加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

February 18, 2011
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 オペラハウスは町の顔。

 聴衆の反応も含めて、その国や町の文化に対する考えとか、ぜんぶ反映されてくるのがオペラハウスという場所。 
 だから、やめられません。

 NYのメトロポリタン オペラは、実はまだ1回しか行ったことがないのですが、「誰でも楽しめるエンタティンメント」という印象が強いところです。
 間口が広くて、お客さんもおおらかに楽しんでいる、という感じでしょうか。反応も、たとえばイタリアのそれとは違うおおらかなストレートさがあって、楽しい。

 今回、取材のお話をいただいて、しばらくメット三昧させていただけることになりました。

 到着初日の今日(17日)は、「ボエーム」。ゼツフィレッリ演出による定番のプロダクションで、6月の来日公演にも登場する演目です。

 端正なうまさが光るロドルフォ役のヴァルガス、演技も板について低めの美声も決まるマルチェツロ役のマッティの男性主役2人は文句なし。女性では、来日組の、ムゼッタを歌ったフィリップスに、アメリカ人らしいチャーミングさがあふれていました。これから洗練されていけば、スターの一角に加わる素質は十分のように思えます。

 改めて見直したのが、ゼッフィレツリ演出の素晴らしさ。映画のシーンを観るような美しさに加え、通行人のひとりひとりまで、場面の状況を明らかにするために立体的な演技を行います。昨今はやりの極端な読み替えが、賞味期限が限られてしまうのに対し、半世紀経っても古びないのは、まっとうに描かれた時代劇の強みでしょう。

 一流の歌手をそろえ、ていねいで美しい装置に、演技性もわかりやすく打ち出された演出。誰もが楽しめる、間口の広いオペラがそこにありました。イタリアの地方の劇場の伝統芸能オペラでもなく、ドイツの劇場の実験場でもない。このようなところだとどうしてもお客を選びますが、メットには誰でも抵抗なく入れるおおらかさがあります。

 レパートリー方式なので、歌手が舞台に立つ機会が多く、こなれた舞台ができているのもさすがです。この点、スタジオーネ方式であるイタリアの地方のオペラハウスや、日本のオペラハウスやカンパニーだとなかなかこうはいきません。やはり舞台に立たないと、歌手としての「型」ができにくいような気がします。

 以前Nyに駐在していて、メットの会員だった方の話によると、メツトで一番上演回数の多いオペラは、「トスカ」と「ボエーム」だそうです。なるほど、誰でも楽しめる演目ですね。しかも時間的にも正味2時間ですから気楽です。メットでは、オペラが開かれているともいえるのでしょう。

 「ライブビューイング」などの効果もあってか、若い客層も目立ちました。この手の戦略は、やはり一流です。イタリアなど国営のオペラハウスだと、広報も、危機にあってもなんとなく「官製」ののんびり加減が抜けていませんから。







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最終更新日  February 19, 2011 06:49:50 AM


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