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2026.09.19
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最後だったことは、あとになってからしかわからない|52歳
私は17年、FAX修理の仕事をしていた。
故障の原因を探す。
必要なら部品を替える。
動作を確認する。
工具をカバンに戻す。
直った。
一件、終わり。
難しい修理でも、最後はわかる。
ところが人生は、どうもそうではないらしい。
17年続けた仕事にも、当然「最後の一件」があった。
最後にFAXのカバーを開けた日も、
最後に工具をしまった日も、
最後に客先を出た瞬間も、
どこかに確かにあった。
でも私は、そのとき、
「これが最後だ」
とは思っていなかった。
ただ仕事を終えて、
次のことを考えていたはずだ。
人生の最後というのは、
案外そういう顔をしている。
最後は、普通の日の中に混じっている
考えてみれば、仕事だけではない。
昔なら当たり前に会っていた人。
何度も通った場所。
家族が同じ時間に同じ部屋にいた夜。
くだらない話をして笑った時間。
それぞれに最後がある。
でも、その日は記念日にはならない。
写真も撮らない。
別れの言葉もない。
「じゃあ、また」
くらいの感じで終わる。
そして何年かしてから、
そういえば、
あれから一度もやっていないな。
と気づく。
最後というものは、
もっと大げさなものだと思っていた。
きちんと別れがあって、
少しくらい立ち止まって、
それから次へ進むものだと思っていた。
実際には、
日常の中へ紛れ込んだまま消えていくものの方が多い。
できなくなる前に、やらなくなっている
52歳になって、少しわかってきた。
人生には、
できなくなったから終わったことだけではなく、
いつの間にか、
やらなくなっていたことがずいぶんある。
毎日のように会った人と会わなくなる。
よく歩いた道を歩かなくなる。
いつもやっていたことを、
いつの間にかやらなくなる。
誰かが、
「今日で最後です」
と決めたわけではない。
少しずつ間が空いて、
そのまま戻らなかっただけだ。
若いころの私は、
そんなことをほとんど気にしていなかった。
終わったものを見るより、
次に始まるものを見ていた。
たぶん、それでよかったのだと思う。
二十代のころから、
いちいち最後を気にしていたら疲れてしまう。
でも52歳になると、
これから始まるものと、
もう戻ってこないものが、
同じ人生の中にあることが見えてくる。
少し不思議な感じがする。
毎日を大切に、なんて無理だと思う
だからといって、
「一日一日を大切に生きよう」
なんてことを私は言うつもりはない。
そんなに立派には生きられない。
腹が立つ日はある。
疲れて何もしたくない夜もある。
家族に面倒だと思うこともあるし、
明日でいいやと放っておくこともある。
いつもの日は、
やっぱりいつもの日だ。
毎朝、
「今日という日は二度と来ない」
なんて考えていたら、
それこそ息が詰まる。
ただ最近、
ほんの少しだけ見方が変わった。
今日の中にも、
何年か先の自分が振り返ったとき、
「あれが最後だったのか」
と思う何かが混じっているのかもしれない。
それが何なのかは、
今はわからない。
電話を切る前の一言かもしれない。
玄関で誰かを見送った数秒かもしれない。
いつもの食卓かもしれない。
もう何十年も歩いている道かもしれない。
わからない。
たぶん、わからないままでいいのだ。
人生には、完了の確認がない
修理の仕事なら、
直ったかどうかを確認できた。
動作を見て、
道具をしまって、
一件を終わらせることができた。
人生には、それがない。
「これは最後でした」
という印もつかない。
だから私たちは、
普通に次の日が来るつもりで生きている。
それでいいのだと思う。
それでも52歳になった今、
何でもない今日を、
何でもないままでいいから、
少しだけよく見ておこうと思う。
大切にしなければ、と身構えるほどではない。
ただ、見ておく。
いつもの顔。
いつもの声。
いつもの道。
いつもの部屋。
未来の私がいつか、
「あれが最後だった」
と気づいたとき、
そこに何があったのかくらいは、
少し覚えていたい。
修理には完了がある。
人生には、
その合図がないのだから。
読んでいただき、ありがとうございました。
今日もたぶん、何でもない一日です。
だから私は、
少しだけよく見ておこうと思います。
みなさんにも、あとになって「あれが最後だったのか」と気づいた、何でもない日の記憶はありますか。
思い出したことがあれば、ひと言でもコメントを残してもらえたらうれしいです。
✨✨スキやフォロー✨✨をいただけると、直せない日々を言葉で保守していく励みになります🪄✨✨✨





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最終更新日  2026.09.19 05:39:57 コメントを書く


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