろうけれど、根っから理系の友は躊躇無くメリットを優先したようだ。「そりゃあ良い考えだ。やろうやろう。」と、二つ返事で身を乗り出してきたものだった。

端材を壁に入れる作業は結構手間がかかる。適当に入れただけでは、蓄熱や吸放湿性能は良いけれど防音効果や耐震補強にはならない。サイズを統一し簡単に接着をしながら収めていく。殆どの端材は床から90cmくらいの高さまでに収まってしまうが、壁はびっくりするほど頑丈になる。少々蹴飛ばしたくらいではプラスターボードは破損せず、蹴ったほうが痛い思いをするだろう。
僕たちは三日間で端材を入れ終わり、七日間かけて間仕切壁のプラスターボードの取り付けを完了した。驚いた事に間仕切壁の内部空間に余裕を残して家一軒分の建築廃材は全て壁中に納まってしまった。このことだけで約10万円の産業廃棄物処理費が浮いた事になる。もっとも三日間の人件費がかかっているからコストダウンにはならないけれど・・・。

間仕切壁にプラスターボードを張る工程でもう一つ工夫した事がある。それは、間仕切壁の上部(天井に近い部分)に通気止めという処理をしたのだ。通気止めとは壁の中の空気と天井裏の空気を隔てる為の処置である。壁の中の空気は暖房したときに暖められて上昇気流となり、天井裏へ流れ込んでいく。壁にはコンセントボックスやスイッチボックスといった電気設備があるからそれらの隙間から室内空気が吸い込まれて天井裏まで流れ込んでしまう。この現象は外壁の断熱に不備がなければ熱損失とはなりにくいけれど、室内空気に含まれているカビの胞子やダニの死骸などのアレルギー物質が天井裏に蓄積する事になってしまうのだ。“ちりも積もれば山”というけれど文字通りアレルギー物質の山ができてしまう。通気止め処理は空気層を分断することで断熱性能を若干向上しつつアレルギー物質の蓄積も少なくしてくれるのだ。この効果に、僅かだけれど先に詰めた建築端材も壁内部の空気量を少なくすることで貢献してくれている。 
通気止めをしている家はとても少ない。なぜかといえば、その効果が絶大である事をプロの建築家たちも知らないからだ。稀に知っている人がいても、工程を変えなければならないとか手間がかかるとかいってやらない場合が多い。通常の在来建築は壁のプラスターボードよりも天井を先に仕上げるから、どうしても壁上部に通気する穴が開いてしまう。この穴を一つ一つ塞いでいくとしたら莫大な手間隙がかかってしまい、プロたちはその事を知っているから通気止めをやりたがらないのだ。しかし、実際はそれほどの大作業とはならない。壁のプラスターボードを先に張るだけでよいのだ。プラスターボードが梁まで到達しているだけで実質、通気止め処理は完了する。しかもそのことでプラスターボードという面材が途中で途切れることなく床から梁まで両面に貼られているから、僅かだけれど家全体の剛性も増してくれるという効果もある。新築ならば通気止め処理をしたからといって余計な手間がかかるということは無いといって良いのだ。



一年が終わろうとしていた。
出雲の冬は寒い。高山邸の周辺は山間の南斜面だが、すでに積雪が30cmほどになっている。しかし、家の中はたった三つの工事用の電球で汗ばむほどである。作業をしているからなおさらだが、この家に人が住むようになって生活廃熱が出るようになったらどれほど暖かい家になるのか、楽しみで仕方ない。もちろん無暖房で暮らせるほどではないだろうけれど、居住者の健康維持のために室温を22℃程度で維持し行く事を少ないエネルギーで実現してくれるだろう。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.01.17 19:28:14
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

フライングシード

フライングシード

Calendar

Archives

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07
2025.06
2025.05
2025.04
2025.03
2025.02

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: