加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

February 15, 2011
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 ちょっと前まで、「椿姫」は苦手なオペラでした。

 けれど最近、「椿姫」って偉大だな、とつくづく思うようになりました。
 たしかにヴェルディらしくないけれど、これのおかげで彼の人気がだいぶ増幅していると思えば貴重だし、それに何より、やっぱりすばらしい音楽です。どこをとっても口ずさめるほど親しみやすく、同時に美しい旋律が、ドラマや感情をくまなくすくいとっていく。簡潔にして雄弁。女性的とはいえ、やはりその点はヴェルディです。

 歌手による名演に接する機会が多いのも、「椿姫」の特徴です。デセイ、メイ、デヴィーア、ロスト、ムーラ、そしてチョーフィ。「あの歌手の名演」を思い浮かべるとき、いちばん出てきやすい作品でもあります。歌手にとつても、やりたい役なのでしょう。
 モシュクなんて、「死ぬほど好きな役」なんて言ってましたものね。

 今月、新国立劇場ではその「椿姫」です。
 17日に行く予定だったのですが、17日から急遽海外取材が入り、昨日、初日の14日に観劇してきました。
 今回はどうしても聞き逃したくなかった、2年前にオランジュですばらしい名演を体験できたチョーフィの主役だったからです。

 いや、やっぱり素晴らしい演唱でした。
 彼女の個性は、愛らしさにあると思うのですが、昨日もその個性全開。何度となく歌ってきただけあって、役柄を完全に自分のものにしていました。技術的にもあぶなげなく、安心して聴いていられました。何より、可憐ではかなげな、ほんとうに役らしいヴィオレッタだった、と思います。

 ルーチョ・ガッロのジェルモンも期待していたのですが、初日のせいか疲れていたのか、やや本調子でないようではらはらしました。とはいえ実力はありますから、いざというところの踏ん張り方はさすが。もとの声もいいですから、やはり聴かせます。

 瞠目したのはアルフレード役の韓国人テノール、キム氏。彼は、ドレスデンの専属だったひとで、現地で何度か聴いているのですが、昨年の6月はファウストのタイトルロールに挑戦していました。地元に根付いているみたいで、あたたかな喝采があったことが印象に残っています。
 私はといえば、マルグリートの歌手のほうに気をとられてしまつたのと、ファウストにしてはやや繊細かな、と思ったのでした。
 そういえば彼、東京で、チョンミョンフンとヴェルレクも共演してましたね。

 で、昨日のアルフレードですが、すばらしい健闘ぶりだったと思います。
 声がやわらかく、繊細なので、この役にあっている印象を受けました。ちょっと文学青年のようなアルフレード。甘く、鳴りも十分かという印象を受けました。

 会場で新国のひとにきいたのですが、なんとキム氏、これから母国に本格でビューするそう。韓国ではまだオペラをきちんと歌える環境が整っていないそうなのです。
 だとすると、母国で場所がないから、海外でちゃんと専属になって力をつけたわけで、快挙ですね。

 思うのですが、やはり日本人歌手にしろ、海外のトップクラスの劇場で専属になって何年か鍛えられたひとは違います。ぜひ日本人の才能ある歌手の方々も、どんどんチャレンジして、この舞台で堂々とアルフレードを歌う力をつけて欲しいな、と、日本の一オペラファンは思うのです。

 新国立劇場「椿姫」、公演は26日まです。

http://www.atre.jp/10traviata/





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最終更新日  February 17, 2011 01:28:50 AM


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