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・8、3、土
今司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読み始めている。
今まだ一巻の途中だが、下記の武田氏の記事とほぼ同じころの話である。
徳川幕府が倒れ、薩長による政府が始まった。
何故徳川幕府を倒さねばならなかったかというと、結局やがて攻めて来るだろう外国の攻撃を食い止めるだけの武力を、早急に整えなければならなかったからだ。
白人に対してほとんど無抵抗であったアジア諸国の中、維新以後わずか数年で日本は大国ロシアのバルチック艦隊を全滅させるという偉業を成し遂げることになる訳だがその時の日本と、またその数年後の太平洋戦争のころの日本では大きな違いがあることをこの本から教えられた。

明治に入って新政府の舵取りの下、イギリスやフランスから技術者を招き軍艦の作り方、軍隊の作り方などを習い、目覚しい速さで軍備を整えて行った。
日本の若者などはまだ「鉄の船が水に浮かぶものか」と思っていたころのことである。
そんなころ、ドイツのプロシア軍隊がナポレオン三世率いるフランス軍隊の要塞を包囲し、ナポレオン三世共々10万人の兵士を捕虜とした。

ここで不思議なことは、ドイツ政府はプロシア軍きっての有力士官であるメッケル少佐を送り込んで来ている。
ドイツのノウハウを教授して、後に敵国として邪魔な存在にはなりはしないかという危惧はなかったと見える。
そこまで未熟な国と見られていたのだろう。
メッケル氏はモルトケ参謀総長の門下であり、このモルトケなる人物が独自の戦法を生み出し、それが世界の強国ドイツを確立した。
メッケル氏はまずそれまでのイギリス・フランスのやり方をすべて否定し、新たなドイツ戦法を日本海軍に一から叩き込んだ。
数年後にロシアと相対した時も、日本海軍はすべてメッケル氏から受け継いだ戦法を用い、アジアの最果ての小さな国が大国ロシアの艦隊に勝つという、世界を戦慄させる結果を齎した。
日本の指揮官たちは戦場からすぐにメッケル氏に「貴方の教えによって、日本はこのように勝利することができました」と手紙を出している。
それに対してメッケル氏は「万歳日本人、メッケルより」と返事を返している。
メッケル氏は晩年まで「日本をあそこまで育てたのは私だ」と自負していたそうである。
司馬遼太郎氏の記述によると、日本が維新後数年で大国ロシアを負かせたのは日本人独自の能力ではなく、メッケル氏の教えがあればこそだったということである。
ところが人間というのは哀れなもので、日露戦争に勝利し一旦一等国になれば有頂天になってしまい、明治が終わるころにはロシア戦線に参加した士官たちもすべていなくなり、メッケル氏の名は完全に忘れ去られてしまった。

「成金の息子が傲慢と思い上がりで、自己を見失うことと一般である」と司馬遼太郎氏は評している。

日露戦争の前に日清戦争というのもあったが、これは日本軍の参謀たちが伊藤博文総理が止めるのも聞かず、独自で清国を威嚇するために起こしてしまった戦争であるようだ。
当時清の軍備に比べて、日本のそれはかなり貧弱なものだった。
誰もが日本が清に勝てるわけがないと思ったが、何故だか日本海軍はこの戦いにも勝ってしまう。
その戦法はとても幼稚なものだと後に評したものも多かったようだが、中国人の怠慢な性質が、かろうじて日本に勝利を齎した。

と主人公は批評している。
驚いたことは、時の総裁、伊藤博文は大変な平和主義であり、できるだけ他国との争いを避ける処置を好んだため、当時の風潮からはどうも煙たがられる存在でもあったようだ。
当時日本の行く末を左右する大きな戦争が、リーダーを無視して暴走した一部の軍上層部のせいとは情けないことと言えるだろう。

