加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

May 22, 2005
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カテゴリ: 音楽
 この半年ばかりの間に、「さわりで覚える・・・」(中経出版)という、CDつきクラシック音楽解説書のシリーズのうち、「さわりで覚えるオペラの名曲20選」と、「さわりで覚えるバッハの名曲25選」という2冊を書かせてもらった。

 CD2枚つきで1400円というリーズナブルさは、CDの制作費を安く押さえられたことがポイントになっている。CDの価格を決めるのは著作権なので、その点がひっかかる既存のCDは避け、スタジオ録音でまかなったのだ。
 「あの曲がクラシックの何々だった」と分かればOK、という読者も多いらしいので、クラシックファンがこだわる「演奏者」は関係ない、ということらしい。

 それも一理ある。日ごろクラシックに縁がなければ、「どうせ演奏者のよしあしなど分からないのだから」と思ってしまうだろう。
 でも、それはやっぱり、違う、と思うのである。
 たとえば、「子供だからどうせ分からない」、だから適当に、という考えもあるだろうが、子供の感性は大人の想像以上に敏感なような気がする。子供のころに偶然いいものに出会ったら、その衝撃は大きいように思うのだ。
 私がそう思うのは、個人的な体験がベースになっている。

 忘れもしない中学1年のとき、カール・ベームという今は亡き名指揮者がウィーン・フィルハーモニーと来日した。私はたまたま切符をもらって、生意気にもその会場にいたのだが、ブラームスの交響曲第一番に心を打たれ、さらにアンコールに演奏された「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲を聴いて、思わずこう思ってしまったのである。


 あれが、もし別の演奏家だったら、それほどまでに感動しなかったのではないだろうか。つまらない「マイスタージンガー」はいくらでもあるから。

 今でも音楽を聴く時、あの感動は原点になっている(ただし今のところワグネリアンにはなっていないが)。

 だから、初めてのひとにこそ、いいものを聴いてほしいのである。

 というわけで、自分が「さわり」シリーズを書くことになったとき、演奏家にはこだわった。著作権料の関係で、自分の希望する演奏家ばかりというわけにはいかなかったが、レコード会社が協力してくれて、まずまず一流の演奏家を網羅できたと自負している。

 ところが、やっぱり、そのことが売り上げを左右しているわけではないようなんですねえ。残念ながら(泣)。

 もうひとつ。こだわりたかったのが、収録曲をなるべく全曲収める、ということ。
 何しろ「さわり」がCD1枚あたり原則25曲、ということが売りなので、全曲が入らないことは言うまでもない。けれど音楽ファンにとって、気持ちよく聴いていた曲が途切れてしまうことくらい、気持ちの悪いものはない。
 だから「オペラ」では20曲にしてもらい、その代わりアリアなどの全曲を入れるようにした。
 だが「バッハ」では「25曲」という線がどうにもくずせず、涙を飲んで何曲かをフェイドアウトさせた(レコード会社のひとも泣いていました)。

 ところがこれも、どうやら人によってはあまり気にならないらしいんですねえ。それどころか、そのほうが多数派らしい。

 「曲が途中で切れてしまうのはどうも・・・」という感想をくれたひともいる。だがたとえば、私の妹などは、「全然気にならなかった」という。たしかに、ぼーっと聞き流していたら、あまり気にならない、といえなくもない。


 何となく考えさせられてしまうのでありました。





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最終更新日  May 23, 2005 05:48:23 PM


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