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1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」12月1日初出。朗読時間約26分。高層アパートの最上階に暮らす結婚3年目の夫婦が身長5センチほどの美しい男女の宇宙人(休暇中)と家で別々に出会い、お互いがそれを秘密にして時は過ぎ宇宙人との別れがいきなり訪れて秘密がバレる秋からクリスマスイヴまでの話。このファンタジーは読んでもらわなわからん、よう説明しません。しかしこの宇宙人たちはあっちこっちの星で神様による指導とかの同じシナリオを持ち回ってるっぽい。なんかこんな話をよくもまぁ思いつくなぁという反面、なんか腑におちんかったり、整理できんままモヤモヤだけが残るのでした。
2024.06.07
1953(昭和28)年「三田文学」3月1日初出。朗読時間約30分。今まで読んだ山川作品とまったく違って、推理でもなくて、でもめっちゃいい話。で、どういう風にいいかは説明しづらいんで読むしかない、聴くしかない。大学野球を年上の彼女と観戦しながら19歳の彼は花火を見ていた、少なくとも彼は。それも青空に上がる自分だけの花火を。映画「卒業」になんないところがめっちゃいい終わりなんすね。
2024.06.03
1927(昭和2)年「少年倶楽部」7月初出。朗読時間約27分。大昔、我が家にも玉振時計があったけど、そうやったかなぁ。鍵を突っ込んでゼンマイを回して、針を合わせてとかしてたけどほとんど覚えてない。なので、解決のキモになってる記述がさっぱりわからない。それに小説の玉振時計は一世紀前のものやし僕の使ってた時計の方がだいぶ年代が新しい。謎より厄介やん。と「振り子時計 マニュアル」で検索したら「柱時計・掛け時計・振り子時計の使い方(改訂版)」なるページを見つけたのでした。我が家のもサイズデザインはちゃうけど操作はこんな感じでした。なるほどボーンと鳴らすのがキモっすね、そういうことか、すっかり忘れてた。それが機械を調べるとわかる仕組みなのか。なんとなくわかった。というわけで謎は解けました。
2024.05.30
1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」11月1日初出。朗読時間約22分。山川作品初めての時代ものっす。幼い頃から宮中に仕える女性が二十歳をけっこうすぎた頃の話。位もない若い武者に初恋をし身分違いから結婚もできずただただ初めての思い患う日々に部屋に篭り等身大の若武者の木造を造り、そのあまりの出来栄えに自分の執念の恐ろしさを感じ今度はその木造を脳天からノミで突き刺し真っ二つに壊し、それでやっと自分に取り憑いた恋心の恐怖と汚れを取り去る話。若武者は何も知らずただただ振られる話。まるで最底人に戦わずして負けた地底人のように(byいしいひさいち)。
2024.05.28
1964(昭和39)年「宝石」1月号初出。朗読時間約19分。いや、何回起きたら気がすむねん、おばあちゃん。夢の夢の夢の中で自分も気づいてなかった胸の内の憤懣を全部スッとさせてのこれが二日にみる初夢のご利益だったとは。久しぶりの山川ショートショート、また夢かいとツッコミ呆れて、正月早々とんだどんでんだと切なく思わせてからのめでたしめでたし、重ね重ねのレイヤーおめでたオチに参ったっす。しかもそのプロセスの夢のエピソードがチクチクとおもしろ。謎だったタイトルの「なかきよの・・・」は検索してちょ、ガッテンガッテンガッテン。
2024.05.27
1927(昭和2)年「新青年」11月号初出。朗読時間約17分。河村八九郎は今年二十歳の二重人格者で、第一人格の大星由良之助と第二人格の高師直が数日数時間後に交互に入れ替わる。ところがその入れ替わる間隔がだんだん短く狭まってきて、このままいくと二人が衝突し自殺するハメになってしまう。これを阻止するために白羽の矢が立ったのが鬼頭博士だったが、彼が提示した「交替時間が極度に短縮されたとき、たった一つ、時間をのばす方法」というのが結末ながらピンとこず「??」のまま完。いや雰囲気はわかるんすけど。だって「高速度映画撮影機」って。スローモーションで仇討ちを避けるみたいな?脳内ではそれで解決するのか。ま、途中の鬼頭博士の治療方法のエピソードは面白かったけど。ちなみに大星由良之助と高師直とは人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」の登場人物で主君の仇の師直を由良之助が討ち取る。なんで二人が出会うとヤバいのです。設定はさすがにめちゃ面白い。
