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・5、9、月
昨日の夜、NHKで写楽の謎についての番組を放映していた。
ご覧になった方も多いかもしれないが、僕は恥ずかしいことに写楽の名前は聞いたことはあったが、それがどんな絵を書いた人で、大体日本人であることも知らなかった
。
シャラクではなく写楽だったことも初めて知ったという有様。
現在天才画家写楽という有名な人物は、謎に包まれた正体不明の人物であるということで、驚いたことに彼の残されたほとんどの作品は、1794年(江戸時代)からたった10ヶ月間に描かれたものだけだという。
1794年に彗星のごとく現れた写楽という絵師は、1795年には、彼の作品も彼の名前も145点の作品を残しただけで、忽然と消えてしまっている。
記録によると、彼の浮世絵はそれまでの浮世絵のあり方を打ち破る斬新な芸術性の高いものであり、当時歌舞伎小屋でプロマイドとして販売される娯楽としてしか考えられていなかったものに対して、客からも、役者からも評判が悪く、それが10ヶ月しか販売されなかった理由ではと言われている。
役者の描写は、本物よりもよりかっこ良く、美しくなくてはならないが、彼の作品はその役者を通して人間の瞬間の表情と心のうちをあからさまに描いた、正に娯楽ではなく芸術だった。

写楽は時の波の中に没して消えたのだ。

明治維新以後、日本の多くの美術作品は海外に流出し、その中に含まれていた写楽の絵は1910年にドイツで優れた作品として注目されるようになったという。
何と100年以上経て、ようやく彼の芸術的才能を理解できる人が現れたということになる
。しかも外国で。  

その後最近になって、ギリシャで写楽が直接筆で扇子に描いた作品が出て来た。
江戸時代の浮世絵はすべて版画であり、絵師の細かい筆使いは読み取れなくなってしまうが、この作品の発見により、写楽の筆癖や技法がはっきりした。
それを切っ掛けに研究が進み、写楽が能役者斎藤十郎兵衛(さいとう じゅうろべえ、1763年? - 1820年?)であることがほぼ確定した。
何故一能楽師がそのような天才画家でありえたのか。
能楽の世界では役柄は世襲制で(現在もなお)、主役を演じる家が脇役を演じることは決してなく、またその逆もない。
斎藤家の役柄は、脇役のそのまた脇に座っているだけの役。
セリフは全くなく、舞台の上で求められることは気配を消すこと。

能楽師は当時幕府の役職で武士という位置付けであり、手当てはきちんとあったのだろうが、そのように決められた一生の中で、自分をこの世で表現したいという思いが沸いて当然である。
しかし幕府の役職である彼に他の職業を持つことは許されておらず、それが見付かれば切腹だったという。
そんな中一人の版元と知り合い、本名を決して明かさないという約束の本、東洲斎写楽というペンネームで作品を書いた。
しかしビジネスのもとやはり夢は破れ、僅か10ヶ月で写楽は幻の絵師となった。
斎藤十郎兵衛が写楽だとすると、このころ彼は30歳を出たころであり、58歳でこの世を去るまで、どんな人生を送ったか記録は残っていない。

よもや100年後に自分が天才絵師として世界的に有名になっているとは思うまい。
100年後に目に留めてくれた人がいただけ幸運であり、そのまま時の波に没した天才は、様々な分野で数えられないほどいるのだろう。
そう考えると、死んだ後の運というのも不思議なものだ。





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最終更新日  2011.05.10 00:14:27
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