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2008.11.21
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カテゴリ: BL小説

『チャイナ・ローズ』水原とほる

9月ごろからぼちぼち読み始めた水原さん、気がついたらもう8冊目。
設定にしてもストーリーにしても、特に自分好みというわけではないし、読んでみてめちゃくちゃ面白いというわけではないけれど、どこか不思議と引きつけられるところがある。多分昭和な雰囲気とか、痛い描写とか、耽美テイストが濃厚なところが、自分の趣味に合うんだろうと思う。じっくり心理描写するタイプの人じゃないから、ストーリー展開早くて最初驚いたけど、もう慣れたな。

タイトルとか見ていても、言葉の選び方が戦前の文学みたいだったりして、他にこういうタイプの作家さんはいないから、もの珍しいというのもある。まあ、若くはないというテイストがBLのコアターゲットとずれてるってことだろう。
関係ないけど、水原さんは既婚っぽいよね。あとがきみると長年住み慣れた横浜から関西へ引っ越しとか、自分のシュミとかじゃなくて環境について書くのは既婚だよな。ご主人の転勤に伴うものっぽいと勝手に想像する。この人やたけうちさんなんかは、安定した生活基盤があるから、流行にとらわれることなく、自分の書きたいものをマイペースで作品発表できるって感じがする。若い読者はファンにならないかもしれないけど、「ずっとついていきます」って層が確実にいる。HPやブログを持っていない人なので、人となりはよくわからないけれど、巷の噂では二つ名を持っていて、もう一方では全然違うテイストの作品を発表しているらしい。

さて、これまで読んだ7作品は、1作を除いてどれも痛かった。でも心の痛みとかめそめそ内面を吐露することがないので、悲しかったり切なかったりはしない。とてもクールに痛みを受け止める受(自業自得ともいう)と、束縛したいから痛い目にあわせる攻、という構図が「これもひとつの愛の形(笑)」ということだよね。

お、この作品は初めて読む新書かな? 
これもなかなかジェットコースターというか時間の省略が多くて、もっとじっくりページがあれば膨らむ話をコンパクトにまとめましたって作品だった。そして、心でつながっている年齢差が倍の裏社会というか犯罪すれすれ人生の攻と戸籍すらない受の話。さらに、あんまりみたことのない不思議な三角関係の話でもあった。

攻くん……生い立ちが異様に不幸なんだが、取りあえず3カ国語くらい話せて、中華街に根を張る借金の取立て屋。26歳の時に11歳の受を拉致。以後、紫の上を育てる光源氏(ただしDV源氏)のごとく、手を出さずに愛でるだけの日々。なんか武術の達人。ムダにハンサム。女殺し。めずらしくファンタジックなできすぎ設定。ダメ人生だが(要するにヒモだしな)受ちゃんは自分の聖域だと思っている。でたーっ聖域設定! 

受ちゃん……アジアンハイブリッドなのに金髪碧眼で、ヤクザの貢ぎ物として調教されていた11歳の時、攻に拉致られ、以後軟禁状態で育つ。現在はウィッグ、コンタクトで東洋人の女に化け、ホステスとして週給20万をかせぐ。攻は自分を救ってくれた恩人だから、横暴な物言いや手を上げられても全然平気。攻のためだけに生きているけなげな16歳。


攻が欲しいヤクザの頭……中学・高校が攻といっしょで、以後ずっと片思い。なんとか自分のものにしたいが、受がじゃま。そこでとりあえず手下に攻をぼこぼこにさせ、自分を頼るように仕向けて、自分は受ちゃんをレイプする。こいつが恋は盲目状態で、描かれた美丈夫な造形と中身のギャップが笑える。こいつは、どんな気持ちで攻が受と暮らしているか考慮しない。

なんか後半、もっとどろどろするかと思ったら、意外とあっけなかった。お頭、一回、手下を使って攻を酷い目にあわせて、ついでに受にいじわるしておきながら、あとはひたすら相手の出方を待つだけって、なんかおかしくね? こいつは攻が手に入ったら受になるのか? 謎だ。
不思議なオトコのジェラシーを楽しんでいたのに、お頭ほとんど受をいじめるだけで一気に失速。受チャン、命がけだもん。強いよね。攻を守るためなら自分がどうなってもいいって、一種の健気受だな。女装してるけど。そして攻の落とし前のつけかたがかっこよすぎてもだえた。

さて、横暴な飼い主(ヒモ)のもとで粛々と仕える愛人という設定は、B級映画によくあるなあとふと思った。あるいは今ならVシネマとかかな。どんなに暴力振るわれても分かれられないというDV設定。「でも普段はいい人なんです」とか、殴られた後のやさしい言葉にグッときたり。
で、これもとてもここ2、30年の時代とも思えず、なんつうか戦後の混乱期の話かと思った。赤線青線がある時代でも十分通用する。だって母親がヤクザに溺れて香港に売られ、そこで売春婦をしていたとか、劣性遺伝なはずの金髪碧眼な設定とか、ヘタレすぎる。
そういや携帯電話とか出てこないし、かなり昭和中期な時代設定なのかもしれない。

裏社会ものって小説も青年誌もほとんど読まないから知らなかったけど、キリトリとかカチコミ(これは聞いたことがある)とか、自分の生活とは関係のない単語が出てくると新鮮だ(笑)。いや、こんな単語が日常使われていたらいやだが。

水原さん、とっても大人好みのお話書くのに、必ずどこかでっかい隙があるというか、ここでこうくるか~っていうヘタレ設定とか甘い展開があって、それが作為があってのことなのか、手抜きなのかがわからない。少なくとも思い至らない人ではないと思うんだが。
でもその部分が目立つから、お嬢さんがたのためにあえてゆるい設定を仕込んでいるのかとかんぐってみたり。





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Last updated  2008.11.21 09:03:05
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