2024.05.25
1928(昭和3)年「新青年」6月号初出。朗読時間約25分。子供の頃に某博覧会で父親に危ないからと軽気球に乗せてもらえなかった主人公が二十年後の上野の博覧会で毎日軽気球を楽しむ話。そこで知り合った外人青年は双眼鏡で見つけた娘に一目惚れし上空からその娘を探していた。ところがその娘の正体が閉園の日に判明し、そのあまりの結末に主人公は呆然として完。えっ、こんなオチ話を書くなんてチョー意外。驚いたのは大正時代(明治末か?)にすでに軽気球をはじめ観覧車やウォーターシュートなどの新しい乗物が登場していて、20年後の上野の博覧会では軽気球の人気はすっかりなくなっていたって。そして外人青年の持っていた双眼鏡がツァイスの精巧なレンズ、さすがっすね。最後に「我々がえくぼウイスキイと呼んでいる先ず上等の種類のウイスキイ」とは何?飲んだことはないけどディンプルウィスキーのことなのかな?僕のラストウイスキーはオールドクロウでした。
2024.05.22
1929(昭和4)年「新青年」12月号初出。朗読時間約35分。この職業は孫子の代まで継がせたくはない(自分は社が使ってくれる限り続ける覚悟)と思っている新聞記者の独白。社会の裏面を明るみに出す記者の欲とサガ。ある大学の博士が唱えた妊婦が胎教として自分の崇拝する人物を妊娠中に思い続けると生まれた子は崇拝する人物に気質、体質、容貌まで似るという学説。ところがこの学説にはとんでもない裏があり、対してそれを暴く新聞記者もロクでもない人種という結末。平林作品、 「悪魔の聖壇」に続いて面白いっす。そして人間は100年後もあいも変わらずで、ただただ時代と文化だけが変化してる模様。
2024.05.19
1842年「グレアムズ・マガジン」5月号初出。朗読時間約27分。感染後1時間で死に至る「赤き死」なる疫病が猛威を振るうとある王国。プロスペロ公は病に苦しむ民を見捨て千人もの家臣や健康な男女、楽隊などを連れ充分な食糧などと共に宮中に閉じ籠る。そして数ヶ月後開催された異様な仮面舞踏会に紛れ込んだ「赤き死」の感染者に仮装した人物。その正体は。僕はゴシックホラーに関心がないのでそれ関連の描写はいまいちピンとも来ずでその辺をボヤッとすっ飛ばすとなんだか肩透かしのようなあっさりした内容と結末。感染はどこまでも忍び寄り無差別に無感情にジ・エンド。ディラン の「はげしい雨が降る」でも聴こ。
2024.05.17
1927(昭和2)年「令女界」1月号初出。朗読時間約21分。プロテスタントの教会での懺悔の話。信者の女性から自分が行った一番悪いことを懺悔させ、それをネタに陵辱とゆすりタカリなどを行った悪徳牧師の話。3年前に入院中の青年から恋人を騙して連れ出したことが、その後退院して偶然に彼女と再会した青年に悪事と正体がバレて、結末は教会に青年が乗り込みまんまと牧師をだまし、結果、クリスマスの集いに信者の前で悪事のすべてを懺悔しろと迫られて完。なるほど、牧師や神父の懺悔室には地元の脅迫のネタが集まり放題かも。その割に神職が悪徳なエンタってあんまりないような。知らなすぎ、情弱過ぎっすか。ちなみに掲載誌「令女界」もウィキによると当時なかなか軟派の雑誌だった模様。
2024.05.14
1932(昭和7)年「秋田魁新報夕刊」6月初出。朗読時間約32分。不眠症の青年が睡眠薬に溺れ夢と現実の境があやふやになり夢で体験した出来事が翌日の新聞記事に掲載していたりと不可思議なことが続きやがて友がいなくなりたった一人心配してくれた友人も睡眠剤とクロロホルムで殺害し気づけば精神病院に入れられていてそれでもなお、という話。しかし歳とると睡眠不足になるなぁ。っちゅーか眠る力がなくなるのです。合掌。
2024.05.12
1929(昭和4)年「文学時代」5月号初出。朗読時間約30分。弟の部屋で見つけた犯罪日記。鼻の形が気に入らない男を殺すために男の部屋の電球に細工をした「火薬を充填した鉛色の爆裂電球」は面白いけど、実際にあった事件を自分の仕業だと妄想して書いてるのか本当に弟の仕業なのか。最近姉の白過ぎる腕が気に入らないと、日記は姉の殺害をほのめかす。話はそこで弟がやってきて「日記は自分の薬袋だ」と言ってあやふやに終わるけど、真相はどうだか。なんか消化不良のグラグラ余韻がキショい。小酒井作品ってこんな感じやったっけ。
