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January 17, 2006
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立川談志遺言大全集(1)
立川談志遺言大全集(1)


<風呂敷>
亭主の仕事の帰りが遅いのをいいことに、若い男を家に上げていたら、仕事を片付けて、亭主が早く帰ってきた。男を押入れに隠すも、どうしたらいいのか女はわからない。酒を買いに行くと言って、近所の兄貴分に相談しにいき、兄貴分の計らいで、男を無事に逃がすことに成功。
落語では触れていないが、『風呂敷の間男』という噺もあるから、茶飲んで終わりってことではないだろう。
間男、つまり、奥さんの浮気相手ね。
兄貴分の逃がす方法として、風呂敷を使うのだが、話すと長くなるしここが聞き所なので、実際に聞くなり読むなりしてくだされ。
間男の噺として『紙入れ』がある。
『紙入れ』の亭主も『風呂敷』の亭主と同じで、「女房に浮気された亭主」の話が自分のこととは気付かない。
『風呂敷』の女房が血相変えて兄貴分に相談に行くのと違って、『紙入れ』の女房は強い。
間男が証拠を残していっても、証拠隠滅はお手の物。

げに恐ろしき女性なのである。
ちなみに、ここでのお気に入りのギャグ。
兄貴分「(大変だと騒いでいる女に対し)北朝鮮でも攻めてきたのか?」
「北朝鮮なんぞ攻めてきたって、大丈夫よ。ウチは町内会がしっかりしてるから」


<狸賽>
子ども達にいじめられていたところを男に助けてもらった仔狸が、恩返しをしようという噺。
落語家がよく使う言い回しに「えー、よく狐は七化け、狸は八化けと申しまして……」とあるが、冒頭、談志師匠「昔の誰が言ったのか」と疑問を投げかけている。
そこへ噺の中盤、仔狸が「狐は七化け、狸は八化けと言って……」と言った瞬間、唐突に談志師匠自身が登場、「そうかァ、この文句は狸が言ったんだァ」。
いきなりの語り手自身の登場に、劇中の男「誰か、いま何か言ったか? 狸公、お前か?」「いえ別に、何も言いませんよ」
この場面は実際に高座(で演るのかどうかわからないけど)を聴いてみたい。
仔狸、可愛い、欲しい。どっかに困っている狸いないかなァ?

これをいきなりマクラにポーンと放り込むから凄い。
でも、「騙されたい」というのは本当かもしれない。
私が常々疑問に思っているテーマとして、
「同じ空中浮遊のトリックでも、マジシャンがマジックとして使えば賞賛を浴びせられ、麻原彰光が(別に麻原じゃなくてもいいんだけど)自己の神秘的な力として使えば罵声を浴びせられる」
つまり、同じトリックでもマジシャンだと「すごい!」であり、麻原彰光だと「インチキ!」なのだ。やってることは同じなのに……。

やっぱり人間、「騙されたい」んだ、もっと言うと「騙されてやりたい」。
「自分が騙されてるんじゃない。自分はこやつに『騙されてやっている』んだ」と上から見たいんでしょう。
ワカルゥ?
似たような表現として、「MはSに何かされてるんじゃない。Sにさせてやってるんだ」。
モットワカンナイ?


<ろくろっ首>
与太郎に縁談が来た。相手はお屋敷の一人娘でとびきりの美人。ただ難点として、娘は丑三つ時になると首が伸びて行灯の油をペロペロ舐めると言うのだ(所謂ろくろっ首ね)。そのために、これまでいくつもの縁談がパァになってきたという。与太郎、「おもしろそう」とこの縁談を受けるが……。
普通考えてみなさい。
「おい、お前にお見合いの話があるんだ。仲人さんから写真を預かってきている。このお嬢さんだ、どうだ?」
「うわぁ、美人だなぁ、僕のタイプです。おまけに社長令嬢ときている」
「でもなぁ、お前に話してないけどな、ひとつ難点があるんだ」
「なんです、おじさん?」
「このお嬢さん、午前二時頃首が伸びるんだ」
と、無理矢理設定を現代にしてみたが、ろくろっ首がネックで(いや、かけたわけじゃないよ)婿の来てが無いというのはあり得ない。
縁談を承知したのが与太郎だから、噺として成立するのだろう。
そんな「与太郎の了見」がこの噺のテーマだと言う。
では、その「与太郎の了見」とは何か? それは、この噺を読めばわかる。
そこをあえて簡潔に言うと、「己に忠実である」というところか。
「己の欲望に忠実である」でもいいが、それだと生々しくていけない。
「己の信念に忠実である」というほど、志を持っているわけではない。
ここはスッと「己に忠実である」と表現するのが良い。
中盤、与太郎がうまく挨拶できないだろうから、三パターンの回答だけ覚えさせて、与太郎の着物に結んだ紐をひく回数に応じて回答させるくだりがある。
これは段取りをつける場面はいいが、いざ挨拶となったときに「猫がじゃれてただけ」というのは物足りない。もっと膨らませてもいいと思う。
最後、さすがの与太郎でも、ろくろっ首を目の当たりにすると怖くなって逃げ帰ってきてしまう。
でも、その前にちゃんと「ヤること」はヤってんだ。
恐れ入ったネ、どうも。





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Last updated  January 21, 2006 03:07:21 PM
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