『折々のうた』
の筆者がまとめた 『古今集・新古今集』(学研M文庫)
です。それぞれの和歌集から代表的な歌を選び、詩的な現代語訳と詳細な解説を付した本書は、古典文法に疎くても十分に楽しめる一冊です。
高校時代に接した懐かしい和歌に再開する一方で、初見の和歌も多数。漢詩の影響を受けた技巧にあふれるものや、もののあはれを歌い込む詩情豊かなものなど、ひとつひとつが興味深いものでしたが、その中でも和泉式部のこの歌は、
枕だに 知らねばいはじ 見しままに
君かたるなよ 春の夜のゆめ
行きずりの情事とその後の心の動きを見事に折り込んでおり、内容の直裁さとともに驚かされました。
現代語訳は本書を読んでもらうとしても、枕さえ知らないということは、枕さえない場所での偶発的な情事。春の夜の夢は夢として心にしまい、他言しちゃダメよ!と和泉式部が語る相手は、いったいどんな男性だったのでしょう。そんなことを言われてみたいものです。
「ぎつぎに恋の遍歴を重ね、敦道親王との関係では世間の非難を浴びた式部は、道長から〈うかれ女〉といわれたように、奔放な生涯を送った」
(大隅和雄「和泉式部」・ 『世界大百科事典』
平凡社)と評される和泉式部は、高校の授業では扱いにくい存在だったのでしょうね。でも、こんなに魅力的な歌を、授業で紹介しないとは!
大岡信フォーラム
『古今集・新古今集』(学研M文庫)