2024.05.11
1937(昭和12)年「若草」10月号初出。朗読時間約19分。ほんま上手い。ツカミから面白い。眼科医院で知り合った昔は裕福で今は落ちぶれの五つ下の水野さんと恋に落ちた24歳の貧しい下駄屋の一人娘さき子の独白。しかもさき子の出自はあやふやで宙ぶらりん。水野のロクでもない世間知らずエリートぶりっ子と彼女と両親のぎこちない愛情と弱さの裏の強さの落差がたまりません。しかし、いけすかない水野、将来クズになってもせめて「盗っ人ものもらい嘘つき鉄面皮強欲矜持ゼロ全部のせ。」の小役人とかになんないでね(とか言っても話から87年も経ってるんで水野もあの世かぁ)。で、タイトル、なぜ燈籠?検索してみたら燈籠って「道に迷わないための灯り」なんで、ひと山乗り越えた自分の決心が人生を歩く燈籠なのだということなのかな?家にひときわ明るい明かりが灯った姿を燈籠と喩えたのか。自分の読解力ではいろいろありすぎのキャパオーバーで深掘りできません、合掌。
2024.05.10
1947(昭和22)年「ロック」2月号初出。朗読時間約12分。めちゃ端折って、文学第一主義の木々高太郎と探偵小説第一主義の江戸川乱歩。その立ち位置から乱歩曰く、もともと市井俗人の弄びにすぎなかつた俳諧を悲壯なる気迫と全身全霊をかけての苦鬪によって遂に最高至上の芸術とし、哲学とした芭蕉の個人力の如く、探偵小説を至上の芸術たらしめる天才、探偵小説の芭蕉たるものは誰か、出てくるのか、という話。12分、ぜひ一聴を。果たして現代まで約80年、誰か出てきたのかな。
2024.05.03
1927年(昭和2)年「サンデー毎日」7月初出。朗読時間約14分。今まで読んだ渡辺作品とはまったく違う、けどらしさの捻りは残ってるなぁの物語。気弱な童話作家に一目惚れした女優と、女優をめちゃ好きなのに言い出せない青年の、勇気を振り絞って女優に投げた一言から始まる、なんちゅーか壮大な変形ノリツッコミみたいな、作家の妄想に女優も乗りまくりの、一捻りふたひねりありのアドリブ応酬からのデレツンの果てにやっとこさ青年の虚言バレバレで相思相愛の恋愛成就のハッピーエンド。恋物語も渡辺作となるとこうなるかと愉しめたのでした。面白かった。
2024.05.01
1939(昭和14)年「大衆維新史読本」10月号初出。朗読時間約8分。なんかほとんど司馬遼太郎「竜馬がゆく」(文藝春秋・文庫全8巻)の三分の二くらいを話しちゃったみたいな。たった8分で。で、気づいた。坂本龍馬って松嶋尚美やったんや。
2024.04.30
1935(昭和10)年「ぷろふいる」9月号初出。朗読時間約20分。推理のミスリードがもたらした偶然の再会が青年を失恋で落ち込むことから救う話。酒井ファンを始めたばかりですが、珍しく明るい話。あんまり観察という観察エピソードもないんで何がホームズ的かいい加減っすけど。ひょっとして酒井的ジョークなのかも。ちな1930年代の日本、東京はこんな感じです。
2024.04.20
1934(昭和9)年「衆文」5月初出。朗読時間約26分。タイトルは「むけいとうコレラ」と読みます。法医学なんて鰻丼の匂いだけ嗅がされてほっぽり出されるような仕事だと冒頭から愚痴る主人公の法医学者。そして語られるある町に起こったコレラ事件。獣医師が自宅で一緒に呑んでいた友人の内科医師の死をコレラだと診察したことから町はパニックに陥るが冷静な法医学者の主人公が感染経路不明の無系統コレラを不思議に思い調査すると酒飲みの二日酔い予防の酒石酸を飲む習慣が原因の、コレラとは無縁の、思い込みがミスリードの原因と判明する話。つまりはこの真相が実はみんな馬鹿だったがために起こった大騒ぎなのでしたとさ。皮肉っすね。
2024.04.19
1926(大正15)年「現代」7月号初出。朗読時間約24分。うーん、因果応報、こっちの小酒井不木はあんまり好きじゃないなぁ。幼なじみの名士の息子と貧しい家の娘が恋に落ちるが娘が失明し息子が娘を捨て娘は精神に異常をきたし徘徊するようになり後に息子は別の女性と縁談を発表するがその式当日に奇怪な事件が起こりそれがきっかけで後日花嫁は亡くなり息子は失明に至り、ついには屋敷を売り払って逼塞を余儀なくされる。とまぁこんな感じだった気がする。うろ覚えっすが。それがどうもなるほど感に満たされないというか、節々にモヤがかかるようで、無理くり感がらしくなくスッキリしないのでした。
