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法律制定当時に想定していなかった紛争が生じた時,立法趣旨から考えて法文の意味を広げたり縮めたりして新しい法規範を作り上げ,それに紛争事案をあてはめて紛争を解決する,というのが裁判所の重要な仕事のひとつである。新株予約権発行差し止めの仮処分事件において,裁判所が,「証券取引法27条の2の立法趣旨から考えてToSTNeTシステムによって株式を大量取得した行為は違法であり,そのような威嚇的企業買収に対する対抗措置として行う新株予約権の発行は許される。」という判断を下す可能性もないわけではなかったと思う。しかし東京地裁も東京高裁も,「ToSTNeTシステムによって株式を大量取得した行為は証券取引法に違反しない」という判断を下した。その判断の根底には,私の昨日の日記にコメントしてくれた方が書いていたように,「規制の対象はあらかじめ法文で明確になっていなければ,その行為をした者が思わぬ不利益を受けてしまうことになる」という考えがあったと思う。「罪刑法定主義」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「犯罪とその刑罰があらかじめ法文で定められていない行為で刑罰を課されることがない」という原則である。基本的人権の尊重の観点から当然のことである,ということは皆さんもわかるであろう。証券取引法の規制は刑罰法規ではないが,規制に違反していると評価されれば行政指導等様々な不利益を受ける。会社にとっては時として,刑罰よりも致命的な処分が課されることがある。やはり,「規制の対象はあらかじめ法文で明確になっていなければならない。」と考えたのだと思う。ただし,東京地裁及び東京高裁のいずれの決定でも,「ToSTNeTシステムを通じた取引についても,今後,公開買付制度の趣旨を及ぼす立法を行うことには十分に合理性がある」旨述べられている。暗に,堀江社長の手法が強引すぎるとの批判をしているのである。私個人の見解であるが,堀江社長の行為は法の網の目をくぐった極めてダークな行為である,と思う。そのようなことを思いつくこと自体,やはり頭がよく偉大な人間(但し尊敬はできない),ということになるのだろうか。他にも様々な法律上の論点はあるが,この問題は和解で片づいたことでもあり,明日からは異なるテーマの日記を書きたいと思う。 ←最後にここをクリックして下さい。
April 20, 2005
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商法や証券取引法のように,時代の進展に伴って次々と立法当時の想定を超えたことが起こってくる法律については,「法律の規定がどうなっているか」ということを知っておくだけでなく,「そのように法律で規定された目的は何か」(これを「立法趣旨」という)ということを知っておかないとわけがわからなくなる。証券取引法27条の2は,会社の経営に口出し出来る程のたくさんの株を取得しようとする者に対して,証券取引所で株を買うか又は公開買い付けで株を買うかするよう義務づけている。証券取引所での買い付けとは,取引所の会員である証券会社を通じて株を購入することであり,株式投資をしている人達が一般にやっていることである。公開買い付け(TOB)とは,ひらたく言えば,買い付け期間や買い付け価格等を一般に公開して均等な条件で株を買い集めることである。どちらの買い付け方法も,株を買い集めていることが一般投資家にわかるような買い方である。証券取引法27条の2の立法趣旨は,思いっきりひらたく言えば,「大量の株を取得して会社を支配しようとする者がひそかに株を買い集めること禁止し,強引な敵対的企業買収を防止することにある」ということになる。つまり「株を公開している以上,会社をのっとられることがあることは覚悟しているはず」という指摘は,法律的には「そのとおり」とは言いにくい。堀江社長の使ったToSTNeTシステムとは,東京証券取引所が株式の売買を拡大させるために設けたシステムで,ハイテク技術を使って一般投資家が手軽に株を取得できるシステムらしい。少額投資家が簡易・迅速に株の売り買いをするために出来た制度だととのことである(詳細は知らない)。ToSTNeTシステムも証券取引所が設けたシステムである以上証券取引所での買い付けではあるが,それは少数の株の売買のために設けられたものなので競争売買の市場ではない。したがって,証券取引法27条の2の立法趣旨を考えると堀江社長のしたことは違法ではないか,ということになる。かなり高度な法律論ではあるが,何となくおわかりいただけたであろうか。法律を全く学んだことがない人には少し難しかったかもしれない。明日の日記では,この問題について私なりの意見を書いてまとめとしたい。←最後にここをクリックして下さい。
