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・12.4.金

でも他人への感染の恐れはまだあるとのことで、仕事も全部休んで一日家にいる。
もう五日間ずっと家に閉じこもっている訳だが、僕はどうもこのずっと毎日家にいるというのが昔から苦手である。
膨らました風船の膨らまし口おうまく括れずに、焦ってよけいに時間が掛かって空気がどんどん漏れて行っているときのような気分になる。
こういう時間がたっぷりある時にこそ部屋にこもってやるべきことがあるようにも思うが、対して思い付けない。
仕方ないので、昔買った古いCDを引っ張り出して聴いてみたりする。
ドイツ時代に買ったマイルスデーヴィスやキースジャレットやウィントンマリサレス20代のころに聴いていた井上陽水のいろんなアルバム。
こうやってみると、井上陽水も随分くだらない曲をたくさん歌っていた。

一度雑誌で彼のインタビュー記事を読んだことがあった。
「子供のころに親から毎日廊下を雑巾掛けするように言われ嫌々やっていた。
バケツの水に雑巾を浸して、廊下をぺちゃぺちゃ濡らして雑巾掛けしたように見せて遊びに出ていた。
今の僕の曲も、それと同じようにいいかげんにごまかしたところがある。
この部分の詞はもっといいのが思い付くまでまあこのまま置いておこうなんて思っているうちに締め切りがやって来て結局そのままレコーディングなんてことがしょっちゅうある。
子供のころの雑巾掛けが改められていないんですね」

そのうち、僕が中学の時に初めて買った彼のレコードをCD化したものが見付かった。
これは10年ほど前に懐かしさから買ったものだ。
アルバムのタイトルは「招待状のないショー」
14歳ぐらいの僕は貯金を持ってレコード屋に行き、このレコードを選んでレジに持って行った。
そのときのワクワクしたような気持ちを変にはっきり憶えている。

すてきなアルバムだ。
くだらないと思うところが全然ない。
アレンジャーがまたすばらしい。
陽水の個人的な思いを壊すことなくよりダイナミックに広げている。
これは星 勝さん。

若い時に死んでしまった恋人に対する思いのような一環した叫びが感じられる。
僕にはそう聴こえるのだ。
「傘がない」と同じテーマ。
このアルバムには、僕の中学時代が凝縮されているように思われる。
サウンドも使っている楽器の音もレトロだが、良いものは30年以上聴いていても飽きない。

年を取った今の陽水には、もちろんそういう緊迫したものは感じられない。
時代が変わって、彼の音楽もその時代の流れにぴったり付いていった。
意味のない満ち足りた平穏と退屈ばかりが伝わって来る。
それはそれで悪くはないのだけれど「招待状のないショー」を聴いた後では、やはり絞り粕のようにも思えなくもない。





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最終更新日  2009.12.05 00:37:41
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