2024.04.16
1952(昭和27)年「黄色の部屋」12月初出。朗読時間約44分。もうなんかね、タイトル通り、完全犯罪人の独白で構成されるんすが、その文章がけっこうな見事さで寝不足なのも手伝ってついうつらうつらで気づいてはちょい戻って聴き直しての繰り返しでキーワードを聞き逃したりと、面白いけど難儀したのです。で、感想はむずいんで、読後の手記(メモ)をだらだらと残しておくのです。以下、メモ。・主人公は40半ばの科学者、病弱で療養中。それも環境の悪い土地で。・過去に赤沢荘三郎なる人物を殺している。が罪に問われず。・赤沢殺しは多くの人を救うためのものであったらしい・赤沢は完全な液体となり粉末と化して暗渠に流された・母は主人公が生まれるとすぐに亡くなり父が愛情深く育てた・父は母のことを話さない。なぜか。語らないまま死んだ・父は主人公が大学卒業後かなりの資産を遺して死んだ・そして主人公は療養のためK市からS町の離れの二階、土蔵の家屋に越した・この離れは倉としても珍しい作りで隔離部屋として作られたことは間違いない。・そこで主人公は散歩中に死んだ赤沢と出会う・主人公はK市生まれK市育ちと思っていたが実はK市の生まれではなく他国で生まれK市に移された・子供の頃、主人公にはソーべと呼ぶ11違いの異母兄がいた・ソーべの母は早逝し、主人公の母は後添え・名はキセといい兄を座敷牢に閉じ込め虐待した・そのためソーべは14の時に家を出て消息不明になった・父の死後に漏れてきた話によれば主人公の母は彼の生後すぐ亡くなったのではなく四〜五年もの長い病気を経て狂気の末没したらしい・赤沢を殺したのは彼が37歳頃。今から20年前。主人公は20台半ば。・赤沢の亡霊は赤沢の息子・主人公はこの世に未練はない。赤沢の亡霊が死を求めるなら応える覚悟。・赤沢の息子が主人公に父親殺しを告げる・主人公は証拠がなかったので警察も証明できなかったと答える・でも肝心なところ(赤沢との因縁・なぜ離れの二階に越したのかなど)は謎。これが自分が霊能とかを信じる最後の科学者という由縁?これくらいメモっとけば後から読み返しても内容を思い出せると思うのです。
2024.04.06
1927(昭和2)年「新青年」4月号初出。朗読時間約8分。カット割りのような文章。絵コンテにできそうっす。そんでまたもや何が何だか。話題の音声会話型AIアプリ「Cotomo」に聞いたら解釈をサクサクと答えてくれるのか。作品を2作しか読んでないけど、すでに文字通りに受け取ることはあきらめてるし、じゃ読み取れるのかといううとそんな力量も知識もなし。ハネムーンのカップルを乗せたモンテ・カルロ行きの処女航海の船は舵を付け忘れた船で、そこで花嫁は熱病を発症しやがて船内に感染。無事なのは船底で働く水夫のみで、不安な一夜が明け新郎が気づくと花嫁は消えて船はあろうことか極寒のアラスカに着いていた。慌てた新郎が甲板に上がると花嫁は船首で両手を広げ凍って死んでいた。なんだこれ、なんか今の日本みたい。てか世界みたい、な気がしてきた、コワッ。当時の時代背景とかが重要ならお手上げっす(合掌)
2024.04.05
1927年(昭和2)年「探偵趣味」1月初出。朗読時間約3分。金がないので仲間と映画に行けなかった射撃名人の兵隊が初めて来た原っぱの真ん中に赤い毛布を敷いて新しい軍服で寝転がって額を狙って空に向けて拳銃を撃つ。そして花を摘んで胸に手を当てる。と、しばらくして落ちてきた銃弾が額を撃ち抜き死ぬ。駆けつけた名探偵ホームズは19世紀の観察と推理技法で調べるが、最も近代的なる一つの要素で死んだ兵隊の死因を知り得なかった、という話。元からない話やけど、しつこく「兵隊は」と繰り返す文章といい、鬱はホームズも罹ってるし、射撃の名手設定で自殺のフラグは立ってるし、さっぱりわかりません。兵隊の心に宿っていたところの最も近代的なる一つの要素って何?というわけでgooで「兵隊の心に宿っていたところの最も近代的なる一つの要素とは」で検索すると3番目に「一橋大学審査学位論文 博士論文 物語を断つ「視」の 20 世紀初頭精神」が出てきて開いてみると298ページから渡辺温と本作、そして前に読んだ「父を失う話」が取り上げられているので関心のある方はどうぞ。空も兵隊もホームズもえらいこっちゃです。僕にはムリッ。
