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2026.03.24
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ロスジェネ脱線学 #26 レシートの文字が読めなくなって考えたこと
ピントが合わないのは、紙だけじゃない
私は1974年生まれだ。
若い頃、乱視ではあったが見えないことはなかった。
夜。
買い物帰り。
手元に一枚、レシートが残る。
白い紙に、黒い極小文字。
あれはもう、文字というより粒だ。
粒の行列。
情報の砂嵐。
読もうとする。
近づける。
見えない。
遠ざける。
見えない。
腕を伸ばした瞬間、ふと思う。
この動き、人生に似ている。
近づきすぎると見えない。
離れすぎても見えない。
ちょうどいい距離を探して、ずっと調整している。
昔は、読めないものなんて少なかった
子どもの頃、読めないものは大体ワクワクだった。
ゲームの攻略本の裏技。
雑誌の小さなコラム。
説明書の注意書き。
目も、体も、気持ちも。
育てれば伸びる。
努力すれば届く。
そう信じやすい時代だった。
でも今は違う。
読めないものは、だいたい現実だ。
支払い期限。
細かい手数料。
知らないうちに変わったルール。
よく見ると増えている、何か。
レシートには、全部書いてある。
買ったものも、金額も、そして小さな違和感も。
だけど読めない。
読めないのに、捨てられない
私はレシートをすぐ捨てられない。
財布に入れる。
ポケットに入れる。
車のドリンクホルダーに突っ込む。
帰宅して、テーブルの端に置く。
たまっていく。
白い紙の墓場。
理由はわかっている。
確認しないと落ち着かないのだ。
この世代は、だいたいそうだと思う。
何かを信じ切れない。
どこかで裏を取りたくなる。
見えない不安を、紙にして持っていたい。
そして結局、見えないまま持ち続ける。
なんだこの矛盾。
でも、これがロスジェネの体温だ。
ピントが合わないのは、未来のほうだった
レシートを腕を伸ばして眺めていると、たまに思う。
自分は、いつからこうなったのか。
老眼とか、年齢とか、そういう話もある。
でもそれだけじゃない気がする。
若い頃は、未来が近くにあると思っていた。
手を伸ばせば触れられる距離にある、と。
ところがいつの間にか、未来は遠ざかった。
腕を伸ばしても届かない。
近づこうとすると、ぼやける。
離れると、もっとぼやける。
結局、ずっとピント合わせをしている。
人生の後半は、そういう作業ばかりだ。
健康。
仕事。
親のこと。
お金。
人間関係。
一つにピントを合わせると、別の何かがぼやける。
全部を鮮明に見るのは無理だと、体が先に教えてくる。
そんな中で、レシートだけは妙に正直だ。
「あなたは今日、これを選んだ」
そう言ってくる。
選択の積み重ねが、暮らしになる。
暮らしの積み重ねが、人生になる。
その事実だけは、粒の文字でも読み取れてしまう。
それでも、捨てる
私は最後に、レシートを丸める。
くしゃ。
紙が縮む音。
あの音が、少しだけ救いになる。
完璧に理解できなくても、
全部を把握できなくても、
今日を終わらせることはできる。
捨てる。
流す。
忘れる。
それもまた、生き延びる技術だ。
私は1974年生まれだ。
まっすぐ進めた気はしない。
でも、寄り道しながらここまで来た。
ピントが合わないなら、合わないなりに歩く。
ぼやけたままでも、温度だけは残せる。
深夜の台所で、ふと思う。
レシートの文字は読めなくなっても、
湯気の匂いとか、誰かの気配とか、
そういうものは、まだ感じ取れる。
だったら今日も、まあ悪くない。
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EX-FAX-CE | NOTE執筆家
「ロスジェネ氷河期的視点 ― 情に生き、言葉で立ち上がる」
「ゆるぎなく、まっすぐに」
「言葉は、再起動ではなく継続の証」
▶ EX-FAX-CEとは▶ ロスジェネ脱線学 ▶ 一瞬永遠 ▶ 笑いの臨界点
X:@zdocomo / note:/exfaxce
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最終更新日  2026.03.24 05:45:18 コメントを書く


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