CATのアメリカ東海岸留学

CATのアメリカ東海岸留学

まいど、危機でございます

ねるとん紅鯨団 。ヘタすりゃもう知らない人のほうが多いくらいの番組だ。

ただ、今回のネタはもちろん「ねるとん紅鯨団」ではない。こないだそこいらのビデオを見ていたら「アメリカの危機管理のシステムはすごい。それと比べて日本は・・・」系のアメリカ礼賛型番組が出てきた。

神戸の震災の時に首相に情報が伝えられたのが発生から2時間後だったのにLAの地震の時は15分後に大統領に報告されていた、云々。

出演していたデーブスペクターもアメリカが褒めちぎられているのを聞きながら、満面の笑みをと思いきや「アメリカはすごいですねぇ」とコメントを求められても「いやぁ・・・まぁ・・・」とお茶を濁すような反応をしていた。

まあ所詮はデーブだからどこまで裏があるかはわからないけど、裏があるとすればたぶんこういうことではないか、という話をしようと思う(これ伏線)。

アメリカに来てからすでに何回も日本では考えられないほどの「危機」に遭遇した。ちょっとした嵐でもすぐ停電、大型トラックが電信柱をなぎ倒して停電。ニューヨークの大停電。電話の不通。冬に暖房供給源が止まって付近の住民が凍死。南部ではちょっと雪が降れば流通がストップしてスーパーから食料が消える。9・11ではビルに飛行機がつっこんで準戦争状態に・・・。

要するにアメリカはインフラがボロボロなのだ。9・11はインフラがらみではないけどね。本当にいろんな意味で「よく壊れる」。道路には穴が開き、建造物ももろい作りで特に貧困層の住宅はひとたび嵐がくれば簡単に屋根はとび、倒壊する。トレーラーハウスはそのまんま風に巻き上げられたりする。耐震構造もへったくれもない積み木のようなビル群。人的被害が少ないのは土地がだだっ広いからというだけだ。

アメリカ人と耐震構造の話になった時に 「アメリカの耐震構造は平屋だ」 と言われたのはジョークとはいえ「なるほど」だ。



危機になった時のリアクションも日本とは違う。ニューヨーク大停電でなにが心配されたかって、もちろん 略奪暴動 。2005年にハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを襲った際には実際に略奪暴動が起き、刑務所では囚人が暴徒化、ついには間接的ながらも州知事による 自国民の射殺許可 が出た。もちろんこれら一般市民に各種(災害)活動など期待できるはずもない。

アメリカのストリートギャングに比べて日本の暴走族はなんと統制がとれていることか。飲み会などでもアメリカは会計になると延々だれがいくら払うかなどで処理に時間がかかるけど、日本は誰に言われるでもなくちゃんと幹事が決まっていてパッパッと処理する。神戸の震災の時には海外メディアは神戸の一般市民がいかにお互いに協力してものごとに対応していたかを驚きをもって報道した。

どんなものにでも専門家がいるアメリカと比べてしまうから、日本は遅れてると思いがちだけど、そもそも一般市民のレベルが高い日本には専門家なんていらないのかもしれない。

普段から投資を怠らず(そのおかげでコストは高いが)そもそも「危機」がめったに起こらない社会がいいか、それとも普段のコストの低さを追求して、そのかわり「危機」が頻繁に起こる社会がいいか。トータルのコストでみると「危機管理対応部隊」の維持費を含めて考えてもアメリカ方式のほうが安上がりなんだろうけど、「安心して暮らせる安定した社会」だったら日本方式に軍配があがる。

すっかり伏線から離れてしまったけれど、要するにデーブが「アメリカの危機管理能力はすごいですねぇ」とベタぼめされても苦笑いに終始していたのは、もしかしたら流れている映像(ハリケーンなどで壊された家など)が粗末な作りの貧困層の家だったこと・・・つまり日本ではあまり知られていない(ありえない)アメリカの実態(災害への脆弱さ・・・ 危機管理能力をもたざるをえないというむしろ悲しい実態 )を知っているからだったのかもしれない。

加えて自国の良い部分を見ることなく他国の良いところを盲目的に褒めてしてしまう日本の国民性に対しての「おやおやまたですかい」という苦笑だったのかもしれない。

自分もアメリカに住むようになるまでは、アメリカがこんな所だとは知らなかった(もちろんいいところもあるけどね)。 ここでは「危機」も磯野家の茶の間的日常だ。 「あ~また危機らしいよ」「あ~危機なんだ~」「ま~ここんとこずっと危機だしね」といったかんじ。



さてさてアメリカ方式と日本方式、本当にどっちがいいんでしょうね。

精神安定面でいけば日本のほうがいいと思うけど、やっぱり日本に生まれ育っただけに「危機慣れ」してないってことなんでしょうかね。

という日記を書いたのはもう随分昔の話。その後日本でも格差社会の拡大などが話題にのぼり、ついに今日「日本で確実に進行中 階級社会の恐怖(2005年9月)」という記事を目にするに至る。冒頭部分だけでも紹介しておくと「 ひとたび貧乏になったら、その子供はもちろん子々孫々まで貧乏から抜け出せない --日本は今、そんな『階級社会』に突入しようとしている・・・」。加えて記事中程も・・・「文部科学省が打ち出した公立学校の“ゆとり教育”を見ると(中略)少数の“優秀な人材”と大勢の“元気のいいバカ”を作り出そうとしている・・・」。まさにアメリカだな(苦笑)。

アメリカ追従を続けていたら、いずれはそうなるってのは火を見るよりも明らかだったと思うけど、その勢いが止まらなかったってことは、やっぱり日本の大半の人は格差(階級)社会を望んでるってことなんだろうか・・・。

なにはともあれさらに格差(階級)社会が進めば、ここで書いた日本の良いところもいずれは過去の話になるんだろうなぁ。

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(2007年9月1日更新)

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