ーーーーーーー
【普通の歴史】1-2 江戸から明治へ(2) 世界の国
「rekishi002tdyno.295-(9:23).mp3」をダウンロード
先回に整理したように、20世紀までにヨーロッパ人(後にイギリス人がアメリカ人に
なって、アメリカもヨーロッパと同じになった)がほぼ全世界を支配していた.それ
を簡単にまとめると、
北アメリカ大陸:イギリス領カナダ、フランス領カナダ、アメリカ、スペイン領メキ
シコ
南アメリカ大陸:スペイン領南アメリカ、ポルトガル領ブラジル
アフリカ大陸 :イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガル、オランダ領
アジア方面  :イギリス領インド、フランス領インドシナ、オランダ領インドネシ
ア、スペイン領フィリピン(後にアメリカ)、ドイツ領太平洋諸島、アメリカ領ハワ
イ
アジア大陸  :ロシア領シベリア、ロシア領樺太、ロシア領アラスカ(後にアメリ
カ)
オセアニア大陸:イギリス領オーストラリア、イギリス領ニュージーランド
ヨーロッパ以外の独立国:完全に独立(日本)、一部独立(中国)のみ
地名ばかりが続き、地図があった方が見やすいので、この「異常な事態」を地図でも
う一度、見てみたい.
[Photo_2。]
まず先行したのがポルトガルとスペインでアメリカ大陸の中心部、アフリカ大陸の沿
岸部、フィリピンなどを占領した.その後、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ
が進出してアフリカ、インド、アジアなどを占領した.ロシアは17世紀にシベリアに
進出、もともとはモンゴルなどのアジア民族の土地を侵略した.アメリカは少し遅れ
てアメリカ大陸を占領して、その後、太平洋の諸国を侵略した.
その結果、世界でヨーロッパ人に侵略されなかったのは、中国(清)と日本ぐらいだ
った.明治維新というのはちょうど、そんな時のことだった.というより、ヨーロッパ
人が世界を征服し、西からはイギリスとフランス、東からはアメリカ、北からはロシ
アが日本と中国に襲いかかってきたから日本も鎖国ができなくなり、徳川幕府が倒れ
て新しい時代になったと言った方が因果関係がわかるから良いだろう.
つまり、簡単に言うと明治維新の頃、ヨーロッパ人から見ると世界で「日本と中国だ
けがまだ取っていない」という状態だった.
「そんな歴史、習っていないよ」という人が日本には多いだろう.徳川家康から始ま
った江戸時代も260年経って、幕府もそろそろ弱ってきたし、ペリー提督が率いるア
メリカ艦隊に驚いて開国し、日本も近代化しようとしたけれど江戸幕府ではあまりに
古すぎるので、大政奉還して新しい明治時代になった・・・という日本の中からだけ
見た日本史を学ぶのが普通だからだ.
そう言う見方もある。でも、世界の中の日本という点では、日本と中国だけしかヨー
ロッパの植民地になっていないのだから、江戸幕府の鎖国はすでに無理だったのだ.
なぜ日本と中国だけが残ったのかというと単に地理的なことだけで、ロシアは陸路で
西から、イギリス、フランスは海路で西から来ると中国と日本が「さいはて」、つま
り「極東」になる.逆にヨーロッパ人がアメリカを通り過ぎてくると、やはり日本と
中国が「さいはて」、つまり「極西」になる。そこで最後に、ロシア、イギリス、フ
ランス、オランダ、アメリカが中国と日本を襲うのは、当然でもある。なにしろそこ
しか残っていないのだから.
この節を終わるに当たって、これまで江戸末期、明治維新、明治時代、そして近代ヨ
ーロッパの歴史などを学んできた人は、違和感があるかも知れない。というのは日本
の歴史家はヨーロッパの影響を受けているので、露骨にヨーロッパの植民地の歴史か
らものを見るということはしない。それはヨーロッパ人にとってとてもいやなことだ
からだ。
でも、事実は、150年から100年前頃の日本はまさに吹き荒れるヨーロッパの世界制覇
の中にあったという事実が大切で、それで始めてその後の日本の行動を理解する事が
できるし、それらが「良かった、悪かった」という評価も正当に行える。
(平成25年7月26日)
武田邦彦





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最終更新日  2013.08.05 00:15:28
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