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2026.09.12
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テーマ: 通信業界(141)
カテゴリ: 楽天シンフォニー
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自動化から自律化へ:楽天シンフォニーが語るネットワーク運用の未来

通信ネットワークの自律化は、テレコム業界にとって遠い将来の構想ではありません。通信事業者は今、どこまでの業務をAIに任せ、人間をどのような役割へ移行させるのかという戦略上の判断を迫られています。2026年3月4日、スペイン・バルセロナのFira Gran Viaで開催された「MWC Barcelona 2026」の楽天シンフォニーブースで「From Automation to Autonomy: The Future of Network Operations」と題したパネルセッションが行われました。

楽天シンフォニーのAPACセールス責任者であるRishi Shukla氏が司会を務めたこのセッションには、同社のEMEA担当SVP兼セールス責任者であるFaiq Khan氏と、Accentureでコミュニケーション・メディア・テクノロジー部門のMDを務めるNitesh Singh氏が登壇しました。議論の中心となったのは、L4・L5の自律型ネットワークが、通信業界で働く人々の役割、AIの意思決定を管理するガバナンス、システムインテグレーターの存在意義、通信事業者の競争力をどのように変えるのかという問題です。自動化から自律化への移行は、単に新しいAIを導入することを意味するのではありません。人間が直接作業を実行する運用から、AIが行動するための目的、条件、境界を人間が設計する運用への転換です。その変化は技術だけにとどまらず、仕事のあり方や意思決定の責任、企業間の役割分担にまで及びます。


https://youtu.be/JPyhDGl7qx8


AIはテレコムの雇用を奪うのではなく、仕事の内容を変える
L4・L5の自律型ネットワークが広がれば、通信業界の仕事が大幅に失われるのではないかという懸念があります。しかし、登壇者たちは、自律化によって変わるのは必要とされる人の数ではなく、人間が担当する仕事の内容だと説明しています。これまでエンジニアが直接行ってきた業務の一部は、今後、AIや自律システムに移されていく可能性があります。その一方で、人間にはAIの「意図」を定義する役割が求められます。AIに何を達成させるのか。どこまでの判断を許可するのか。どのような条件のもとで動作させるのか。どこから人間の判断を必要とするのか。こうした目的と境界を設計することが、将来のエンジニアにとって重要な仕事になります。エンジニアの役割は、ネットワークを直接操作する「実行」の立場から、AIの動作を設計して管理する「ガバナンス」の立場へ移っていきます。自律化によって人間が不要になるのではなく、人間が担う役割が、より設計や判断に近い領域へ移るという見方です。

ソフトウェア定義ネットワーキングが変えたもの
自律型ネットワークによる職務の変化は、ソフトウェア定義ネットワーキングが普及したときの変化に重ねて説明されています。ソフトウェアからネットワークを制御できるようになっても、ネットワークエンジニアという職業そのものがなくなったわけではありません。ネットワークエンジニアに求められる知識とスキルが変化しました。自律型ネットワークでも、同じような変化が起こると考えられています。今後は、システムの信頼性を管理するサイトリライアビリティエンジニアや、AIの目的と行動範囲を設計するAIアーキテクトへの需要が高まります。ネットワークをどのように操作するかを理解するだけでなく、AIに何を許可し、どのような条件で動かすのかを設計する能力が必要になるためです。AIが高度になるほど、人間が何も考えなくてよくなるわけではありません。AIの判断範囲が広がるほど、その前提となる目的や制約を正確に設計する人材の重要性も高まります。

定型業務の80%を自律化し、複雑な20%を人間が担う
自律システムと人間の役割分担については、「80対20」という考え方が示されています。定型的で反復性の高い業務のおよそ80%は、自律的に処理されるようになります。一方、残る20%の複雑な業務は、引き続き人間が担当します。これは、自律化によって80%の人員が不要になるという意味ではありません。繰り返し行われる作業を自律システムへ移し、人間が複雑な問題や重要な判断に集中するという役割分担です。あらかじめ想定できる処理や、一定の条件に基づいて繰り返し実行できる業務は、AIに適しています。一方、過去に例のない問題や、複数のシステムが関係する複雑な状況では、人間の経験と専門性が必要です。そのため、自律化の時代には、人材そのものが企業の大きな差別化要因になります。同じようなAIやシステムを導入する企業が増えても、AIに適切な目的を与え、その判断を管理し、複雑な問題に対応できる人材がいなければ、自律化を十分に活用することはできません。技術の違いだけでなく、人材の能力が企業の競争力を左右するようになります。