2024.04.02
1929(昭和4)年「探偵趣味」7月初出。朗読時間約13分。朝、髭を剃り落とした父親に港へ船見物に連れて行くと誘われ、そこにお前を捨ててゆくと告白される脳みそグラグラの導入。しかも父と息子は10歳しか違わないという。そして言葉通り、父は港で船に乗って出ていき息子は港に見捨てられる。しかも一人ぼっちになった息子は父の顔さえ思い出せない。ラスト、父親の顔ぐらいは髭がなくなったとしても決して見忘れない程度によく覚えておくべきと結ぶ。え、え、え、え〜だ。何がなんやら、港から海へ突き落とされた気分。捨てられたのはこっちだよ。ちりばめられたヒントを集めて答えのない推理を始めたくないぞ。ちゃんと推理小説しろよ。余計なややこしい道草をするなよ。渡辺温、また面白い人、見っけだよ。
2024.03.30
1936(昭和11)年「新青年」1月初出。朗読時間約19分。いやいやいや、楽しみにしてた酒井ワールドからちょっとまともな世界へ戻ったような。一人の女性をめぐる親友との三角関係の話で、女性はどちらも同じくらい好きなんで男性サイドで一人決めてくれて結構と言ったのが発端。主人公は飛行機を使ったゲームに二人を誘いライバルを殺す完全犯罪を企てるが女性は実は死んだ男性のほうが好きで後を追って死んでしまう。そして男もまた犯罪を手記に残し飛行機で自殺を図る。このラストが話の冒頭に展開してるのがらしいの名残りかなぁ。面白いけど物足りません。しかしアマチュア飛行機とは贅沢な世界っす。現代ではこんなゲーム、無理っす。
2024.03.29
1935(昭和10)年「ぷろふいる」11月号初出。朗読時間約13分。アメリカ帰りの男は恋人殺しで5年の服役を終えエキストラになった。そして某撮影現場で5年前の殺人のシチュエーションと同じセットでしかも殺したはずの彼女が生きていて近づいてくる。彼は錯乱して撮影中に彼女を殺すというのが発端。しかしこれが台本通りでグルグルグル。またまた酒井嘉七ワールドの始まりだ。映画的手法と虚実ないまぜに、彼は逃走し貨物船でアメリカに渡り、え、なんだ、振り出しに戻るのか??これ、ひょっとしてメビウス構成か?読み違えてないか?またもやモヤモヤする酒井嘉七ワールド。攻めすぎてるのか、投げっぱなしジャーマンなんか。ちな、当時のアメリカ帰りは刑務所のことをビッグハウスというらしいことは学んだ。モヤおもろ。
2024.03.28
初出不明。朗読時間約23分。人を殺すことなど簡単にできる凶暴性と残忍性を秘めた警手が、見回り中のビルの部屋から殺人の依頼をする声を漏れ聞いたのが発端。しかし、まんまと騙された、引っ掛かった、まさかの映画「ユージュアル・サスペクツ」構造だったとは。創作と現実。最終章で脱力しまっせ。崩れ落ちたい方はぜひ。酒井嘉七、面白い人見っけ、続けて他の作品も読んでみたい。しかし警手が身に付ける巡回器は本当っぽい。実物が見てみたいなぁ。昔は大変でしたね。
2024.03.26
1933(昭和8)年「鉄塔」5月1日初出。朗読時間約15分。昭和8年3月3日に起こった三陸沖津波の話から。全部おっしゃる通りに現代までダメダメを受け継いでいるのです。喉元過ぎればなんとやらです。私など首がないので忘れるまでアッちゅーまです。合掌。
2024.03.25
1922(大正11)年「東京大阪朝日」1月初出。朗読時間約19分。12月8日に強い地震があり断水になったことをきっかけに身のまわりの現代文明が生んだ施設の保存期限が経過した後に起こるべき種々の困難を考えたという話。それはエレベーターから家のスイッチまで幅広く。結果はわかってるのに一世紀経っても何も変わんない。技術やパーツは良くなっても肝心の管理運営とかね。わかっちゃいるけどなんとかです。そしてこのコラムの翌年、1923(大正12)年9月1日、関東大震災が発生するのです。
2024.03.23
1925(大正14)年「講談倶楽部」8月号初出。朗読時間約26分。うーーーーーん、なんすかコレ、意味わからん。血脈と偶然に翻弄される青年の妄想話?長い割にオチが弘法も筆の誤り的なでチャンチャンみたいに軽い。でもこの時代はまだ狂犬病ってあったんすね。しかし日本の狂犬病予防注射は毎年あるけど外国だと3年に一回な国もあるとか。どっちが最適なんすかね。
