わたしは価値を創る

わたしは価値を創る

September 9, 2006
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カテゴリ: 小説の話
■先日、本屋めぐりをして購入した中の1冊です。映画にもなって相当売れた本。さすがにいい小説。静かな余韻を残す読後感が味わい深い。

作者は小川洋子。有名な人ですが、実は読むのは初めてでした。この小説は「うーーん、うまい」と手を叩きたくなるような逸品です。

(以降、ネタばらし)

■これは変種の恋愛小説です。どちらかというと肉親に寄せるような愛情を描いています。もっと広く言えば、人と人のコミュニケーションのあり方です。

あまり愛情に恵まれてこなかった女性(未婚ですが子供がいます)と老いた数学者。しかも数学者は80分間しか物事を記憶できないという障害を持っています。

好きな数学の世界に閉じこもり、外界との接触を拒む博士。家政婦として出会った女性に対しても、心を開こうとしません。

この博士が他人とコミュニケートする唯一の手段が「数字」です。誕生日や靴のサイズ、電話番号を何らかの意味ある数字に置き換えて、説明してみせます。

素数。不足数、過剰数、完全数。三角数。数字を媒介としたコミュニケーションが二人の間で徐々に成立していきます。

■そこに入ってくるのがルートと呼ばれた女性の息子です。女性に対する態度とは裏腹に、ルートに対して、博士は全身で愛情を表現します。



確かに変人だが、繊細で愛情深く、気品を忘れない博士。そしてその女性の世話なしには生きられない(と思えるぐらい)信頼を寄せる気持ち。父親の愛情を知らずに育ち、愛する人に裏切られてきた女性にとって、それは肉親の愛情を受けるはずだった日々を取り戻す過程だったのかも知れません。

女性が博士に触れるシーンも、ルートを介して行われます。うまいなあと思うところですね。

■もうひとつ。ルートと博士は「野球」を通じて結ばれます。博士の好きな野球選手が江夏豊で、彼がまだ現役だと信じています。その扱いがすばらしい。



■それから十数年。女性とルートは、最後まで博士を看取ったようです。ラストは思い出話として心地よくまとめられています。うますぎるのが不満かも。

博士の愛した数式





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Last updated  September 9, 2006 11:27:05 PM
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