AIの意思決定に誰が責任を負うのか
通信ネットワークは、国家の基幹インフラを支えています。そのネットワークにおいてAIが意思決定を担うようになれば、判断の責任を誰が負うのかという問題を避けることはできません。責任は、システムの意図と影響範囲を定義したアーキテクトにあるというのが、登壇者たちの考え方です。AIは完全に自由な判断をするのではなく、人間が設計した目的、権限、制約の中で動作します。AIに何をさせるのか、どこまでの行動を許すのかを決めた側が、その判断に対する責任を担うことになります。ここで重要になるのが「ブラスト・ラディウス」と呼ばれる影響範囲です。AIが行った判断によって、どこまでの設備やサービスに影響が及ぶ可能性があるのかを、あらかじめ設計します。AIに広い権限を与えれば、より大きな範囲を素早く制御できます。その一方で、誤った判断をした場合の影響も大きくなります。AIの権限を狭くすれば影響は限定しやすくなりますが、自律化によって得られる効果も小さくなります。AIに何ができるのかという性能だけでなく、何をさせるのか、どこまで許可するのかを設計することが、自律型ネットワークには欠かせません。

規制とデータ主権には未解決の課題が残る


システムインテグレーターは、これまで以上に重要になる
自律型ネットワークが広がれば、システム同士の接続や設定も自動化され、システムインテグレーターの役割が小さくなるように見えるかもしれません。しかし、登壇者たちは反対に、システムインテグレーターがエコシステムの中で、これまで以上に重要な存在になると考えています。今後競争力を持つのは、システムのあらゆる層に最初から自動化を組み込み、プログラマビリティとオープン性を中心に据える組織です。定型的で単純な業務は、AIエージェントに委ねられるようになります。一方、複雑なシステム統合、アーキテクチャ上の判断、複数の企業やシステムを横断する調整には、人間の専門性が引き続き必要です。オープンでマルチベンダーな環境が広がれば、利用できる製品やサービスの選択肢は増えます。しかし、異なる企業のシステムを組み合わせ、全体として一貫した仕組みにまとめる作業は、より複雑になります。単純な設定や接続が自動化されるほど、システム全体を設計し、複雑な関係を調整できるシステムインテグレーターの価値が高まります。

オープン性と自律化が新しい競争力を生み出す
自律性とオープンなアーキテクチャは、通信事業者に新しい競争上の差別化をもたらします。加入者一人ひとりの行動に応じた高度にパーソナライズされたサービス、AIを前提としたネットワークスライシング、利用者の行動に合わせてリアルタイムで変化するオファーなどが、その例として挙げられています。AIが利用者やネットワークの状態を理解し、その変化に応じてサービスを動的に調整できれば、通信事業者は画一的なサービスとは異なる価値を提供できます。その実現には、AIが必要なデータへアクセスし、判断した結果を実際のサービスやネットワーク制御へ反映できる構造が必要です。一方、閉鎖的なボックス型のアーキテクチャにとどまり、必要なデータ仲介レイヤーを持たない通信事業者は、こうした競争に参加しにくくなります。自律化とオープン化へ対応できない事業者は、通信サービスの差別化が難しくなり、コモディティ化する可能性があります。さらに状況によっては、市場での存在感そのものを失うこともあるという強い見方が示されています。

競争優位か、コモディティ化か。中間の道はない
AIとオープンアーキテクチャの進化は速く、通信事業者が時間をかけて緩やかに対応する余地は大きくありません。プログラマビリティと競争力を、あらゆるアーキテクチャ上の判断の中心に置き、今から取り組みを始める組織が、将来の競争で有利になると考えられています。自律化に対応できる構造を持つ事業者は、利用者の状況に応じた新しいサービスを展開できます。一方、閉鎖的な構造に依存する事業者は、通信機能そのものを提供するだけの存在となり、価格や通信容量を中心とした競争へ巻き込まれる可能性があります。通信事業者に求められているのは、AIを部分的に導入することだけではありません。AIがネットワークやサービスを柔軟に制御できるように、システム全体の設計を見直すことです。「競争優位か、コモディティ化か。中間の道はない」というメッセージには、自律化への対応を先送りすることに対する強い危機感が表れています。

人間が不要になるのではなく、人間の役割が変わる
Faiq Khan氏は、人員そのものが失われるわけではないと強調しています。今後は、AIシステムの意図を定義するアーキテクトが必要になり、この変化は大きな機会になるという見方です。自律型ネットワークは、人間をネットワーク運用から完全に排除するものではありません。人間が定型的な作業を直接行う状態から、AIが動作するための目的、条件、境界を設計する状態への移行です。AIの判断範囲が広がるほど、それを設計し、監督し、責任を担う人間の役割も重要になります。自律化の価値は、どれだけ人を減らせるかだけで決まるものではありません。AIに任せる業務と、人間が担うべき判断を適切に分けられるかどうかが、その成否を左右します。




