どうぶつ畑

どうぶつ畑

2004.01.27
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 彼は園のまわりの公園でひとりでてこてこ歩いているところを保護されて動物園の一員になった。どうやら捨てられた様子。夜店で買ったひよこが思いがけず大きくなってしまい扱いに困って、といったところだろう。ひよこほど可愛くなく若鳥というにはまだ幼い。体長20センチくらい、ちいさなとさかに不釣合いな大きな目。まだオスなのかメスなのかわからないが、きっとオスだろう。

 少し大きくなったころ、ケヅメの元を焼いた。こうするとオスの武器であるケヅメが生えてこなくなり万が一他のニワトリとけんかをしてもかかと落しによる負傷が軽くなるし,人を蹴っ飛ばしたときに人が怪我をせずに済む。ちなみに我が園でケヅメを所有するのはプリマスロックの若,ただひとり。こやつは人を襲わないし,何よりもいつまでもボスでいて欲しい。というかいったん生えてしまったらもうどうすることもできない。ので彼のケヅメはそのままになっている。
 大きくなると人に対して警戒心が出てくる。いままでのようにべったりではなくなりある程度の距離をおいてわたしたちと付き合うようになった。彼の住まいは獣医室の片隅。居場所がないのだ。ぽっちでさみしいが他のニワトリにいじめられることもなく、ひとり部屋でえさも独り占め、それに屋内なのであたたかい。彼はすくすくと育ち立派なオスのニワトリになった。
 体が大きくなると鳴き方の練習が始まる。いわゆる「コケコッコ-!」だ。これは自分の縄張りを主張する大切なもの。縄張りを主張しあう他のオスたちの鳴き声合戦に加わって自分の存在を主張しなくてはいけない。
 始めはとてもへたくそだ。うまく鳴けない。「コケコッコ!」でとまってしまう。それも尻上がり。どうやってもラストの「コ」の音程がとんでもない方向へ飛んでいってしまう。聞いているとかなり笑える。体はもう立派な大人なのにそこから発せられる鳴き声はなんともお粗末なものだ。そのギャップがまた可笑しい。それでも彼は必死に練習する。これはオスの試練だ。
 何日も何日も練習をして彼はいい声で「コケコッコ-!」が言えるようになった。よくやった。息子の成長に満足する親の気分だ。彼はとてもいい声で鳴く。良く響く大きな声で動物園に活気をくれる。発情期になるとあっちでも「コケコッコ-」こっちでも「コケコッコ-」。1匹が鳴くと負けじとまた誰かが鳴く。するとまた誰かが鳴く。そしてこれが延々と続く。うるさいがこの意地の張り合いが面白い。
 彼もそれに加わるが、いかんせん彼は独り。縄張りはあるけれど守るべきメスがいない。さみしい。彼は若い。精力もあり、やる気満満だ。だがどうあがこうにも彼はぽっちなのだ。彼の前には柵がある。たいした高さではないが体の大きなオスには飛びこえるにはちと苦しい高さだ。それに飛び越えたとしてもすぐにわたしたちに強制送還されてしまう。彼は結構気が小さい。時々わたしたちが気づかないうちに、開いている扉の隙間から、してやったり、とばかりに胸をはって出て行くが、あまりにうれしくてココココ鳴きながら出て行くのですぐにばれてしまう。おばかな子だ。
 だがとにかくひとりはさみしい。どんなにえさが豊富でもあったかくてもひとりはさみしい。ふと遠くに目を向けるとそこにはメスに囲まれた他のオスたちの姿が・・・。嗚呼,羨ましい。彼の方からそこへ行くことはできない。メスのほうから来てくれるのを待つしかない。

 To be continued…





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Last updated  2004.03.05 18:24:27


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