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弘文堂の本については、『基礎から分かる会社法』で結構なことを書きましたので、バランスをとるために、おすすめできる本もあげておきます。二色刷、重要度に応じてフォントを変える、ケースを多用しているといったことは、今時の教科書と同じ傾向ですが、税法の教科書では極めて珍しいですよね。しかも、ケースというのも、単なる判例を簡略化したものではなく、制度の理解を深めるために、同じようなケースでいろんなパターンを出したりしています。このことが特に活きていると思ったのが、たとえば、租税における垂直的平等とか水平的平等といったものについて、いろんなパターンをあげることで、どうやってバランスをとるべきなのかを具体的に検討しているところなどです。他の本では抽象的に論じられてしまうところも、極めて具体的に考えられるということです。これまた先日あげた『ベーシック税法』では、抽象的な記述にとどまってしまってるところが多いのと比べると、具体的に理解してもらうという配慮が、とても徹底しています。フォントを落とした部分は、確かに本文よりも難しいのですが、ここでもきちんとケースを用いて具体的に解説されていますので、抽象的で何いっているか全く理解できない、ということにはなりません。で、話は最初に戻りますが、なぜこれほどの本が出せる出版社が、会社法のスタンダードの本ではああいう本を出してしまうのかが不思議なわけです。
2009年05月04日
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会社の論理と労働者・生活者の論理という対立する論理を分析枠組として用いることで、労働問題を解説していく本。例によって、タイトルにあるような「なぜ」雇用が壊れたかに対する回答はありませんし、そもそも雇用が「壊れた」のかどうかも、よくわかりません。労働法は労働者の権利を保護するためだけにあると思っていた人にとっては、それが誤解であることを気づくのに役に立つかもしれませんけど、そうでない人にとっては、まあ普通です。ある程度の知識がある人は読まなくてもいいんじゃないですか。新書といえども、何か光るものがあればいいなと思うのですが、この本にはそういう期待はしないほうがいいみたい。思わせぶりなタイトルに惑わされないように。
2009年05月03日
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例によって、タイトルと中身がいまいち一致しない新書。「手ごわい頭脳」って何でしょう?以下、この本に書いてあることというよりも、この本から連想したことを書きます。・アメリカの弁護士の思考法について書かれた本というより、アメリカ司法の入門書とみたほうがいいかもしれません。というのも、陪審に代表されるアメリカの司法制度の下で、弁護士が最大限の効果をもたらすにはどのように思考すべきか、ということで、その前提となるアメリカの司法制度の説明が分かりやすく書かれているからです(なので、アメリカの法廷ドラマを楽しくみるための基礎知識としても役に立つと思います)。・また、このことからすれば、アメリカの弁護士の思考法というのが、アメリカの司法制度がどういう制度であるかによって既定されているということでもあるわけです。この点、先日紹介した『プロ弁護士の思考術』が、日本の司法制度がこうだから日本の弁護士はこう思考する、という形では論じておらず、普通のビジネス書に書かれていることと内容的にあまり変わらないのとは対照的。日本では、弁護士は、一般的なものの考え方でも十分通用するということなんでしょうか。それは別に日本が劣っているということではなく、日本の司法が一般社会でのお作法とそれほど違っていないということを表していることになるわけですが。逆に、アメリカでは、「弁護士的な考え方」というと、司法向けに特化した思考法だということになるわけです(程度問題でしょうが)。・いわゆる「リーガルマインド」といわれるものや「法の解釈」についても、あくまで印象論ですが、日本では、現行の司法制度べったりではない、抽象的なものとして捉えている気がします。なので、日本のおけるその手の本では、諸外国の学者の、法の解釈に関する見解を、国の違い、時代の違いに応じて相対化しないで、抽象的に引用できるのかもしれません。他方で、この本からすれば、アメリカでは、たとえば陪審制度のもとでは陪審員向けの法解釈というものがあるのであって、宛名のない、抽象的な「法の解釈」というものは、(そういうものが存在するかどうかは別として)考えなくてもいいことになりそうです。そうすると、たとえば「法と経済学」という学問は、日本では最初に、法に対するアプローチとして正しいか否か、という問題の立て方をされることがありますが、アメリカの場合、そういう議論は置いておいて、陪審員向けに考えた場合には難しすぎて役に立たないので使わないが、経済学の素養のある裁判官向けには、正義云々という言葉よりも経済学的手法のほうが理解してもらいやすいので使おう、というように、「正しいか否か」ではなく「役に立つか否か」によって場面ごとに使い分ける、という考え方になるのでしょうか。・「訴訟大国」「訴訟社会」などとして、日本では時に劇画タッチにイメージされることの多いアメリカですが、この本を読むことで、そういったイメージが正確でないことが分かります。・政府に対する不信が基礎となって存在するアメリカの陪審制度が、消費者訴訟、行政訴訟などで大きな成果をもたらしているのを読むにつけ、日本の裁判員制度が、対象事件を殺人事件などの刑事事件に限っていることの不思議さを感じざるをえません。・念のためもう一度いっておきますが、ここに書いたことはあくまで私がこの本を読んで勝手に連想したことがほとんどで、この本自体にこういうことがそのまま書いてあるわけではありません。
2009年05月02日
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様々な素材をあげて、経済学的な分析の仕方を解説した本。・素人的には「因果関係」と「インセンティブ」の意味が分かれば十分ってことですね。で、因果関係については、どっちが原因でどっちが結果かということをきちんと分析して見極める必要があるということ、インセンティブについては、あくまで人間を対象とするものだから、金銭的なものだけでなく、非金銭的なものにも配慮しなければならないということが、素材を通して分かります。・「数式」はありませんので、経済学に苦手意識がある人でも、安心して読めると思います。ただ、後半から徐々に素材が固めになっていくので、一読してすぐ理解できないところもあるかもしれません。・こういう経済学の本は、往々にして、わざと常識はずれの結論が導かれる素材を選んで読者をびっくりさせようとすることがありますが、この本は結論的にはそれほどおかしいことは言っていないと思います。これは、おそらく著者が、結論を導くためのプロセスを理解してもらいたいのだと考えているからなんでしょう。まあ、刺激がほしい人には物足りないかもしれませんが。
2009年05月01日
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