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October 5, 2005
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テーマ: お勧めの本(8166)
カテゴリ: カテゴリ未分類
黒龍の柩(上)
黒龍の柩(上)


北方氏が書く土方歳三。
いきなり池田屋。
それも、あらかた事が済んでいる。
「え、もしかして下巻から読んじゃった?」
と、何度も表紙や目次を確認。
池田屋事件終了直後からのスタートである。
だから、あらかた新選組の知識がないとすっと入っていけないような気もする。
でも逆に予備知識があるから抵抗を感じるのであって、予備知識が無い人の方が入りやすいかも。


山南敬助がハードボイルドでなんか嫌だ。

この本では、山南は土方の分身のように感じる。
台詞も、「どっちがどっちの台詞なんだ?」という部分が多い。
二人きりで喋っていても、「そうだろう、土方?」とか、「なあ、山南」みたいに定期的に相手の名前を呼ばないと区別がつかない。


勝海舟や小栗忠順なんかはちゃんとキャラが出ていて良かった。
土方と山南の会話だけだと、「ひょっとして、全キャラこんな感じ?」という危惧を抱かずにはいられなかったが、ほかの登場人物はちゃんと個性が出ていた。
だから、土方と同じ口調の山南を「土方の分身」と解釈したのだが。
勝海舟なんか、いかにも「勝海舟」だし、小栗忠順も「ああ、こんな感じかも」と納得のいく書かれ方。


でも、坂本龍馬の台詞はいただけない。
地が出ると土佐訛りになり、真面目な話になると標準語になる。
しかも、一人称が「ぼく」。
「ぼくは、こう考えているんだ」と話す龍馬。



沖田総司も、まあ、イメージ通りの沖田。
でも、薩摩の中村半次郎をライバルにする発想には驚いた。
病で死ぬのではなく、自分と同レベルの強者と戦って死にたいと考える沖田。
その対象が、ふとしたことで出会い、互いに殺気を放ち合った中村半次郎になる。
(ちなみにその斬り合いになりそうな二人の間に割って入ってその場を収めたのが、たまたま半次郎と一緒だった坂本龍馬だった、といういかにも「小説」的なシーン)



伊東甲子太郎が小者扱い。
土方や山南もハナから相手にしていない。
それだけに伊東が滑稽で哀れに思える。


肝心の土方歳三。
政治に関心を持ちすぎ。
全体的な流れとして、「土方が新選組の将来について悩み考え、いろんな人と触れ合ううちに、蝦夷地での新国家構想を夢見るようになる」というもの。
だから、土方に影響を与える勝海舟や小栗忠順なんか頭が良すぎるし、坂本龍馬にいたっては、その考えが突飛で理想的すぎる。
ひょっとしたら、作者が「当時の日本はこういう方向に進むべきだった」という考えを龍馬の発想に託して発言しているのかもしれない。
これまでの土方は、とにかく新選組一筋であり、隊の運営に命をささげたイメージがあるが、北方版では、隊の運営プラス日本の進むべき姿についても土方は思い悩む。
だから、ほかの人物に「教えを乞う」といった感じの場面が多い。
そこでは土方は鋭敏な先見性を持ちながらも時代に翻弄される愚か者に見えなくも無い。


上巻は、戊辰戦争が勃発して、新選組が江戸に引き揚げてきたところで終わる。
上巻のラストでは、近藤と土方の考えがはっきりと分かれてしまう。
続きが気になるところだ。


実は、『黒龍の柩』を読もうかどうか、ずっと迷っていた時期がある。
北方版土方歳三にはすごく興味があった。
でも、司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んでしまうと、司馬遼太郎が土方歳三像を強固過ぎるくらいに確立してしまい、土方歳三は『燃えよ剣』と『新選組血風録』だけでいいのではないか、と思わざるを得なくなってしまう。
つまり、ほかの作家の書いた土方歳三を読んだとしても、司馬遼太郎との比較に終始して「『燃えよ剣』には敵わない」という評価に至ってしまうだろう、と考えていたのだ。
今回の『黒龍の柩』での土方歳三像は、また別のものであることが、実際読んでみてわかった。
下巻を読み終わったときは、同時に『燃えよ剣』の感想も書いてみたいと思う。





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Last updated  October 20, 2005 10:09:59 PM
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