73話は出版用に訂正を加えたものです。
内容はつまらないですから
読まないほうが良いです
では
はじまりはじまり
VOC測定と気密測定
僕はVOC測定用の空気を先に採取し、続いて気密測定に取り掛かることにした。その逆の手順では気密測定に必要な排気量がVOC測定用の空気サンプリングに影響してしまうからだ。VOC測定には窓開け換気の後5時間は窓を閉じたままにした上で分析用の空気をサンプリングするというルールがあるのだ。住宅内の空気を定常的なままサンプリングする事でより正確な分析をする事が出来ることになる。
僕はしばらくぶりに白衣を着て作業に取り掛かった。白衣は研究者の正装であり、実験をするときの気持ちを引き締める効果と清潔に維持された実験環境を確認するために必要な装束なのだ。環境建築研究所の先輩、穴沢などは一年中白衣を纏っていて、それが彼女の研究に対する意識とプライドを現している。洗いざらしの白衣に袖を通すときには、いつも新鮮な気持ちになるものだ。
VOC測定で分析する室内空気のサンプリングはアルデヒド類の分析用に22.5リットルその他のVOCの分析用に15リットルを別々に2試料づつ4回採取する。別々に取るのはアルデヒド類は液体クロマトグラフに、VOCはガスクロマトグラフにと、それぞれ別の分析器にかける為であり、2試料づつ取るのは時間差による誤差を平均で検討するためだ。
空気のサンプルを採るといってもビニール袋のようなものに採取するわけではない。DNPHサンプラーやガラス管の中に珪藻土を入れた捕集管に相当量の空気を通過させてアルデヒドやVOCの粒子を濾し取るのだ。DNPHサンプラーはアルデヒド類を、珪藻土捕集管はVOC類をサンプリングする。
DNPHとは、固体捕集剤2,4-ジニトロフェニルヒドラジンの略でアルデヒド類と非常に反応しやすい。DNPHサンプラーはDNPHを添加したカートリッジである。試料採取はDNPHサンプラーに室内空気を通過させる。室内空気中のホルムアルデヒドは2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応してホルムアルデヒド-ジニトロフェニルヒドラゾンという誘導体になり、ホルムアルデヒドの1分子が,ホルムアルデヒド-ジニトロフェニルヒドラゾンの1分子と対応することから、小さなアルデヒド分子から巨大なホルムアルデヒド-ジニトロフェニルヒドラゾン分子へと反応した状態で液体クロマトグラフで分析できるようになる。
ガスクロマトグラフ質量分析計では,キャリアガスとして高純度のヘリウムを使用する。カラムで分離された各揮発性有機化合物は,真空のイオン化部で電子と衝突し,いくつかのイオンのかけらとなる。このイオンのかけらを、磁場に通すと,かけらイオンの重さの違いによって動きが異なる。これで、どんなかけらイオンが存在しているかを検出することがでる。この結果から揮発性有機化合物を特定する事ができ、さらにその検出量から揮発性有機化合物の濃度も知る事が出来る。誰が考えたのかは知らないけれど、良くぞこんな事を思いついたものだ。世の中には頭の良い人がいるものだ。
VOC測定は、室内空気をサンプリングしそのサンプラーを研究所で分析しなければならないので結果がわかるまでに数日を要する。しかし気密測定は、流量測定だから、その場で結果がでる。
高山邸の気密レベルC値は、0.18cm2/m2 という超のつくほどの高気密を示した。0.18cm2/m2は僕がこれまでに測定した中でも群を抜いて高性能だ。
工事をしている途中から内部にいるときの静けさが尋常ではないと感じてはいたが、まさかこれほとほどとは思いもよらないことだった。
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