わんこでちゅ

あの川のむこうは2









ほどなくして向こう側の岸につき、乗り物から降り立つと、そこは小さい石がころがっていて、犬の足では隙間に埋まりそうで歩きづらいところだった。カークがひとつ拾ってみてみると、小石の淵はうっすらと光を透かして淡い色をしていた。光を透す、まるで瑪瑙(めのう)のようなその石は、それ自身が少し光を放っているようにも見えた。小石を置いてまわりをみまわすと、目の前には草原のようなものが広がり、その先うんと先に森のような茂みもあった。太陽や、月や星さえもないのに、空はとても明るく薄い紫の色をしていた。

「じゃあ、僕はいくよ。」

マーフィーはそう声をかけると、その場を立ち去ろうとした。

「えっ!?もういってしまうの?」

急に不安になりカークはマーフィーの前足首をつかんだ。

「ここは、いつでも会いたいときに、会いたい人にあえるから大丈夫だよ。この岸から離れれば、さっきの悲しみも今の不安もなにもかもかんじないからね、心配いらないよ。」

そういうと、マーフィーはカークに背をむけた。そしてその姿は景色に溶けるように、消えていってしまった。カークは暫く消えてしまったマーフィーがもう一度現れはしないかと、同じところをじっとみつめていたが、そのうちあきらめて、その草原に足を踏み入れ、森のようなものをめざして歩きはじめた。


douwa2

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本童話の著作権は ちゃにさん もちぽ1980 さんにありますので、絵、文ともに他での使用を禁じます。文章アップ2004.3挿絵アップ2005.4














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たいせつなものをなくしたら、、泣いてもいいよ。思いはとどくから、、


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