2024.03.22
1927(昭和2)年「サンデー毎日特別号」1月号初出。朗読時間約19分。復讐を誓って毒に耐性のある体を作り、相手が入院している病室に忍び込んで毒殺を図る男。しかし復讐相手はまるでドルトン・トランボ原作&監督の「ジョニーは戦場へ行った」(1971年)みたいな、腕なし足なしの胴体だけの体となり果て、誰かが殺してくれることを願っていた。ラスト、結論は単純なミスから忍び込んだ男が死ぬハメになり、患者の男は生かされるハメになり絶望の淵に堕ちて完。筒井康隆のショートショートで脳だけ(頭だけやったか?)で生きてる男(タイトル忘れ)も思い出した。ま、復讐男の目的は終わり良ければで達成されたのか。めでたし。
2024.03.11
1944(昭和19)年「少女の友」5月号初出。朗読時間約18分。ルーツやん、太宰、無敵かも。ぜひ。
2024.03.09
1927(昭和2)年「新潮」5月初出。朗読時間約13分。夫の先輩の令嬢の帝国ホテルでの披露宴に出ることになった妻の、洋食のテーブルマナーに悩み緊張し乗り越え終わってみるとなんだか一皮むけたような、得意なようで寂しい気分、みたいな話。しかし髪を結っていた頃の女性の寝起きってどんなだ。なんか、違うかもわからんけど「もう頬づえはつかない」(東陽一監督、桃井かおり1979年)がよぎった。表向きは絶対ちゃうけどな。
2024.03.05
1925(大正14)年「文藝春秋」9月初出。朗読時間約8分。幼い頃に母が「無常の風が吹いて来ると人が死ぬ」と言うのを聞いた、というのがツカミです。そして父が死に母が逝き、そこから始まる風にまつわる話。その広がりかたが尋常じゃないんで覚えきれない僕には書けません。なんせ仏教から地質学、犯罪学、家の風の通り道の話、気流と人間の運命、家相学と淫風、霊魂、太陽の黒点とコロナ、社会主義と風の密度などなどお腹いっぱい。たった8分っすよ。ぜひ。
2024.03.03
1926(大正15)年「大衆文芸」7月号初出。朗読時間約11分。なんやねん、このオチはっちゅー話です。なんやねんは話ではなく作家に突っ込んでます。ニューヨークの悪い宝石商がまんまと騙される恋物語で、宝石商と宝石泥棒と客の仕組みがまったく別もんですが大島渚の「鳩を売る少年(愛と希望の街)」(1959年)を思い出した。オチは毒薬で殺されると見破っておきながら持病の心臓発作で死んじゃうという話。唯々諾々とは「事のよしあしにかかわらず、何事でもはいはいと従うさま」、緑の林白の浪とは「泥棒・盗賊」のこと、窩主買い(けいずかい)とは「盗品と知りながら売買すること。また、その商人。」の意味。勉強になりました。
2024.03.02
1845年「Dansk Folkekalender for 1846」12月初出。朗読時間約13分。詳しく話を知らなかったんで聞いてみようと思って。あ〜、少女が空腹と寒さの中で堪えきれずにマッチで暖をとり、その光と優しい幻想を見ながら死んでいく話でした。それにしてもこんなに貧しい格好だったとは。おばあさんに抱かれて天へ召されるラストは、何やら「フランダースの犬」を思い出すけどこちらもよくは知らないんでチラッとかすめただけでした、トホホ。
2024.02.27
1929(昭和4)年「童話文学」4月初出。朗読時間約13分。主役の、狭い籠に入れられて尾も切られ自由を奪われた鳥、いかるが。今ではイカルという呼び名の鳥だった。いかるがの方がカッコいいのにね。それにしても尾は小説が言うほど小さい籠に入れるのに邪魔になりそうなほど長くないのが不思議。オスメスで違うのかな。他の諸々の感想は胸の奥に。
2024.02.26
1953(昭和28)年「キング」4月1日初出。朗読時間約47分。後半の途中で犯人がわかっちゃったんで謎解きのクライマックスに「え〜そうだったのか!」の驚きはなし。ま、70年後の今読んだら大体わかる話っす。しかし、南京虫と呼ばれる時計、ほんとにあったのかなぁ。モルヒネってモヒと略して呼ばれてたのか。そっちの方が新鮮に驚き。南京虫と呼ばれる時計は検索したらマジありました。小さいアンティークレディースウォッチの事をこう呼んだそうっす。それで思い出した。母親がそんなのしてた(サイズだけね)。めっちゃ小さいんで文字盤も老眼の今なら見えん読めん大きさです。
