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2009.01.18
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カテゴリ: BL小説

『秘書とシュレディンガーの猫』榎田尤利

年末のお楽しみにと寝室のサイドテーブルに載せていたら、猫が乗ってヘッドボードの後ろに落としていたらしく、しばらく発見されなかった。見事に猫つながりで行方不明になっていた本。
木曜に甲府までの片道90分で読み終わった。面白いけどなんかシャイノベルズは薄くて字組みもゆるいし、枚数的にも中篇規模なので、すんごく期待する割には肩透かしを食うことが多い。
そもそも、榎田さんの本は、自分の中では当たりはずれがありすぎて、去年の後半は壊滅だった。ルコちゃんも1冊目ほどのインパクトはなかったしねえ。
でもこれは「シュレーディンガーの猫」という物理学用語(ずっと数学分野の解けない定理だと勘違いしていた)で「面白いかも……」と思って一気読み。

なんか仕掛けは複雑なのに言いたいことはシンプルで、あとはみんなブラフです、みたなお話だった。面白いけど、最近、粘着系の水原さんやじっくり書き込む烏城さんとか続けて読んでいるもんだから、やぱりちょっと浅い感じは否めない。誰が誰とくっつかは読み始めてすぐにわかるし、謎は半分読んだところで解けたし。お互い第一印象最悪なのがカップリングになるというのも、BLの王道ではある。

場面転換の部分で、古風な明朝系に書体を変えて、すでにいない老人の日記の一節を書き込む手法は好きだ。別の次元で作品の謎解きを誘導する、というのはミステリーなんかでよく見る手法だ。演劇でも、舞台にいない人間のモノローグをト書き風に音だけで聞かせるというのがあるよね。

猫は重要な小道具ではあるけれど、私みたいな筋金入りの猫好きにとっては、描写が物足りない。ただ、猫の存在理由の部分はほぼ同意。あれはあのままでいい動物。作家さん自身、2匹のロシアンブルーにメロメロみたいだから、行動とかよく観察しているとは思うが。
犬は人との関係性でしか描きようがないけど、猫ってそれだけで完結しているから、物語の小道具にするのは難しい。人を信じなかった老人が、どうして猫だけは許していたのかという部分の説得力は弱い。人を猫に仮託するのも、BL読んでいると「犬設定」が多いから慣れたけど、ただの年寄りの娯楽にしか思えなくて、ちょっとエピソードが足りない気がする。

さて、金の亡者の攻が心変わりをする(というか受に恋する)瞬間が1ページに凝縮されていて、そうとう凝った印象なんだけど(風が吹いていた、とかある種の心象風景で、しかもフラッシュバッグで語られる)、その部分がかっこつけすぎて、失敗している。あんなことぐらいで(攻が遭遇した受の問題のシーン)心変わりするたあ、随分根の浅い守銭奴だと思った(笑)。そうか、全体にもっとページがあれば、エピソード増やして丁寧に書けたんだろうなあ。


今でもあるんだろうか。高級住宅地でもある碑文谷の近くだったから、世帯主が亡くなったら、相続税払えなくてあっという間にサラ地にされて分譲マンションが建ってしまうんだろうなあというところだった。

ああ、それよりペットラヴァーズシリーズは、最初の「犬」しか読んでいないんだが、仁摩氏って出てきたっけ? 今回の登場人物のなかで一番自分が食いついたキャラだ。この人の話もそのうち読めるわけだな。よしよし。桁外れのお金持ち設定は好みだ。
どうもね、みんな金持ち設定間違っているのが多い気がする。相当のお金持ちで何もしていない人(不労所得だけの人)って、この本の老人みたいに本来人付き合い悪い人のほうが多いから、仁摩氏のように社交的で趣味でビジネスしている人ってリスクも背負っていることには違いないと思うんだ。本当にお金持ちだと、お金使うことにすら興味がないんだよね。と自分の周囲のお金持ちを見ていると思う。
挿絵は志水ゆきさん。「是」は掲載誌で断片的にしか読んでいないけど、人気があるよね。一番美しく描かれているのが仁摩氏だったのが笑える。





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Last updated  2009.01.18 12:17:12
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