April 19, 2005
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昨日の日記の最後の方で,「ToSTNeTシステムによって会社の経営権を左右するような大量の株式を取得するということは証券取引法が予定していなかったことである。」ということを書いた。どういうことか,以下説明したい。もし知り合いの人が自分の欲しい株を持っていてその人がその株を売りたがっているとしたら,皆さんは,直接その人からその株を譲ってもらうことを考えるのではないだろうか。公開されている株式は当然のこと,譲渡制限がなく自由な流通を保証された株式はどんな株式でも,上記のような売買は許されている。ただこのような形で売買される株式の量はたかがしれている。株の取引の大半は,一般に公開された証券取引所において証券会社を通してなされている。そこでは買い注文と売り注文のバランスから株価が形成されるという,いわゆる競争売買の株式市場である。したがって,買い注文や売り注文が大量に入っている等の情報を得るのが非常に容易であり,株主が投資判断をするための情報を得やすい公開市場であると言ってよい。そこで証券取引法27条の2第1項の規定であるが,条文は非常に難解な形になっていてわかりにくいが,要するに「買い付け後に議決権の3分の1を超える株式を有することになる場合,証券取引所で買うか公開買い付けで買うかしなければならない。」という規定になっている。証券取引法27条の2でなぜそのような規定をしたのか(これを「立法趣旨」という)というと,会社の支配権の変動を伴うような株式の大量取得について,株主が十分に投資判断をなし得る情報を開示し,あまりに強引な敵対的企業買収から身を守る機会を従来の株主に与えたものだと言われている。本日は時間の都合でここまでとし,明日の日記にゆずりたい。←最後にここをクリックして下さい。
April 18, 2005
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私事で,かなり長い間日記の更新を怠ってしまい,私のブログを丹念に読んでいただいている方々には大いに迷惑をかけてしまいました。私事の方も大方の目処がちたので,今日から気持ちを新たにブログを更新していきたいと思います。今後とも私のブログをご愛顧下さい。さて,前回の日記でどこまで書いたか忘れてしまったが,皆さんには「株式会社や株式に関する法律は,時代の進展による社会の変化が大きくて,時代に追いついていない法律のひとつである。」ということを理解してもらいたい。商魂たくましい企業家は,何とか利益をあげよう・自分の会社を大きくしようとして次々と新しい発想を生み出してくる。それによって日本経済は発展してきたのだが,次々と新しい形態の法的紛争も生じてくる。法律制定の時点では想定できなかった新たな問題点や紛争が,2年・3年のスパンで次々と発生するのである。お手元の六法があれば,商法の165条から500条までの条文をざっと見て頂きたい。この部分が,株式会社に関して規定している部分である。166条の2,168条の2・3・4,173条の2,204条の2・3・3の2・4・5,206条の2等々枝番のついた条文がやたら多いのに気づくと思う。500条までは枝番だらけであるのに,501条以降は枝番が急に少なくなる。どんな法律でも,制定される時には枝番がついた条文などない。1条・2条・3条と順番に条文が並んでいる。しかし,時代の要請から部分的に法律を改正する必要が生じた時,ある条文を書き直したり,ある条文を削除したり,ある条文に関連する新たな条文をその条文の枝番をつけて新たに追加したりするのである。商法の中で株式会社について規定している部分は,ほとんど毎年のように少しずつ改正されている。そうしなければ時代に追いついていかないのである。それでもさらに次々と想定外の新たな問題が生じてくるのである。証券取引法も同様である。今回のライブドアによるニッポン放送株の大量取得は,ToSTNeT取引(一般に「時間外取引」と言われている)によってなされた。この取引自体かなり新しい証券取引の形態であって,これによって会社の経営権を左右するような大量の株式を合法的に取得するということは,証券取引法が想定していなかったことなのである。明日の日記では,この点をもう少し突っ込んで書いてみたい。←最後にここをクリックして下さい。
April 17, 2005
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