私見と考察:自律化によって変わる人と企業の役割

人材育成が自律化の成否を左右する
「AIは雇用を奪うのではなく、仕事の内容を変える」という考え方の中で、特に重要なのが「実行からガバナンスへ」という変化です。エンジニアは機器やソフトウェアを直接操作するだけでなく、AIにどのような目的を与え、どこまでの判断を許し、どのような場合に人間が介入するのかを設計する役割へ移っていきます。ただし、こうした役割の移行は、AIを導入するだけで自然に実現するものではありません。これまでネットワークの運用や保守を担当してきた人材が、AIの意図や行動範囲を設計する役割へ移るためには、新しい知識と経験が必要です。企業には、AIに詳しい人材を外部から採用するだけでなく、既存の人材が新しい役割へ移行できるよう、学習や実務経験の機会を用意することも求められます。定型業務をAIへ移した後、人間をどのような役割へ移すのか。その道筋まで設計できるかどうかが、自律化の成否を左右しそうです。

責任の境界は技術だけでは決められない
AIの判断に対する責任は、システムの意図と影響範囲を定義したアーキテクトが担うという考え方は、分かりやすいものです。一方、実際のネットワークには、通信事業者、技術ベンダー、システムインテグレーターなど、複数の企業が関与します。問題が発生した場合、設計、導入、運用のどの段階に原因があったのかを判断することは簡単ではありません。AIの権限と影響範囲を技術的に制限するだけでなく、関係する企業の責任分担を明確にする仕組みも必要になります。規制やデータ主権を含め、未解決の課題が残されていることを明確に示している点は、自律型ネットワークが技術だけでは完成しないことを表しています。

自動化が進むほど統合する力が重要になる
自律化によって単純な設定や接続が自動化されても、システム全体を設計し、異なる仕組みをまとめる仕事は残ります。むしろオープンでマルチベンダーな環境が広がれば、システム同士の関係は複雑になります。個別の製品が正常に動作するだけではなく、全体として一貫した目的に向かって動かなければなりません。そのため、システムインテグレーターには、単なる接続作業ではなく、複数のシステムを横断する設計と調整が求められるようになります。今回の議論にはAccentureの担当者も参加しているため、システムインテグレーターの価値を重視する立場が含まれていることは踏まえておく必要があります。それでも、自動化が進むほど、システム全体を理解して統合する能力が重要になるという見方には、十分な説得力があります。

強い危機感に表れた楽天シンフォニーの立場
「競争優位か、コモディティ化か。中間の道はない」という表現には、自律化への対応を急ぐべきだという強い危機感が込められています。すべての通信事業者が同じ速度でオープン化や自律化を進められるわけではありません。既存の設備やシステムを活用しながら、段階的に移行する事業者もあるでしょう。一方、AIが必要なデータへアクセスできず、ネットワークやサービスを柔軟に操作できない構造のままでは、自律化による新しいサービスを展開することも難しくなります。楽天シンフォニーは、オープンでプログラム可能なネットワークを提供する立場にあります。そのため、自律化とオープンアーキテクチャを強く結び付ける主張には、同社の事業戦略も反映されています。ただし、人材の役割、AIの意思決定に対する責任、複数のシステムを統合する能力といった問題は、特定企業だけに関係するものではありません。自律化を目指す通信事業者全体が向き合うべき課題です。

自律化の主役はAIだけではない
自律型ネットワークを実現するためには、高度なAIだけでなく、AIに目的を与える人、行動の境界を設計する人、異なるシステムを統合する人、判断の責任を定める仕組みが必要です。自動化から自律化への移行は、人間をネットワーク運用から排除することではありません。人間がすべての作業を直接行う運用から、AIに目的と境界を与え、その動作を人間が監督する運用への転換です。どの業務をAIに任せ、どの判断を人間に残すのか。AIが判断を誤った場合に、誰が責任を負うのか。複数の企業やシステムを、誰が一つの仕組みとしてまとめるのか。通信事業者にとって、自律化は将来の技術を選ぶだけの問題ではありません。ネットワークを運用する人、組織、アーキテクチャをどのように作り直すのかという、事業全体に関わる選択になっています。


From Automation to Autonomy: The Future of Network Operations
https://symphony.rakuten.com/blog/from-automation-to-autonomy-the-future-of-network-operations
From Automation to Autonomy – Blog | Rakuten Symphony





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最終更新日  2026.09.12 08:00:05
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