2024.02.20
1924(大正13)年「金の星」初出。朗読時間約17分。童話です。ペルシャの博識の学者が唯一知らない魔法を学びに何十年も魔法使い探しの旅に出て、深い森で魔法使いじゃないが得体の知れないモノから三日のうちに星の数と自分の髪の数を答えられれば何にでも化けられる魔法っぽい術を教えてやると告げられるが答えられず、ギブで底無し池に沈んだ途端に答えがわかるが、気づくと家の寝床に横たわっており年老いて死にかけていた。そこで星の数と髪の本数を答え術を得て石に変身した。で、学者は石として生きてはいるが誰にもその術を話せない身となったとさ。何かの教訓なのか例えなのかわからんけど、三日のうちに答えられなかったのになぜ術を会得できた?賢明なのになぜわざわざ石を選んだ?意味がわからん。ひょっとして自分じゃ旅してると思ってたけど夢だったとか。モヤモヤ。子供ならよくわかるお話なんすかね。
2024.02.09
1934(昭和9)年「富士」10月初出。朗読時間約38分。めちゃめちゃ近眼の芸妓を囲っている旦那が殺された。凶器は長い鉄の板のようなもの。事件は暗礁に乗り上げるかに思われたが、近眼すぎて手紙が読めない芸妓が事もあろうに刑事に手紙を読んでくださいと差し出したことから一気に解決へと転がり出す。近眼と純情と憐憫と社会主義とロシア渡航という青年の夢がこんがらがって、疑念に汚れた大人の目に蓋をした物語。そしてラストは青年は死刑、芸妓は自殺という不幸な結末で完。
2024.02.04
初出不明。朗読時間約17分。街角でパン屋を営む40歳の独身女性といつも安いパンを買っていく貧乏画家らしい男性の、勇気を出した思いやりがとんでもない不幸を招いてしまう物語。画家だと思っていた客の職業は実は…。食べると思ってたパンの用途は実は…。職業まではわからんまでも安いパンの用途はなんとなく想像できるけど、この話は職業がキモなんすね。「賢者の贈り物」のオー・ヘンリーっぽいわぁ(これしか思い浮かばんけど)。
2024.02.02
初出不明。朗読時間約24分。話はスイスの老教師がペット税が増額して犬を飼えなくなったので役所へ連れて行ったと泣きながら話したというエピソードから始まる。ペット税で中国映画「わが家の犬は世界一」(2005年)を思い出した。1995年頃の中国は北京の下町。税未払いの無登録の飼い犬を没収されたオヤジが犬を取り戻すために右往左往する話。ぜひ。ところで主役は猫。今の猫人気を見たら柳田さんもドッヒャ〜だろう。この人気はやっぱあれっすか、海外からブランド猫が入ってくるようになってから?サザエさんちのタマ時代はまだまだ冬の時代だったのか(ま、猫にとっては春かもわからんけど)。じゃりン子チエの小鉄とジュニア時代もまだまだ野良謳歌時代か。ちなみにペット税とマイクロチップにはふわっと同意っす。
2024.02.01
1947(昭和22)年「童話集 狐物語」10月底本。朗読時間約14分。終戦を機にアメリカ人の主人と別れることになったペットの辿る寂しく切ない末路。犬は主人や家族と暮らした日々をどれほど具体的に覚えているのでしょう。夢はカラーで見る説も聞いたような。
2024.01.29
1940(昭和15)年「ユーモアクラブ」1月初出。朗読時間約32分。一昨年から自分が時々消えるという怪奇現象に気づいた男の独白。つまりは透明人間になるということ。同じアパートに住む人相見の先生に見てもらうと、天下の奇相、超宇宙人種だと告げられ、君は四次元の生物だと言った後、人相見をやめると断言する。ラスト、主人公は捨子であったが、自分だけでなく誰も自分の出生を見たことがないはずで、ほんとに自分は人の子かどうか、それゆえ時々確認してみる必要があると括る。二次元世界と三次元世界の大根の話、三次元の住民が四次元の住人を見たら。まるで「ウルトラQ」とか「怪奇大作戦」みたいな話でした。おもしろ。あっ、円谷ドラマよりこっちがめっちゃ先だった。
2024.01.25
