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・4、25、水
太宰治の「人間失格」を二回読んだ。
僕はこの本を初めて読んだのだが、大概の人は中学生か高校生の時に読むのだろう。
想像を絶する陰惨な話であった。
不思議なことに、後書きでこの主人公は別の第三者で、その男が綴った手記をもとに太宰が小説化したように読者に説明している。
しかし調べると、この本こそが太宰の告白小説であると見る人がほとんどのようだ。
実際太宰の言ってきた事実と、この主人公は多くの部分で重なる。
後書きに「この男の手記には少々誇張した部分が見て取れるが」とあるように、実際よりも太宰の手で誇張された部分もあるのだろう。
しかしそれにしても、太宰の実生活と彼の内心はこんなにも苦痛に満ちたものであったのだろうか。

物語の中では、主人公は何度も自殺を思い込み実行できずにいて、知り合った女性と共に川に飛び込み、自分は死に切れず女性だけを死なせている。
太宰の実生活を見ると、合計四回の自殺を企て、一回目は一人で、二回目、三回目は女と共に川に身を投げ、すべて自分は死に切れず女だけを死なせている。
そしてようやく四回目にまた別の女性と川に身を投げ、死ぬことに成功している。
彼の亡骸が水から上げられたのが、彼の誕生日である6月19日であったというのは有名な話らしい。
物語の中では主人公は対人関係に異常な恐怖を持ち、常に巨大な自己嫌悪に苛まれ、そのためか他人に対してぶち切れることが出来ず内にこもり精神を病み、酒に溺れ、喀血すると酒を止めるためにモルヒネに手を出し中毒へと落ちて行く。
そうしてもう一つの主人公の特徴は、大変な良い男で、出会う女はすべて彼に手足を投げ出すことになる。
「はにかむように微笑み、いつも暗く沈み、弱くて脆く、しかもその原因がまれに見る好人物である美質からなるそこに女性はどこかを動かされ、ほっては置けない感情を揺り起こさせるのだ」と彼自身の女を酔わせる原因を検分している。
主人公はその自分の能力を最大限に利用して、父に勘当されて金がなくなると様々な女のところに転がり込んでいる。
そう、この父こそが彼の自己嫌悪に苛まれる弱さのもとであるようだ。
そして昼間から酒を飲み、酒代がなくなると女の着物や帯を質屋に入れてまた飲む。
しかし実際の太宰は潔癖なところがあり、女の妾のような生活は決してできる男ではなかったそうだ。

太宰はこの物語を「ネガティブなドンファンを描きたい」と語っていたそうだが、そこにあまりにも彼自身が重なり合い、その陰惨な人生に自画像とも言える主人公が出来上がったのかもしれない。
この本には賛否両論があるだろう。
だが僕は無類に好きである。
何故だかとても引かれ、また何度でも読み返すことだろう。
おそらくそこに巨大な自己嫌悪に押し潰されて行く正直な人間の姿が描かれているからだろう。

「この病院にいるものこそが真っ直ぐで、歪んでいると思われる者は表を元気に歩き回っている。
世の中の歪みに耐え切れないものがここに来る」と。





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最終更新日  2013.05.13 14:03:19
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