ちゃいにーずティー

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②バーンズユニット(熱傷センター)



最初、他の日本人HCAの間で、私が日本に返される、という噂が広がり、

「麗秋、日本に帰るってほんと?」

と、あまりにもみんなから言われるので、正直自分でも不安になってしまい、私達日本人ナースの担当だったスーに泣きついた。

「みんなが、私が日本に返されるっていう噂をしているんです。でも、私、そんなつもりないし…」

べそをかいている私を可哀想に思ったのか、または、すでにプランニングしてくれていたのか、その辺は定かではないが、そのときスーが師長をしていたバーンズの病棟へ晴れてトラバーユさせてもらえることになった。

そういうわけで、宙ぶらりんのまま、スパイナルを去り、バーンズへ。

バーンズユニットは、本当に小さい。HDU(High Dependency Unit、要するに、オペ後急性期の患者さんの入る部屋)が二部屋。4床大部屋一つに2床大部屋一つに3床大部屋が一つ。つまり、患者数にすると、ほんの11人しか収容できない、本当に小さなユニットだ。

ただし、大きな火傷を負った患者さんの介助は大変。超急性期は、ITU(Intensive Therapy Unit)が受け持つのだが、包交はバーンズ病棟から出向かなければならない。また、体中スキングラフト(自家皮膚移植)の手術をした患者さんの皮膚はすごく繊細で弱く、HDUに移ってきてからでも体位変換をするのに4人以上の介助が必要だ。

また、私がバーンズにいた頃の患者さんのうち、1人は自殺しようとして灯油をかぶって自分に火をつけた人、そして、もう1人は化学薬品を自分に浴びせた人だった。

そう。

バーンズは、ただの熱傷ユニットではなく、心に病気を持っている患者さんが意外と多い。また、事故で火傷を負った人でも、その後、その事故がトラウマとなって、フラッシュバック(その事故が夢に出てきてうなされたり、外出が怖くなったりするなどの症状)に悩まされたり、皮膚移植でボディーイメージが変わってしまい、鬱になってしまう人も多い。

そういうわけで、専門のカウンセリングスタッフもバーンズユニットにはいるのだ。

また、驚くことに、外来日が週に一回あり、包交からアセスメントまでほとんど看護師が担当する。医者が割り込むのは、手術治療が必要な患者さんくらいだ。
看護師がひどい火傷後に大きな水泡ができてしまっている人の皮膚の切開などをしているのを見たときにはさすがにびっくりした。
それほど、バーンズは専門性が強い。

ちなみに、私は、というと、ほとんど実習生のように、スタッフの金魚のフン状態になっていた。前述したように、専門的過ぎて、あまり自分で動けなかったのだ。まあ、ベッドメーキングや軽い患者さんのベッドバスなどを担当しながら、横目でスタッフの包交やケアを覗かせてもらっていた。


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