添乗員は見た![あんな事こんな事]

添乗員は見た![あんな事こんな事]

2010/06/14
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「プッッ・・!」 
バスに寄り添って立っていたガイドが遠慮がちに吹き出した。

「アレッ・・,ガイドさん,あなたも探してくれたの?」
ガイドは口を押さえ,笑いを堪えながら大きく頷いた。
「アナタも・・・,仕事だから・・・?!」

新米ガイドは笑って言いのか?謝って言いのか?わからない様子で,
社長を見つめる・・・。
「・・・そんな顔で見つめないで・・・。正直な空ちゃんも大好き
   だけど,ウブなガイドさんも捨てがたいな・・・!」
「・・・社長!! イヤラシ~イ顔になってますよ!」
と,私は社長の腕を取り,バスへ押し込んだ。

“待てよ・・・,あたし・・ヤキモチ・・焼いてる?”
“・・バカな?!”と,自問自答して振り返ると,
いつの間に来ていたのか,アンジーの顔が目の前にあって,マジマジ

「アンタ何ムッとした顔してンの?・・もしかして今日,アレ?」
「・・・??・イヤッ・・別に!!」

アンジーは不思議そうな顔をしながら,私の前を通り過ぎて行ったが,

“アレっ?って・・・,アンジーは女でもないのにアレの時の女心
がわかるのだろうか・・・? わかりっこないくせに!“
と,うかつにもアンジーにまで八つ当たりしそうな勢いでその背中を
目で追っていた。

“いったい私は何をしてるンだ”と,気を取り直して,時計を見る。
時計の針は出発予定時刻の9時50分丁度を指していた。
それを見ていたガイドが,
「あと2名様です!」
と,手元のカウンターを見ながら答えた。

そして,私がバスから程近い売店の方へ目をやると,ソフトクリーム
を手に,小走りで近づいてくる2人を見つけた。
「あの2名で,お揃いです!」
と,私がガイドに告げると,ガイドは早速タイヤに添えていた車止め
を拾い上げ,ステップにしまい始めた。

待たせている・・・と,察したのか,最後の2人の小走りはだんだん
早くなっている。
「走らなくていいですよォ~!」
と,声をかけると,2人の足取りはゆっくりになった。

「お待たせして・・・,ハイ これどうぞ!」
と,1人のお客さんが2つ持っていたソフトクリームを1つ差し出した。
「イェッ,私は結構です」
  「違います! あの店の人が“添乗員さんに上げて”って!」
「・・?・・??」

溶け出して,今にも手を伝って来そうなソフトクリームを,取りあえず
受け取った私は,売店の方を見て,表に突き出したソフトクリーム
コーナーに目を凝らした。
誰かを捜している様子を店の中から見ていたのだろう。中から一人の
年配の男性が出て来た。
それは,さっき私がトイレを借りに行った時,挨拶した人だった。
“お疲れ様です”“おはようございます”の会話だけだったのに,
その人はとても親しげに手を振っている。

私は2,3歩前へ歩み出て,“ ありがとうございます ”と,叫んだ。ウィンク
私の声は先方に聞こえたか?聞こえないか?位のものだったが,
その人の“ またおいで ”の声は,弥彦山にこだまするように響き
渡った。
          つづく





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最終更新日  2010/06/14 03:58:50 PM
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