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2005/08/07
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カテゴリ: Sid
一晩中考えを巡らせた。


今日、昨日、一昨日、一昨昨日、先週、先月、去年、一昨年、・・・日々の事を遡って思い出してみる。
遥か昔、自分の意志を持った頃からの事まで回想出来る。
曖昧な記憶なんて有るか?
なのに、どうしても小指と親指にまつわるエピソードが、何処にもはめ込めないジグソーパズルのピースのように目の前に有る。

ここんとこずっと引っ掛かっていたナニカ・・・これがきっとそうなんだ。
俺は記憶を失っている?
エイトの中の微かな残り香は俺の胸を締め付けた。

思い切って窓を全開にし扉を開けて残り香を消してしまえば・・・消す?
消せば解決するのか?

この僅かな手掛かり・・・失えばもう戻らない。
軟らかく包み込まれるような感覚・・・愛しい・・・失いたくない。
失いたくはないが、もうこれ以上その香りの中に身を置いているのが辛く耐えられない・・・部屋に戻ろう。
もう夜はとうに明けていた。




指の先で赤い線をなぞってみる。
伝統の模様だ。
過度の刺激で興奮すると浮き上がる刺青。
いつ彫ったものだろう・・・状態からは近年のものでは無さそうだ。
こんなものを俺が人に彫らせるワケが無い。


赤い縛めの輪がみるみる薄れて行く。
まるで、この消え行く刺青そのものが失われた記憶のように思えた。
過度の刺激・・・興奮・・・ベッドサイドの飾り板に拳をぶつけてみる。
鏡、壁、柱、手当たり次第に殴り蹴倒す。
いくら暴れてもキリが無い・・・まるで爆弾でも破裂したのか、猛獣を室内で飼ってるみたいな酷い散らかりようだ。

どれだけ痛めつけても指先の輪は現れず、きりが無くて止めた。

血みどろになった手を宙に翳す。
親指も小指も、爪の下の部分は見事に無傷だった。
通常の武術の正拳では指が飛ばないように内側に握るからだ。
爪と第一関節の間を積極的に使う事など無い。
だから‘縛めの輪‘は此処に彫ると云う伝統なのだ。
誰に誓ったものなんだろう・・・そんな相手が俺に居たのか?
思い当たらないどころか、自分でも信じられない。


一杯飲もうと階下へ下りる。
亮とTakuが顔つき合わせて小声で話し込んでる。
あれだけ派手に暴れりゃ、話題は‘俺‘の事しか無いだろう。
カウンターでグラスを倒した。
チッ・・・思ったより指が利かない。
少しやり過ぎた。
親指・・・‘終わり‘の輪の浮き出た様子を想い浮かべる。
今は見えない。
自由の利く親指と手の腹でグラスを覆うように持ってTakuの隣へ移動した。

覚えの無い記憶。
探す手掛かりになるかも知れない。
Takuのオンナの話を聞いた。
気になるフレーズを探した。
何時間も繰り返し聞き続けた。
グラスを握る指を見つめる。
何も変化は起こらなかった。





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Last updated  2005/08/24 12:46:29 AM
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