初出不明。朗読時間約11分。殺生石は天竺の九尾の狐が千年生きて美女に化身し、時の権力者に見初められてはお妃として君臨し、人間への恨みから残虐の限りを尽くしては逃げることを何百年も繰り返し、ついに日本にまで渡り、ここでも玉藻前として非道の虐殺を行い、あと一歩で日本滅亡というところで陰陽師に見破られ、矢で撃ち殺されたが死んでも悪念は消えず石になって残り、石のそばに寄るものは人でも動物でも毒にあたって倒れた。これが殺生石の名の由来で、いい加減、嫌気がさした狐は殺生石の傍で寝ても無事だった旅の和尚、玄翁にお祀りしてくれるよう願いでた。和尚は読経し呪文を唱えると殺生石は割れ呪力は消えたとか。しかし、殺生石が九尾の狐だったとはびっくり。落語「東の旅」の「七度狐」なんて可愛いもんすね。あ〜、たった11分にめっちゃ情報が詰め込まれててお腹いっぱいっす。大盛りテンコ盛りな時間でした。面白かった。あ、そういえば去年の年末頃、「帰れマンデー見っけ隊!!」でサンドが殺生石辺り歩いてたなぁ。
2024.01.21
1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」4月1日初出。朗読時間約20分。あかん、ピンとこん。作風が変わったのかな。何も感じへんから何も書きようがない。こんな話、さっぱり苦手。途中でちょっとうつらうつらしたし、なのでよけいにわからんのか。でも聞き直す気も起こらん。自分に合掌。アヒルは「家鴨」って書くのは知ってなるほどでした。
2024.01.15
1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」6月1日初出。朗読時間約29分。らしくない下ネタで意外。まさかまさかのオチまでの長い旅だった。瓶や壺の造形に魅せられた大学教授がパーティで見た同僚教授の白い壺に一目惚れし南方の島まで同じ壺を探しに訪れその先に待っていた恐怖と至福の出来事とは。ヒントはキノコ、それも干して干からびたもの。阿部定よりコワッ、イタっ。ぜひ。
2024.01.12
1940(昭和15)年「図書」1月号初出。朗読時間約5分。数学者、数学史家、随筆家。この結論は皮肉でしょうけど、立派とつまんないを誰が決めんの問題が残るなぁ。本も雑誌もまったく買わなくなって本屋なんて去年は一度も行かなかった身としては80余年前の心配よりもさらに出版社存亡の危機にまで加速してさらに200年後は作家なんているのかなとか思ってしまうけど。老眼も白内障も緑内障も心配ない世界を作ることが本を絶滅から救う早道かもっす。
2024.01.07
1926(大正15)年「童話 春」12月初出。朗読時間約12分。100年前のクリスマス。お母さんのアドバイスでサンタの贈り物をひとつにした男の子は望んだものがもらえて大喜び、お母さんもさして止めずにいっぱい望んだ女の子はそのうちの三つくらいしかもらえなくて大泣き。だって女の子はいくらでも欲しい子だったから、という結末。うーん、これまたどないしたらええのやら。どう受け止めたらいいっすか。受け止める度量がない、なさすぎる。心ぐらつくんですけど。二つの家庭のお母さんの違いは?子供の違いは?家庭環境の違いは?お隣同士、互いの家庭への想いの違いは?それにしても「お三時」と書いて「おやつ」と読むのか。それが一番のホッと和んだプレゼントなのでした。
2023.12.22
1962(昭和37)年「ヒッチコック・マガジン」10月号初出。朗読時間約10分。いたずら書きを読んで勝手に殺されると勘違いした腐れ縁の恋人(?)が自分から別れると言い出して、これは好都合といたずら書きを利用して女と別れるショートショート。個人的には設定にちょっと無理があるような気もしますが。蛾というのも深い意味があるのかな?星新一の一人の女性を取り合う二人の男の年を重ねる話の結末の方が好きですねん。
2023.12.15
1922(大正11)年「九州日報」12月4日初出。朗読時間約8分。秋の、キノコたちが地中に引きこもる前に集まって会議をする中で毒キノコたちが毒こそが虐められずに自分たちの世界を謳歌する武器だと主張し、皆がなんとなくそうかもと思ったところでキノコ狩りの家族が訪れ、美味しいキノコは小さいのを残し大切に採取しましたが毒キノコをお父さんに注意され帰り際に子供たちが根こそぎ踏み潰していきましたという結末。何をどう思えばいいのやらわかりませんでした。ホントは何を言いたかったんでしょうか。
2023.12.13
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