添乗員は見た![あんな事こんな事]

添乗員は見た![あんな事こんな事]

2010/11/01
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カテゴリ: カテゴリ未分類

運転手のその青年は,気を利かせたのか?バスに横着けするのではなく,
10m位手前で車を止めた。きっと真っ直ぐバスには乗れないだろうと,
察したに違いない。

私たちは速やかに車を降りた。慌てた様子など見受けられなかったが,
○×さんは降りるより早く近くのトイレに向かって歩いて行った。
本当は駆け込んで行きたいのだろうに,その老体は走る事を拒んで
いるように見えた。

私はシートに敷いてあった新聞紙を素早く剥がして車外に出し,運転手
の青年に深く深く頭を下げ,車を見送った。


追いかけようか・・・,迷っている私にガイドが声をかけて来た。

「添乗員さん,何かお手伝いしましょうか・・・?」
「いやっ・・・大丈夫です。私がやりますから・・・。」

私は広がったままの新聞紙を慎重にたたんでいた。どうやら,汚れて
いないようだ。
それを見ていたガイドが,“私が捨ててきます。”といいながら手を差
し出した。
もちろん私は躊躇したが,渋々それを渡した。

何の考えもなかったが,捨てない方がいいと何となくそう思った。

「わかりました。・・・添乗員さん,大丈夫ですか?」

私の悲壮な顔にとっさに出た言葉なのだろう。号泣その言葉に思わず

言いそうになった。
“空子しっかりしろ”
私は意を決して向き直り,大きく深呼吸して息を止め,○×さん
のいるトイレに向かって歩き出した。

そのトイレはほとんどオープンエアーで,臭いはこもらないよう
な設計になっていたが,○×さんがどの個室に入っているかは,
わかってしまう。トホホ・・・。
また,しばらく待たされて心配になってため声をかける。
「○×さん・・・,大丈夫ですか?
   着替え持って来ましょうか?」 
「ぅうん,大丈夫」

“ウソつけっ~~”と,私の心の声が外に漏れて来そうだ。
「ここで,着替えた方がいいと思いますが?!」
「ぅうん,大丈夫」

ここまで否定されると,私もどーしていいかわからなくなる。
このままバスに乗せたら大変な事になってしまう・・・。

ドアから少し離れて立っていた私は,若干の向かい風のため
その臭いが通り過ぎるまで気付かなかった。そう,○×さん
は静かにドアを開け,私を通り越していたのだった。
私の前を歩くその人が,相変わらずもの凄い臭いの異物を
身に付けていることは,すぐにわかった。
      つづく





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最終更新日  2010/11/01 02:06:22 PM コメント(1) | コメントを書く


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