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2009.11.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 昔、人を助けた男がいた。老いたその男は、

何も言わずに息を引き取った。

残された家族の幸せを願いながら。

昔、人に助けられた男がいた。

助けられた男は、子供たちに言い続けた。

『恩を忘れてはいけない。』

男は同じことを繰り返し伝え、そして息を引き取った。


 1890年9月、トルコの軍艦エルトゥールル号は、

明治天皇への表敬訪問を終え、帰国の途についた。



嵐の中、エルトゥールル号は舵がきかなくなり、

大きな暗礁に乗り上げて、大破…。

さらにエンジン機関に海水が流入し船は大爆発を起こす

600名以上いた乗組員は、荒れ狂う海へと投げ出されてしまったのである。



 誰もが助からないと思われた。

しかし、奇跡的に助かった一人の兵士がいた。

兵士は、断崖の上に灯台を見つけた。

傷ついた体で崖を這い登り、遭難のことを灯台守に伝え、救援を求めた。

 灯台守はあせった。

自分一人の力ではどうにもできない。

そう思うとすぐさま隣村へ駆けて行った。



難破したトルコの人たちの救援に向かった。


 浜辺にはたくさんのトルコ人が打ち上げられていた。

全員、ぴくりとも動かない。

猟師たちは号泣した。

こんな遠くの国で朽ち果てねばならないトルコの人たちを、




「息があるやつがいるぞ!!」

狂喜した漁師たちは裸になりトルコの人たちを温めた。


 結果的に69人のトルコの人たちが助けられた。

しかし、貧しい漁村で69人の食料がまかなえるわけではない。

嵐で閉ざされた村の食料はあっという間に、尽きてしまった。



「もう、何も食べさせるものがないねぇ…。」


村の若い婦人がつぶやく。

すると腰の曲がった老婆がにこやかに言った。


「鶏をさばくべ。」

緊急のときのために、各家庭で鶏を飼っている。

しかし、これを食べてしまったら、

本当に何も食べるものがなくなってしまうのだ。

不安に思う若い婦人たち。

老婆はにっこり笑って、





「お天とさまが見てくださっているさ。」

こうして、鶏がさばかれた。


 事情の知らないトルコ人たちはおいしそうに鶏を食べた。

その姿をみて、空腹ながらも心が満たされる村人たちであった。


 この話は、和歌山県知事に伝えられ、すぐさま明治天皇に伝えられた。

明治天皇は、軍艦をトルコに向けるよう指示する。

この話は、全国を駆け抜け、膨大な義捐金が集まった。

トルコへ出航する日。

トルコの兵隊たちは、みな涙を流して感謝していた。

 イギリス人船長が船が座礁したとき、日本人乗客を見捨てた、

ノルマントン号事件の4年後のお話である。


 さて、この話には後日談がある。

イラン・イラク戦争の最中、1985年3月17日の出来事である。

イラクのサダム・フセインが、

「今から四十八時間後に、イランの上空を飛ぶすべての飛行機を撃ち落とす」

と、無茶苦茶なことを世界に向けて発信した。



 日本からは企業の人たちやその家族が、イランに住んでいた。

その日本人たちは、あわててテヘラン空港に向かった。

しかし、どの飛行機も満席で乗ることができない。

世界各国は自国の救援機を出して、救出する。

日本政府は航空会社の労働組合の反対にあい、救援機を出せなかった。

 空港にいた日本人はパニック状態になっていた。

祈りをささげるもの。

抱き合うもの。

手紙を書くもの。

すると、東の空から、二機の飛行機が到着した。

トルコ航空の飛行機であった。

テヘラン空港に緊急着陸。

日本人二百十五名全員を乗せて、成田に向けて飛び立った。

タイムリミットの一時間十五分前であった。


 なぜ、トルコは日本人を助けてくれたのか。

それを知る人は誰もいなかった。

ある大手の新聞などは、日本の援助を期待してだと書いていた。

その理由を尋ねられたトルコの駐日大使は一言こう言った。

















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Last updated  2009.11.05 22:09:28
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